俺、渡辺 鳴海の下駄箱に一通のラブレターが投函された4月の1番最初の日。 所属してる演劇部の朝から続いた練習が終わった後、ラブレターの内容通りに渡り廊下へと向かっていた。 友人の羽崎 空。空を部活中でも構わずボディーガードとして道連れにさせて。 そこで隠れてこっそりと覗き、向こうからやって来た差出人の正体を知った。が、
「・・・あれは、冥?」
なんとそこにいたのは同級生の鬼頭 冥がいたのだった。
「え?俺、あの人からラブレター貰ったの!?」
「なんで彼がここに?」
日焼けた肌は色黒く189もある高身長の男子生徒。 空と同じ陸上部に所属しているスポーツ特待の野郎。 けど鬼頭とあまり話したことがない上、接点がほとんどないから正直に言えば苦手。 そんな苦手な彼の告白を、俺はちゃんと断れるのか凄く不安になってきた。
「・・・・・・。」
渡り廊下に来た鬼頭はキョロキョロと辺りを見渡していて、案の定、誰かを探しているみたい。 そんな鬼頭を見る俺の目にも摩訶不思議な現象が。
(う・・・っ!?)
鬼頭のバックに一瞬だけブルーローズ。青い薔薇がぶわわっと咲き誇り、それが俺を魅了させようとしてくる。
(いかんいかん!鬼頭もイケメンだからな。面食いである俺のツボを抑えてきやがる・・・!)
確かに俺は鬼頭と接点がない。でもそれは直接的な意味で空を応援しに陸上部には足を運んでいたから、きっとその時に目をつけられてしまったんだ。 ああ、なんて罪深い男なんだ俺は。
「鳴、行かなくていいの?」
「いやいやいやいや。無理無理無理無理。」
でもここは見なかったことにしよう。 知らなかったことにもしよう。 せっかく決めた覚悟も微塵に失い、俺はここから一刻も早く去ろうと、空を連れて逃げようとした。 しかしそのとき小枝をパキッと踏んづけてしまい、その音が鬼頭の耳まで届いてしまう。
「ん?あ、そっちにいたのか。」
(ギャーッ!しまったーーー!!)
よってあっという間に見つかった俺ら。 鬼頭はやっぱり俺を探していたようで、こっちを向いた視線がバッチリと合う。
「待って待って!空頼む!俺を庇って!」
「はァ!?ちょっと!僕の後ろに隠れないでよ!」
そんな彼にすっかり怯えた俺は、ボディーガードとして連れてきた空を壁に。後ろに隠れてなんとか守って貰おうとした。 するとこっちにズカズカやって来た鬼頭は、
「部活中にこんな場所来て、何してんだ?空。」
「え、僕?」
「へっ?」
真っ先に俺に告ることなく、俺の前にいる空に話し掛けてきた。
「えっと、冥こそどうしたの?」
「渡辺について行くとこ見てたから、連れ戻しに探してた。」
「見られてたんだ・・・。」
あれ?あれあれ? おーい、鬼頭くん?俺ここにいますよー。 俺に『好きです』言わなくていいの?
「こんなことで油売ってる暇ないだろ。練習戻るぞ。」
空とばっかりで、勝手に話を進めていく2人。 鬼頭は俺のことなんてまるで無視、シカト、触れてきやしない!
「ま、待て鬼頭!俺には?俺に何か言うことないのか?」
なので今度は勇気出して、こっちから彼に話をふったのだが、
「渡辺に?あぁ。空の邪魔するな。」
部活中だった空を連れ出したことに叱られただけで終了。
「ほら。行くぞ空。」
「あ、うん。それじゃあ鳴、僕もう部活に戻らないとだから。ごめんね。」
そのまま俺を1人残して、空を連れて陸上部の部活場所。グラウンドへと戻って行った。
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