「え!?ラブレター貰った!?」
「しー!しー!明人先輩声でかいッ!」
「あ、ごめん。つい・・・。」
いきなりのそんな話に当然、明人先輩はまたもや超ビックリ反応。 俺からの相談事が、まさかこの手の話だとは思いもしてなかったようだ。
「僕も聞いてよかったの?その、差出人が『わたぬき』くんだってこと。」
「はい。恐らく仮名だと思うので。そんな名字の人、この学校にいないし。」
「え。普通にいるよ?僕らの学年に。」
「いるの!?」
そして明人先輩の情報により。 差出人だった『わたぬき』は、この学校に。3年生に実在すると判明した。
「まってまって!え、どんな人だっけ?」
「あれ?見たことない?僕らより体つきがひとまわり大きい子。あの子の名字、綿貫(わたぬき)くんだよ。」
「あー・・・、いましたね。確かにいましたね。」
言われて思い出すわたぬきっという名字の人。 しかし3年の綿貫先輩とは顔馴染みじゃないし接点ないから話したこともない。 だからつい忘れてしまっていた。 どちらかというとあの人も俺のように通称のような呼び名、あだ名があってそっちで覚えてたし。
「・・・その人以外で他に、わたぬきっという人いる?」
「いないよ。2年生にもいないでしょ?」
「・・・・・・。」
「あれ?鳴くんひょっとして失礼なこと思ってない?」
「だってあんなワガママボデーの人はちょっと・・・。俺どちらかというと面食いだし。」
「本当に失礼なこと言ったね。」
しかもその人しかいないとなれば差出人は確定? けど彼だと分かり、ちょっと凹む俺。 青ノ葉には魅力的な男子もちらほらいるのに、なんで彼に告られたんだろうと思うと失礼承知でかなり凹んだ。
「ハッ!もしやまだ見ない新入生からとか!?」
「入寮式前にコッソリ来るのって不法侵入にならない?」
自分で言っといてアレだけど、今度入ってくる新入生の説もない。 ラブレターの文からして、脈絡がおかしいことになるからない。 やっぱり綿貫先輩、確定なのか・・・。
「でも彼じゃないと思うよ、うん。鳴くんが言うように仮名使ってるかもしれない。」
「ぜひそうであってほしいです。」
「本当に失礼なこと言うね鳴くん・・・。でもだとしたら、どうしてその名前使ったんだろう?綿貫くんのこと知らなかったとしても。」
しかし明人先輩からも、彼である可能性も否定された。 先輩の中で何か思い当たる節でもあったのだろう。
「筆跡から心当たりないの?」
「パソコンからコピーされたっぽくって、誰かが書いた字じゃないから分かんない。」
「鳴くん。もしかしてそれ悪戯じゃ?」
「そ、そんなわけないって!あんな!あんな・・・文章、悪戯で書くわけないし・・・。」
「そう・・・。」
そしてそんな俺からの話を聞いた明人先輩は、俺の様子見て静かに頷き。差出人が誰かを探すより、もっと大事なことを。
「中身見せて貰ったわけじゃないし、見るつもりもないんだけど。そんなに想いがつめられた内容だったんだね?」
「・・・・・・っ。」
「鳴くんは、どうするの?それ。どうしたいの?」
本題となる答えをマジマジと尋ねてきた。
「どうって言われても・・・、困る。」
「困っちゃうんだ?」
「だって困るじゃん!こういうのもらったって!おかげでモテる辛さを知っー・・・「鳴くん。」
だから俺はムズムズして背中辺りが痒くなり、思わずちゃらけたが、明人先輩は笑いに変えさせない。
「こういうこと茶化し続けるのはよくないんじゃない?」
彼は笑ってなかったんだ。 一方的に俺がちゃらけてたけど、この手の話に対してでもちゃんと聞いてくれていた。 引くことなければ、からかってくることもなく。
「俺はどうしたらいいのか正直、分からなくて困ってて。こういうの貰ったの初めてだったし。」
「うん。普通はビックリするよね。」
「断る、べきでしょうか?でも下手に断ると返り討ちされて、あんなことやらそんなことまでモザイク構いなしで襲われそうで。」
「うん。最後のは聞かなかったことにする。」
「でもイケメンだったらもったいないのかなって気持ちもあって。」
おかげで一部の生徒から、彼に相談を持ち掛けてくる人が多い理由も分かった気がする。 俺も自分の胸のうちを明かすことが出来たから。
「相手は真剣なんでしょ?なら鳴くんもちゃんと真剣に考えた答え返さなきゃ。鳴くんだって告った相手からそんな半端な答え貰うの嫌でしょ?」
「うん・・・。」
「じゃあ僕に答えを決めさせなくても、自分で答え決められるよね?」
「・・・うん。」
だから生じていた迷いに答えの決心が付けられた。
「ちゃんと断ってきます。俺にも好きな人、いるから。」
「うん、そうだね。やっぱり断る前提で相談してきたんだね鳴くん。」
こうして返事の答えも決まったことなので、ご相談はこれにて終了。 そろそろ部活に戻らないと、輝夜部長の怒りに再び触れてしまうことになりそうだ。
「鳴くん、また何かあったら僕で良ければ聞くけど、これだけは最後に言わせてね。」
「何を?」
「今年から弟が入学してくるから。だから弟がいる前ではしてほしくて。」
「明人先輩、弟いたんだ・・・。」
「うん。弟の耳に入られるとそのまま姉さんの材料にさせられそうで。本当に申し訳ないことになり兼ねないから。」
だからキリがついたところで解散。 明人先輩は再び輝夜部長の元へ。 そして俺もグラウンド10周をこなしてこないといけないので、ここでそれぞれ向かう先に分かれて行った。
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