明人先輩から突然あれだけのことを言われれば、いくら俺でも戦意喪失。 頭の中がごちゃごちゃで片付けられず、忘れることも簡単に出来そうになかった。
(告白された相手にごめんなさい言おうとしたら先手打たれて、逆に言われて逃げられるなんて思ってなかった・・・。)
でもそれを一先ず空に伝えてようと。 とにかくもう1人の相談相手からの意見も欲しくて、先輩と別れたあと真っ直ぐ陸上部に顔を出した。
「あれ?いない?」
しかしいつも高跳びのスペースにいるはずの空がいない。 どこかで他の部員を手伝っているのだろうか? 気になって目だけで探していると、ちょうどいいところに鬼頭がいたから尋ねてみる。
「空なら帰った。」
「え!?」
「ちょっと前までいたんだが、体調優れないんだってさ。ここのところ調子崩しっぱだったし、念のため顧問が休ませた。」
おかげでいない理由が分かったが、空が体調崩してただなんて驚き。 風邪でも引いてたのか?全然気づかなかった・・・。 昨日まではそうでもなかったから二重で驚いて、とりあえず様子を見に行こうとした。そのとき、
「渡辺。」
「うん?」
鬼頭の話は、そこでおしまいではなかった。 「そういえば」と思い出し、そのまま気になっていたことを俺に尋ねる。
「そういえばだけど、1日の朝。大丈夫だったか?」
「1日の朝?」
「その前の日の夜か。部活上がりに空と真柴が渡辺の下駄箱で何かやってたの見たからさ。」
「・・・え!?」
けれどそれは、とてもとても聞き捨て出来ない内容のお話。 目撃者として語った鬼頭によって。この数日間、俺の身に起きていた騒動の謎が明らかとなった。 逃げた差出人の正体も共に。
「次の日がエイプリルフールだったしな。2人が悪戯してたのは見てて分かったけど。」
「・・・・・・・・・。」
4月1日は、4月最初の日。 そしてエイプリルフールであって、その日だけ嘘をついてもいい日。 今さらながらそれに気づいて。 今さらながらそれを知って。 自分でこの気持ちを、この感情を。どう整理していいか分からない。
「・・・ごめん鬼頭。さっき空どこ行ったって言ってた?」
「ん?寮に帰ったけどー・・・。あ、その前に野球部のグラウンドに向かってったな。」
「野球部か。ありがとう。本当にありがとう鬼頭。」
「どう、致しまして?」
だから鬼頭にもう一度、空が向かった場所を教えてもらい、俺は差出人を。いや差出人たちを追って、野球部へと向かった。
すると向かった直ぐそこに陸哉と空をさっそく発見。 偶然、2人が何かを話していたのが聞き取れた。
「賭けは、オレの勝ち。」
「・・・・・・。」
「で、いいんだよな?空。」
「・・・好きにしたら?」
けどそんなこと知りたくないし、今の俺にはどうでもいい。
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