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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#29  4月が終わる頃に・・・(3/4)
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隣に・・・

そしてそっちに夢中になっていたせいで比路は、もう一つ気付いてなかったことにようやく気付く。

「!?」

「ん?どうした?」

いつの間にか寮長が自分の隣に座っており、置かせたはずの距離がなくなってて、肩をビクつかせるほどまた驚いた。

「ほら。峰岸も寒いだろ?毛布やっから、もうちょいこっち来い。」

(なんでこっちに来るの!?)

ビックリにビックリが続いたせいで、元から高かった警戒レベルがマックスへ。
その気持ちは、声色にも態度にも素直に出すぎて丸わかり。

「僕はいいです。そこまで寒くないので要りません。」

「峰岸がよくても、これで風邪引かれたら周りにうるさく言われて俺が責任取らされんの。いいからこいって。」

「ヤですってば!」

そんな様子を一度も二度も三度も見てきたせいで、日暮寮長もいい加減痺れを切らしたようだ。

「・・・本当に面倒臭いヤツだな。」



比路と日暮寮長・・・

「いいから来いって!」

「うわァ!?」

半ば無理矢理に手を引いて、自分側に寄せた寮長。
そのまま己の体で支え、比路を腕の中にスッポリと収める。
そして持っていた毛布を。一枚で二人ではなく、一枚を丸々背中から掛けて比路だけを温めた。

「やだ、ちょっと・・・!離して下さい!」

「何を怯えられてんのか分かんねえが、そんなにツンツン警戒することなくね?」

「離して〜!」

「少しはおとなしくしろって、暴れんな。別に獲って食おうとしてるわけじゃねえんだから。」

すると、

「ん・・・?」

こんな至近距離にいるもんだからか。
何かに気付いた寮長は一瞬だけ動きが止まって比路を見つめる。

「峰岸、お前・・・。」

「え?な、なに?」

警戒しまくってドキドキしてる彼から、いったい何に気付いたのだろうか。



比路と日暮寮長・・・ 2

「暖か!なんだこれ!?」

「〜〜〜!?」

止まった寮長が再び動き始めたかと思ったら、比路の背に腕を回し、ギュッと自分勝手に抱きしめてきたのだ。

「あ〜・・・、これが俗にいう子供体温ってやつか。ぬくぬくじゃねえか峰岸。俺が生き返るわ、こんなん。」

「いやあああ!何してんの!?やめて離して〜!」

「おいおい、嫌がんなや。俺に抱かれるなんて頭下げられても滅多にねえんだから喜べって。役得だろ?」

「どこが!?思いっきり役損!!」

どうやら比路の体温の高さに驚いたようだ。
そこでぬくぬくポカポカ温まっている。
もちろんそんなことをされたら、比路だって余計に黙っていらてない。
さっき以上にキーキーうるさく暴れたが、

「はいはい。峰岸くんはいい子だから、ここでおとなしくしてような。」

「うぅぅ〜・・・ッ。」

日暮寮長に大人の対応で扱われ、諸共されなかった。



子供扱いは逆鱗に入らない

ポンポンと背中を優しく叩いて、比路を落ち着かせる寮長。

「あの、寮長?子供扱いしないで下さいません?」

「何言ってんだ。峰岸はまだガキだろ。」

「高校生になったから、もうガキじゃない・・・。」

「あ?高校生もクソガキの仲間だろ?下の毛が生えただけで一丁前なこと言うなや。」

「下の・・・毛?って、どこのこと?」

「峰岸。それマジで言ってねえよな?言わそうとしてるわけじゃねえよな?」

そんな日暮寮長のあやし方が上手いのか。
もちろん子供扱いも快く思わなかった比路だったが、次第にゆっくりと落ち着いていく。



クソガキとおっさん

「だいたい俺といくつ差あるか知ってっか?俺と10以上も違うんだぜ。」

ただ単に『クソガキ』と強く言われたから落ち込んだのかもしれないが、静かになったので好都合。

「・・・おっさん。」

「おいおいおい。こんなにいい歳した年頃の男に向かって『おっさん』は、いくらなんでもなくね?せめて『おにーさん』だろ?まだ30いってねえし。チロセンセーはおっさんで間違ってねえけど。」

「28歳って僕、もっと大人だと思ってました。もっとこう紳士的で男爵的で・・・。」

「28にどんだけ夢持ってんだよ、分かってねえな。なってみりゃ峰岸も思うって。歳食ってきても、だいたいこんなもんだって。」

「そうですね。日暮寮長は『だいたいこんなもん』ですもんね。」

「おま・・・!っていうか俺はまだ28じゃねえ!今年で28だ!」

比路は悔しくなって『おっさん』と言い返していたが、明らかにさっきよりもちょっとは警戒が解けたようだ。



腕の中で・・・

あれから何分の時間が経ったのだろう。
日暮寮長は身につけてる腕時計で今の時間を確認し、学習時間を迎えたことを知る。

「峰岸?」

寮長に対して比路の警戒は完全に解けたのか。その証にカクンうとうと眠たそうに寮長に寄り掛かかった。

「おーい。こんなとこで寝るなよ?」

「んー・・・。」

「寝んなって。風邪引くから。」

「無理ぃ・・・。眠い・・・。」

「あー・・・、めっちゃ体が温くなってきやがった。ダメだな、こりゃ。」

何度も何度も体を揺されてその度に現実に引き戻されたけど、比路は自分の体ごと寝る準備スタンバイ完了。お眠スイッチが入ってしまう。

「せめて体が冷えねえように、もうちょい毛布被ってくれ。マジで風邪引くとマズイから。」

「・・・うん。」

「よし、いい子だ。」

最終的に寮長が諦める形となり、そのまま身を預けて夢の旅に招待されていった。



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