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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#29  4月が終わる頃に・・・(2/4)
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犬飼は見た

偶然とはたまたま、やむを得ずして不確実性で起きるもの。
これもまた偶然が呼び寄せてしまったのか。
日暮寮長が比路を保管庫に連れて行く場面を、偶然見ていた犬飼。

「ん?」

彼は比路にも寮長にも仕返しを企んでいたが、どちらも失敗したり隙を付けれずにいた。

「・・・・・・・・・。」

なのでそんな二人の後をコソコソ静かに一人で尾行。
そして盗み聞きしてた二人の会話から、ここぞとばかりのチャンスをコッソリ掴む。

「・・・・・・ニヤ。」

やっぱりやられっぱなしでは引き下がれるわけがない。
犬飼はこのチャンスを無駄にしないよう、一人でもしっかりと企てて、即席であったが二人へ仕返しを執行。



仕返しされた二人

比路も近づいてくる犬飼の気配に気づかなかったようだ。

「・・・わッ!?」

ドンっと背中を押された比路は、そのまま中へ。

「え、なに!?」

抑えていた保管庫のドアがガチャッと閉められ、外からガチャガチャガチャッと頑丈に細工をされてしまう。

「ん?どうした、峰岸ー・・・って!ドア閉めんな!!」

「違っ、僕じゃない!今、誰かに背中押されて!」

目の前の警戒に気を取られて油断していたせいもあるが、武道習ってるはずなのに背後を取られるなんて・・・!今までサボっていた分の恥が極まる。

「くっそ・・・!開かない!」

そして引いても押してもドアノブをガチャガチャしても、うんともすんともしなくなった扉。
開かなくなってしまった保管庫の中で、比路も日暮寮長も閉じ込められてしまう。
しかもあと少しで学習時間が始まるから、みんな自分の部屋へ戻って行ったバッドなタイミングで・・・。



閉じ込められた二人

「はぁ・・・。ダメだ、誰もいやしねえ。」

ドアをドンドン叩いて大きな声で助けを求めても、近くに誰かがいる気配はない。
日暮寮長も自分の携帯電話を寮長室に置いてきたことに気付き、ここで助けを求めることに諦め、大きなため息を吐き室内の奥に戻ってその場に座り込む。

「ちょっと諦めないでよ!まだ近くにいるかもしれないのに!」

「やめとけ。どうせそのうち誰かが助けに来る。余計な体力消耗してないでおとなしく待とうぜ。」

学習時間に入れば、普段ならそこから日暮寮長の点呼が始まる。なのに始まらないとなれば違和感を覚える生徒がいるだろうし、チロ先生が間違いなくその変化に気付くだろう。
それにそんな時間までに自分の部屋に帰ってこないとなれば、比路と相部屋の司が心配しにやってくるはず。
そう案を口にした寮長は先の読めた動きに身を任せることにしたようだ。

「・・・・・・・・・。」

けどそれでも心休めなかった比路。

「・・・待ってて。今、ドアぶち壊して開けるから!」

お得意の力技で、この状況を解決させようとしたが、

「待て待て待て待て!だから明日、修理来るつっただろ!もう見積もってもらってんだから、これ以上余計に壊して出費増やすな!」

そこには大人の事情があるようだ。
せっかく比路がハァーッと強く込めた力を、寮長に止められ無駄に終わってしまう。



閉じ込められた二人 2

そういうわけで助けをおとなしく待つことにした比路と日暮寮長。

「・・・・・・・・・。」

比路としては警戒している寮長と、こんな場所で二人きりでなんていたくない。
助けが来るって分かっていても、そんな状態で心が休めるわけがないので、この距離を縮めるどころかちょっと置おかせて寮長と離れて座る。

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

そして静かに流れる時間。
二人して何も喋らなくなったから、一分経つのがとても遅かった。
そんな中で先に言葉を発したのは日暮寮長、彼の方からだった。

「・・・そういや峰岸。」

「はい?」

「お前、誰かに恨みとか買ってないよな?」

「はァ?」



自分の気付かないところで

日暮寮長から問われたことが、まさかすぎて比路も思わず問いを問い返す。

「えっと・・・、何?閉じ込められたのは僕のせいだって言いたいの?」

「違う違う。そう言うわけじゃないんだがー・・・、とりあえず心当たりないかって?同い年あたりの連中で。」

そう言われて考え込み、思い当たりそうな人物を浮かべようとしたが、特に心当たりがなかったようで首を横に振る。

「そうか。・・・まあ人間、誰にだって自分が気付いてない所で買ってる場合もあるしな。その類いと読んでアイツとは離させた方がいいな。」

「さっきから何の話?」

結局、寮長は何が言いたかったのか。
自分の中でいろんなことを解決させて、この話をしてきたのは寮長なのに一方的に終わらす。

「とにかくだ。頼むから峰岸もいい子でいてくれ。この間の犬飼たちの騒動だって、頭の固い上の連中らを言い包めんの面倒だったんだからな。」



4月終わりの夜

あれから時間は何分も経ってないのに、何分も経ったかのような感覚が走る。

「さすがに夜は冷えるな。やっと昼間が暖かくなったと思ったら暑ィし。」

そう言って立ち上がった寮長は保管してるペットボトルのお茶と備品の毛布を一つ掻っ攫う。
そしてその内の一本を比路に放ってナイスキャッチ。

「わ!?びっくりした。」

「そいつ飲んでいいから、ちゃんと水分補給しとけ。よかったな、閉じ込められた場所がここで。」

「・・・僕、お金持ってない。」

「いいっていいって。緊急事態なもんだしな。また発注数ミスった扱いにすっから気にすんな。」

いきなりお茶を貰ってビックリした比路。
せめて放る前に何か言ってくれればいいのに・・・っと、心の声で愚痴りながら、そのお茶の蓋をカラカラと鳴らして開けて一口二口三口と飲む。

(ふう・・・。)

自分では気付いてなかったが、割と喉が乾いてたようだ。
常温保管だったから緩いのに、ちょうどいい感じで飲みやすくお茶が美味い。



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