「・・・・・・。」
え〜〜〜っと、えっと。何これ?何だこれ!? これはもしかしてでもなく、ひょっとしてでもなく、ラブレターの差出人は鬼頭じゃなかったってオチ? はははははっ。 なんだ。それならそうだって早く言ってよー、もう! あのタイミングで来たから早とちって勘違いしちゃったじゃん! そうだよな〜。 俺と鬼頭じゃやっぱ、そんなこと起きないよな。あるわけがないよな。うん、うん。 あそこで登場したのもきっと彼の詳細紹介その他コメントの2行目のせいだ。うん、うん。そうに違いない。 よかったよかった、鬼頭じゃなくて。 はははははっ。はははははっ。 ははははははははははーっ。
(って、何にもよくねえよ!何だこれ!?ここのサイトの主人公はホント、ロクな目に合わないな!!)
ラブレターの差出人が鬼頭じゃなかったってことは、それは他にいるということ。 そして俺は今、差出人が待つ渡り廊下で改めて1人っきりに。
(ああああああああッ!こんな1人でいるところを付け狙われたらどうしよう!!)
そんなところに1人残されて、せっかく勇気出た心があっという間に窮地へと追い込まれる。
(空を返して!俺の空(ボディーガード)を返して〜!)
その時、だった。
「よっ!鳴。こんなところで何しー・・・「ぎゃああアアアア!!」
突然、背後からポンッと叩かれた俺の肩。 途端に絶体絶命度が100%超えに急上昇。 そのあまりの恐怖に最大限の。出せるだけ出せた声で大きな悲鳴を響かせる。
「うっせーな!バカ鳴!バカがバカでかい声だすなバカ!」
「・・・って、あれ?陸、哉?」
すると自分の後ろから、とっても聞き覚えのある怒声と罵声が。 振り向くとそこには真柴 陸哉(ましば りくや)がいて、両耳を抑えていた。
「ご、ごめん、つい・・・。まさか陸哉だと思ってなかったからついつい。」
「どんなついだ?どんだけのついだ?オレの鼓膜がやぶれたらどう責任とつもりだ?あぁ!?」
「ごめんなさいごめんなさい!ホントにごめんなさいでした!謝るから許して!!」
「ごめんで済んだら警察なんて要らねえだろうが!訴訟起こして賠償求めて借金地獄の一生送らせてやろうか!?」
「キャー!ホントにごめんなさい!ごめんなさいってば!」
陸哉も俺たちと一緒の青ノ葉2年。 野球部に所属しており、寮では俺と同じ部屋を使うルームメートな関係。 空とも仲良くて、よく俺をからかってくるが、基本はいい奴。でも怒ると罵声止まらなくて、ちょっと面倒臭いとこがある。 でもそれは今ちょっと置いといて。 何故、陸哉もこのタイミングで出てきた?
(はッ!もしやー・・・!)
「陸哉じゃないよな?俺にラブレター出した差出人。」
「はい?何、頭沸いたこと言ってんの?」
このタイミングだったから思わずルームメートを疑ったが、差出人=陸哉の説はないな。 コイツがあんな文章書けるわけがない。あったとしても嫌だ。 コイツの場合、それは100%悪戯が目的だ。 そんでもって俺は、なんてことを彼の前で口を滑らせたのだろう。
「それに『俺にラブレター出した差出人』って、何の話?」
(しまった・・・!)
現在進行形でめっちゃ悩んでいることを、陸哉のからかい材料にさせてしまう。
「何のことかな〜?鳴海くん?」
「うっ、うるさいな!陸哉には関係ないだろ!」
「まあ確かに。オレには関係ないことだけど・・・、さっ!」
「うわ!?」
「関係あるのは、このお手紙さんのことかにゃ〜?」
そしてこっちの隙を突かれ、ズボンのポケットからこんにちはしていたラブレターを簡単にバッと奪われた。
「ほうほうほう。へぇ〜?鳴にラブレター、ねえ。とんだ物好きが青ノ葉にいたもんだ。」
「返せ!読むな!」
「いいじゃん。減るもんじゃあるまいし。」
ああああああああ・・・、最悪だ! 俺へのラブレターを陸哉に読まれるなんて最悪だ! 最悪以外の言葉が出ないぐらいすっごく最悪だ!!
「は〜。へ〜。ふーん。ほぉ〜。なるほどね。それで鳴はこんなところにいたわけか。」
「すごくどうでもいいが今、『はひふへほ』言わなかった?」
「『ひ』は言ってませんが?」
差出人にも申し訳ない。 俺の不注意とは言え、こんな奴に読まさせてしまっただなんて。
「で?返事どうすんの?これ。」
「陸哉には関係ないっつたろ。」
「いいじゃん、教えろよ。オレと鳴の仲だろ?」
「いーやーだ!どーせそれで俺をからかってくるんだから。」
「んなことしないって。なんならご相談にのって差し上げましょうか?」
「結構っ!」
陸哉も陸哉で面白半分に関わってこようとしたが、そんなものもちろん阻止!
「それに朝、明人先輩に既に相談したあとだから。陸哉の出番はねえよ。」
「なんだよ、それ。鈴木先輩は信用出来て、オレは信用出来ないってか?」
「普段から俺をからかいまくるのは、どこの誰でしたか?」
「ここのオレ♪」
残念ながら相談相手なら、もう間に合ってるんだ。 明人先輩の次は空。空の次が陸哉となったら、それは二番煎じどころか三番煎じになる。 だから陸哉の出番はもう要らない。
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