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仮面優等生の歪いた愛欲

この瞬間だけでも、俺を愛して・・・。
完結][既婚者教師×仮面優等生(主人公)][略奪愛]


EP.3「お前が必要なんだ!!」(1/7)
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ウチの学校は男女共学の進学校。
気の利いた親切な学生寮とかはなく、とにかく普通の私立高校。
通学方法は徒歩に自転車、バスに電車に親の車、バイク(もちろん校則違反)通学と、それぞれ人によりけり。
俺、錦 浬は、いくら理事長の孫とはいえ特別な何かはなく、周りの子と同じように。バスを使い最寄駅で降り、そこから学校まで徒歩で向かっていた。
そんな中、

「錦くーんっ!」

「!」

明るく元気、お調子のいい声で話し掛けてきた一人の男子生徒。

「おはよー、おはよー。おはよー、錦くん。」

「・・・おはよ、及川くん。」

(お前か。)

それは同じクラスで俺と席が近い栗毛で碧眼少年の及川 春希だった。
及川は朝からハイのハイのハイテンション。

「あれ〜?錦くん元気ないね。錦くんも朝は弱いタイプなのかな?」

(ほっとけ。)

「そういう及川くんは朝、強そうだね。」

得意げになって話す及川に、

「勿の論!一日の計は朝にあり、郷に従うって言うしね。」

「・・・へぇ。」

(何か色々と混ざってる・・・。)

仮面の俺も、そうじゃない俺も付いていくことができなかった。
朝から鬱陶しい・・・。
けれど向かう先は避けても同じなので、学校まで及川と一緒に嫌でも登校する羽目に。

「にしても意外だなぁ。錦くんの登校風景。」

「え?」

「いや、ね。錦くんモテるからさ。女子が左に5、右に6。両手に華っていうイメージしてたからさ。」

(いつ時代の話だ、それ。)

「ご、ごめんね。期待に添うこと出来なくて。」

「ん〜、でも錦くん朝弱いって知ってるから、みんな遠慮してるだけかもしれないね。両手に華ってわけじゃないけど、一緒に歩いてるだけで女子からの視線がアチコチ感じるし。これじゃあまるで僕も錦くんと同じようにモテてるみたい!」

(朝から幸せな奴・・・。)

頼んでもないのに鬱陶しい他愛の話が続く。
『朝に弱い』という印象を持ってくれたことをいいことに、俺はほぼ聞き流しの状態で、それっぽい返事を返す。

「錦くんも、この道が通学路だったんだね。今まで気づかなかったし知らなかったからな〜。よしっ、明日から錦くん見かけたら迷わず声掛けることにするよ。」

(よしっ、明日から通学路を変えよう。)

そんな一方的に近い及川の話を聞き流していると、ふと昨夜のことを思い出した俺。

「及川くん。」

「ん?」

それを及川に尋ねたくて、一方的だった話をストップさせる。

「昨日のこと、なんだけど。」

「昨日?」

「あ、えっと・・・、メッセージの件で。」

昨日の夜のことを尋ねる。

「メッセージ?」

「うん。」

「ん〜???」

「・・・・・・。」

すると及川は惚けたように、深く深く考え込んでしまう。
その様子は『心当たりない』というよりも、『覚えてない』ようだ。

「あ、いや。やっぱり何でもない。」

「?????」

それならそれでいい。
触らぬ神に祟りなし。
むしろそうであってほしいと強く願う俺がいた。

「ん〜、昨日は大瀬とネット対戦してたしな〜。」

昨夜までの自分を思い出すと、とてつもなく『愚か』だったようだ。
及川が覚えてないのなら、俺もキレイにサッパリスッキリ忘れることにしよう。

「あっ!そういえば僕、錦くんにメッセージするって言って、それっきり何も送ってなかった!!・・・・・・ね。」

(・・・・・・。)

