翌日。 俺はまた昨日と変わらない行動をとっていた。 しかし今日は陸上部も野球部も朝早くから練習があるおかげで引き連れられたボディーガードはなんと0。 ちょっと怖かったけど俺はいつでも逃げれるように用心して、1人で差出人を待っていた。 すると、
「鳴くん・・・。」
「明人先輩!?どうしたんですか?」
明人先輩が差出人を待つ俺の所へやって来た。 けれどあまり穏やかではない様子。
「今日も待ってるの?」
「え、はい。いちお。念のため・・・。」
「・・・・・・。」
「明人先輩?」
「もう、辞めない?差出人を待つのも、探すのも。」
言葉に躊躇って戸惑いながらも、そう俺に伝えてくる。
「こういう言い方していいのか分からないんだけど。昨日の夜、僕のところに自白してきたの。鳴くんにお手紙出した差出人さん。」
「え!?俺じゃなくて先輩のところに!?」
「うん・・・。僕を巻き込んだこと謝ってきたから。」
昨夜、彼の身に何かあったというのか。 俺が知らないところで、俺よりも先にその人を知ったようだ。
「もちろん鳴くんにも、こんなことしてごめんなさいって。鳴くんが不安や心配に思ってること絶対にしないと約束するから、もう待たないでって。そう伝言預かってきたの。」
「はァ!?なんだよ!それ!?」
そして明人先輩の口を使って、それを伝えられても一方的すぎ。 ただでさえこの数日間、こんなに困らされたんだ。 それがこんなオチの結果なんて当然、簡単に納得出来ない。出来るわけがない。
「誰!?明人先輩、誰だったんですか!?その人!」
「・・・・・・。」
「先輩!」
だからその人を知った明人先輩に問い詰めたけれど、明かされずに閉ざされたまま。
「鳴くん。断る気でいたのなら、そこでおしまいで。このお話はそれで終わりにしてもいいんじゃない。」
「けど!」
「・・・鳴くんにだって好きな人、いるんでしょ?」
こういう相談をよく受ける彼だからこそ、俺とその人を守る為に、言うわけにはいかなかった。 俺の答えを知っているから尚さら。
「なら、ラブレター貰ったことなかったことにして、さっさと忘れなよ。その人の為にも。」
「・・・・・・っ。」
それが2人にとって。いや、俺にとって唯一の最良一手になるからって。 差出人の正体を知らないままでいた方が、それまでの関係も壊すことなく、お互いに気まずくなることもなくなるからって。
「僕もそうするから。巻き込まれるのは姉さんや弟からよくあって慣れてるし、2人と比べたらまだマシだから。」
こんな形で俺に残された最後の手段。 『忘れた方がいい』と、明人先輩に言い渡されたのだった。
「それにしても本当、僕も最初に気付くべきだったよね。あれって4月1日とも書くっていうことに。」
「何の話ですか?それ。」
「・・・なんでもない。こっちの話。」
「???」
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