≪ top ≪ main


青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#28 それぞれの入部先(後編)(1/4)
]  [目次へ]  [

褒め合う生徒たち

昼休み。昼食の寮弁を食べ終われば、午後の授業が始まるまでは自由時間。賑やかな校内が外までもっとガヤガヤして、みんな好き勝手で思い思いにこの時間を過ごす。
そしてB組の教室に稚空の姿があり、隣のA組から遊びに来ていた。

「あ、いいな〜。こっちのクラス、午後一発目から生物じゃん。」

「うん、そうだよ。藤堂先生って面白い人だよね。」

「めっちゃくちゃ面白いよ。帰りのホームルーム、必ず生物のロマンを語ってくるからホント好き。生物一筋すぎるよ、あの人。」

話題は今日これからの授業のこと。

「稚空くんは次の授業なんですか?」

「本田先生の国語だよー。あの人、声も優しいから朗読されると眠くなってちょっとキツイ。」

「わかる〜。心地いいんだけど午後一発目は確かにキツイな。寝る前に絵本読んでくれてるみたいで。」

そんなにお互いにしてお互いの担任を褒めまくる噂話をしていたものだから、されていた本人らは「はっくしゅん!」っと。思わずくしゃみをしてしまう。



藤堂 聖

そうしてあっという間に午後の授業が終わり、帰りのホームルームが始まる。
もちろんどのクラスも同じ時間に同じことをするのだが、1年A組のホームルームだけは他とちょっと違っていた。

「藤堂先生、よろしくお願い致しします。」

「はい、相沢君ありがとう。それでは諸君、ホームルームを始めますよ。」

クラス委員長の圭が号令をかけるとA組の担任はのそっと教卓の前に出る。
彼の名は藤堂 聖(とうどう ひじり)。
身長は177cm。1年A組の担任で、常に白衣を着用しており、モノクルを掛けた生物科担当の男性教員。
生物への愛が一筋すぎなのと綺麗に整えて後ろに束ねた長髪が、より藤堂先生の不思議でミステリアスなオーラを醸し出す。

「ー・・・これにて明日の連絡事項は以上です。それでは今日も生物のロマンをここでお一つ。」

藤堂先生は本来ならもう少し前に登場するはずでした。が、ちょっと予定が狂ってズレてしまいました。
忘れてたわけではなく、ズレてしまっただけです。
すっぽかしたわけでもなく、遅くなってしまっただけです。
お詫びに今回だけ全部語っていただきます。藤堂先生による本日の生物ロマン論!



生物ロマン論

「本日は『生物の進化』についてお話し致します。諸君、心して聴くように。」

帰りのホームルームで語られる藤堂先生の生物ロマン論。

「生き物は進化によって不利のない方向へ変化していきます。けれど弱い者が強くなりたいと念じて変わるわけではありません。」

これは興味ない人にとってはちょっとキツイかもしれない。
しかし授業では時間が足りなくなるため、なかなか語ってくれないので結構貴重。

「自然界では環境に適応した者だけが生き残れる仕組みですので、適応度を高くして生存率を上げているだけ。想いがどれだけ強くても犬から人間へ、人間から鳥へ変わることは出来ませんから。」

興味ある人は本当によく耳を立てて、彼の語りを最後まで聴く。聞くのではなく聴く。

「適応に応じて強くなることが出来たとしても、本質である型は変えられない。所詮、人間は人間。犬は犬。猫は猫。どこまでいっても本質だけは変えられない。・・・本当、ロマンを感じますよね生き物には。」

ただ難点が一つ、話が長いこと。
4月の最初のうちは短かったが段々と語る時間が長くなっていき、おかげでA組は今日も一番遅くにホームルームが終わった。
全部語ることが許されたのは今回だけ。次からはあっても略します。



文芸部へ

そうして本日の授業が終わり、放課後へ突入。
午後の部活動が始まった。

「梅ちゃんお待たせー。結構待たせたでしょ?」

「いえいえ、お気になさらずに。教室を掃除してた司くんや比路くんとお話してたので大丈夫でした。」

「今日は体調大丈夫?参加出来そう?」

「はいっ。今日は大丈夫です。1日ずっと平気でしたので行けます。」

「そっか。よかった。」

クラスは違うけど同じ部活でルームメイト同士の稚空と梅ちゃん。
A組の教室前が待ち合わせ場所と決めており、一緒に二人揃って文芸部の部活場所、図書室へと向かった。

「ボクも藤堂先生の生物ロマン論、一度は聞いてみたいです。」

「今日も面白かったよ〜。為になるかは分からないけどすっごく面白くて聴き入っちゃってた!オレもちょっとロマン感じたよ。」



青ノ葉 文芸部

「「おはようございます。」」

稚空と梅ちゃん。文芸部の部活場所にやってきた二人は揃って図書室のドアを開ける。
すると中にいた部員は上級生が二人ほど。
青ノ葉の文芸部は参加自由型の部活動。二週間に一回は全員集まる日があるが、その日だけ出ればお咎めなし。だけど今日はその日ではないから、他に用事がある子はみんな来られないそうだ。
みんなが全員集まれば短歌や川柳を作ったり、各々が作った創作の小説を読みまわしたりする。
けど参加人数が少なければ図書室にある本を読んで感想書いて提出するだけ。後日、書いた感想を感想されて評価が良ければ学校のオススメ作品のレビューとして、実際に図書室に置いてくれるそうだ。

「稚空くん、何かオススメな作品ってありますか?一番お好きなジャンルとか。」

「恋愛系にしろサスペンスにしろ色々好きだし読むけど、一番って言われたらオレお伽話なんだよね。幼い頃から読んでた絵本を小説とか文章で読んだりすると、また違った世界観が見えるんだよ。色々、諸説あるけど「本当はこうだったんだ」っていう怖い真相もあってドキドキするんだ。絵本はすごく優しい世界だったんだって再確認もできるし。」

そして今日も二人はそれぞれ好きな本を取り、空いてる席について読み始めた。

「梅ちゃんはホラー大丈夫なんだっけ?」

「はい。とってもとっても大好きです。」

「お伽話じゃなくて普通のホラーになるけど、耐性あるならこの辺りオススメかも。」



]  [目次へ]  [
しおりを挟む




BL♂GARDEN♂BL至上主義♂
2015.05start Copyright ちま Rights Reserved.
×