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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#29  4月が終わる頃に・・・(1/4)
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4月おわりの夜に

それはまたとある日の夜のこと。
学生寮にて学習時間がもうじき始まるので、それまでに飲み物を確保しておこうと、一人で自分の部屋から出てきた比路。
一階のロビーにある自動販売機までやってくると、

「お、峰岸。ちょうどいいところに来たな。」

そこにたまたまいた日暮寮長が比路に気が付き呼び止める。

「え?」

比路としては司の分も買って、さっさと部屋に戻りたい。
でも寮長に対して無視、シカト、そっぽ向くわけにはいかないので、渋々と嫌々そうに彼の元へ向かう。

「何ですか?」

けどその気持ちは、言葉にも態度にも素直に出すぎて丸わかり。

「峰岸、もうちょいだけでもいいから嬉しそうに来いって。この俺が呼んでんだから。」

もちろんそれを注意されたが、それは比路が日暮寮長を未だに警戒してる証。仕方ないと言えば仕方ないことだった。



日暮寮長の用事

「もう、何の用ですか?」

それはそれでまた別のお話なので置いといて。
比路を呼んだ日暮寮長の用事。それはー・・・。

「よし。んじゃそのまま俺についてこい。」

「は?え?あ、ちょっと!?」

何なんだろう?
そう言ってファイルに挟んだ何かの書類とボールペンを持って先に行く寮長。
こっちはまだ行くと言っていないのに、拒否権どころか拒否を選ぶ選択肢すら与えて貰えなかった比路は、そんな寮長を不審に思いつつ後をついていく。

「え。なに、ここ?」

「何って、ただの保管庫だろ。」

そして到着したのは学生寮・一階の隅にある保管庫。
ここには青ノ葉の制服にジャージ、体操服や指定の鞄や文房具、また常温保管出来る飲み物や食べ物。部屋で使ってるベッドのシーツなどの替えやタオルに下着に靴下などの簡単な衣類品もあり、また必需品の避難用具や防災用具、電気用品なども保管してあるただの倉庫。

「いつも月末近くに在庫を確認してんだ。本来は克也にやらす予定だったが、アイツ今日も帰り遅いからな。で、たまたま通りすがったナイスタイミングの峰岸に頼んだわけだ。つーことで克也の代わりにお前が手伝え。」

「なんか腑に落とせない理由ですが、いいですよ別に。克也の代わりになれるかわからないけど。」

日暮寮長はその中で保管してある備品の在庫確認を、久野の代わりとして比路に付き合わせる。



学生寮 保管庫

「本当に備品が何でも揃ってるって感じなんですね。」

こんな機会だとはいえ、青ノ葉の学生寮にこんな場所があったことに新鮮さを覚える比路。
保管庫の中に入り、キョロキョロ周りを見渡しながら物色する。

「まあな。なんだかんだ街に行くまで時間かかっしな。休日に部活で行けなかったり間に合わなかったりしたら授業や生活に支障出るだろ。そうなんねぇように色々用意してやってんだ。峰岸も何か困ったことあればいつでも俺に言ってこいよ。365日24時間営業で格安に売ってやるから。」

「無料じゃないんですね・・・。」

「当たり前だろ。歩く購買部とでも呼んでくれ。」

無料じゃないとはいえ、この価格にはビックリ。
文房具類とかも街の方で売ってるブランドと一緒なのに、はるかに安くて度肝を少し抜かれた。
これなら休日に街の方へ行かなくても、寮長に言って買わせてもらえれば身の回りの物が安く揃えられる。
さすがにパンツとかは買いたくないが、これはこれで便利に使わせていただきたい。

「ったく。これだけ尽くしてやってんのに何で誰一人『様』付けて呼ばねえんだよ。マジやってらんねえ。」

「・・・・・・・・・。」

でもだからと言って、日暮寮長を様付けてまで呼びたくはない。
日頃の行いが云々かんぬんっということで、比路も含めて全学年の生徒が嫌がるのであった。

「もうこの際、誰でもいいからさ。峰岸でもいいから様付けて呼ばねえ?」

「嫌ですよ、絶対。」

っというより呼ぶ人、本当にいるの?



お手伝い

「それで具体的に僕は何をすればいいんですか?」

そういうわけで日暮寮長の仕事を手伝うこととなった比路。
日頃から司の面倒を見てるだけあって、何かを手伝うことには慣れているので、そうとなればそれなりに気合を入れる。

「ん?ああ、じゃあドアが閉まんねえように抑えててくれ。」

「は?」

けど頼まれたことはソレだけ。
他は寮長が一人でパッパ、パッパと進め始めた。

「・・・これってお手伝い?そもそも僕、要ります?」

「要るから連れて来たんだろ。保管庫のドアが壊れかけてんだ。下手すっと内側から開けられなくなんの。明日、修理頼んであっから、それまでの辛抱だけどな。」

「それなら明日やればよかったじゃないですか、一人で。」

「そんな寂しいこと言うなって。俺だってこんな仕事ちゃっちゃと終わらせたいし、黙々と一人でやんのも飽きてくんの。だから適当に話し相手にでもなっててくれ。」

せっかく入れた気合は何処へ向かわせばいいんだろう。
結局、ソレ以外はやらせてもらえず、ただドアが閉まらないように抑えながら日暮寮長の話し相手となった。
ちなみに久野も話し相手として毎月付き合わせてることと知り、彼の苦労が目に見えて浮かんだ比路だった。

(克也も大変なんだな〜。)



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