そうです。
この人『錦くんに毎日メッセージするね』とお得意に言っておきながら、それっきり何も音沙汰なく。
予想通りの的中で、やっぱり忘れていたのだった。

「やっだ。僕ひょっとして錦くんを待ちぼうけさせてた?」

「あ、いや。」

「うっわぁ。ごめんよ、ごめん。すっごくごめんよ。」

「たいしたことじゃないから気にしなくていいよ。」

「いやいやいや。すっごくたいしたことだよ!」

ゲームとそこには何かしら越えられない壁があったって事か。
・・・ずっと待っててやってたのに。

「錦くんに寂しい思いさせるなんて、本当にごめんって。」

「いいよ、もう。」

「ごめんって、ごめん〜。」

「いいから、もう。」

「拗ねないでよ、錦くん。」

「別に拗ねてなんか・・・っ!!」

「え。」

(あ・・・。)

しまったー・・・。
必要以上に鬱陶しく謝ってくるから、ついムキになって素で答えてしまった俺。
及川も、それを聞いて意外だったのか。
ひょうんな表情を見せ、一時的に騒がしかったのがおとなしくなる。

「あはは。やっぱ拗ねてたじゃん。」

けれどそれは一瞬の束の間。
一時停止にすぎなくて。

「拗ねてなんてないし、寂しい思いも別にしてないから。」

『〜♪』

メッセージの着信音が俺のスマホから鳴り響く。
もちろん相手は、目の前にいる栗毛野郎。

「今送ったし、ちゃんと毎日送るし、今度から絶対に忘れないようにするからさ。ねね、許して、ねっ。」

ああ・・・。
どうやら俺は余計なことを言ってしまったようだ。
何も言わないままのが正解だったと、今更ながらな後悔してしまう。
そして送られてきたメッセージは、

『やっぱり錦くんは素敵な人だね(^▽^)』

と、顔文字付きの意味の分からない内容だった。

「いいっしょ、この顔文字。僕のお気に入りなんだ。」

「そう・・・。」

何がしたいのだろう、コイツは。
こんなバカを朝から相手しただけで、あっという間に一日分の疲れが出てきた。
あぁ。頭が痛い・・・。
そんな下らない他愛のない話をしていると、後方からキィッと自転車が止まる音が。

「ん?」

振り向くとそこには髪型がオールバックな野郎が、こっちを見ていた。

「あ、おはよー、大瀬。」

「おはよう、大瀬くん。」

「あ、あぁ・・・。」

そいつの名は大瀬 邦臣。
同じクラスメイトの男子生徒で、及川とよくつるんでいる。
相変わらず不機嫌そうな表情をしている大瀬。
珍しく及川が大瀬のことを普通に呼んだのに(いつもなら『くそおみ』)、何の反応も見せず無表情。

「大瀬くん、自転車通学だったのか。」

「あ?あぁ・・・。」

「・・・大瀬くんもこの道が通学路なんだ。」

「あぁ・・・。」

(よし。明日から本気で通学を変えよう・・・。)

何を言っても何を聞いても、返ってくるのは『あぁ・・・』オンリー。
元気のないそんな大瀬の様子が気になるものの。
いつものように(主に大瀬の彼女絡みで)無暗に突っ掛れるよりは、ずっと平和な朝なので、何も触れないままでいよう。
これぞ『触らぬ神に祟りなし』といったところか。
やっぱり世の中は平和が一番だよな、うん。

「でさでさ今朝の占い見た?なんと僕の星座は絶好調だったんだ〜。ちなみに大瀬のはブービーで、錦くんのはドベだったよ。」

「・・・そうか。」

「へぇ・・・。」

(人の星座までチェックしたのか。てか、よく俺の星座分かったな。調べたのか?コイツ。)

こうして及川が、また一人で一方的な話を始めたところで。
俺も大瀬も上がらないテンションのまま、及川の話をほとんど流しながら歩く足を学校へと向かわせた。



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