言葉通り。 愛してもない男に逆らうことが出来ず、ただ従い操られるまま、その腕で俺を抱くのであった。 こんな臭い場所で。 さっきあんなにデカイ音を立てたのに、誰一人心配しに来ないんだ。 多少の音を立てても、トイレの入り口から外に漏れることはないだろう。
「錦・・・くっ。」
震えた声で、上に乗ってる俺を呼ぶ神崎先生。
「浬。」
「・・・、え?」
「こういう時ぐらい・・・、下の名前で呼んで下さい。浬でいいから。」
どれだけ上から目線のおねだりなのだろう。 そう呼ばれたいのなら、そう素直に言えばいいのに。 断われたくないから、体を使って従わせる。
「浬・・・く・・・んっ!」
それは堪らなく苦しいモノだろう。 狂ってくるでしょう? いろんなものが。 おかしくなってくるでしょう? いろんなものが。
「・・・して?」
「ん?」
「どう、して?・・・っ・・・こんな、こんな・・・っ・・・こと。」
そんな俺に何故を求める神崎先生。 だから俺は口と心。ほぼ同時で、その答えを放つ。
「不思議なこと、尋ねるんですね。」
こんなことをする理由なんて、ひとつしかない。 視線を神崎先生から逸らさずに。 合った視線を一瞬たりとも逸らさずに、瞬きすら忘れてしまったかのように。
「好き、だから。」
好き、だから・・・。
「好きだから、ですよ。」
想いの全てを言葉にして告白。 言語化してしまった以上、それはどんな誤魔化しも効果を無能にさせてしまうだろう。 好きなんです。 貴方のことが。 神崎先生のことが。 この世界で誰よりも。 ただ貴方が好きなだけ。 ただそれだけのお話。
なのに、どうして。
誰が。 何が。 何故。 何の目的で。 想いの人を追い詰めてしまうまで。 俺を狂わせたのは何が原因?
「神崎先生、貴方のことが。」
誰に求めれば、この答えの正しさを導き出せるのだろうか。 緩やかに流れる水の音は一定だけど、どこか不安定で。 何処かへと堕ちていくのであった。
つづく
|