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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#27 それぞれの入部先(前編)(3/3)
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やってくるもう一つの影

「冥。免許取り行くなら俺も一緒にしていい?」

「誘うつもりで話してたから、お互い夏の大会終わったら行くか。だから克也、俺と付き合え。」

「うん。冥がいるなら安心出来るから付き合うよ俺。」

そんな三人の元へやってくる一人の影。

「あっれ?めっずらし〜。この時間にかっつぁんがいるなんて。」

「あ。豊先輩、おはようございます。」

「・・・・・・・・・。」

その男子生徒もまた久野の知り合いのようだが、鬼頭はその人を見た途端に口を黙らせ、視界に入れないように黙々とご飯を食べ進めた。



小町 豊

比路、久野、鬼頭の三人の元にやってきて、鬼頭の隣ではなく久野の隣に座り、わざわざ距離を詰めてくる。
今時の子らしく少し伸ばした後ろ髪をお洒落に結っており、指定のネクタイは付けず制服のシャツを第二まで開けて何をアピールしてるのか。

「えっと一応、紹介するね。三年生の小町 豊(こまち ゆたか)先輩。昨日会ったばかりだから、もう初めましてじゃないけど。」

彼の名は小町 豊。
身長は179cmで三年生の男子生徒。
こんな身形だけど実家は呉服店を営んでおり、柔道部の部長だけあって体型も相応にしっかりとしている。
比路とは昨日入部届けを出した時に顔合わせしたからもう初対面ではないが、こうして改めて言葉を交わすのは今日が初めて。

「今日は槍でも降ってくるのかね〜?」

「だから人のこと、そんなに珍しがるのやめにしませんか?あと狭いので、もうちょっとそっち行ってください。」

「いいじゃ〜ん別に。オレとかっつぁんの仲なんだから、もうちょい親睦深めようぜ。」

「朝っぱらから変なふうにふざけるのも止めませんか。」

久野と同じ部活の部員だけあって、仲は悪くないようだが、どちらかと言えば小町が必要以上に久野に構ってるようにも見える。



久野と小町

「お〜?どこの一年がいるかと思ったら、峰ぎっちゃんじゃん。」

「おはようございます豊部長。み、峰ぎっちゃん?」

そして久野から紹介受けたが、比路も小町と同じ部員同士。
昨日入部した時に二人は会い、小町も比路を覚えていたようだ。

「ふむ、なるほど。かっつぁん、ナンパ成功祝いに赤飯炊くか?」

「そんなんじゃありませんから。余計なことしなくて結構です。」

「あーよかった。峰ぎっちゃんにちゃんと紹介してないもんだから、かっつぁん盗られてるかと思った。」

「は?何を?」

すると今度は小町から比路へ。

「もうこの際だから包み隠さず、ちゃんと自己紹介してやんよ。」

カタッと席を立ち、後ろから克也に乗っかり自分に引き寄せるように腕を回しー・・・。



久野と小町の仲

「オレとかっつぁん、こういう仲だから。邪魔しないでね峰ぎっちゃん。」

「ーーー!?」

「えぇ!?」

っと、朝から爆弾発言の自己紹介をかます。

「比路に何言ってー・・・!断じて違うから!ふざけるのもいい加減にして下さい!!」

すると久野は真っ赤な顔してとんでもなく怒り、自分に乗っかってきた小町をドンッと思いっきり突き飛ばした。
悪ふざけもほどほどに?

「あ〜っ!またかっつぁんにフラれた〜!オレのハートもうズタボロ〜!」

「知りません!そういう趣味ないですし、友達や先生に疑われるの本気で本当に嫌なのでやめて下さい!」

とにかく小町のせいで、あっという間にこの場がガヤガヤ騒がしくなっていく。
そんな中でも気に構わず黙々とご飯を食べる鬼頭。完全に自分だけの世界に入っていた。



鬼頭と小町

そんな鬼頭に気づいた小町。
席に戻ると共に、今度は彼に構い始める。

「そ〜だ、峰ぎっちゃん。前に座ってるメイちゃんの名前って知ってる?」

「・・・・・・・・・。」

「もう、かっつぁんから教えてもらった?」

そして今度は小町から鬼頭を紹介。
その時、鬼頭が何も語らないまま強く睨み、小町もそれに気づいたくせにそのまま続行。

「この人、鬼の頭って書いて『きとう』って言うんだけど、間違っても鬼のところを亀って書いちゃ駄目だよ。メイちゃんの名前が18禁にー・・・ブッ!」

「黙れ。」

したものだから、湯飲みに入ってたお茶を顔面に向けてかけられてしまう。
静かに怒った鬼頭はそのあと何も言わず、ガタッと席を立ちスタスタと使った食器類を返却棚に片付け、一人先にどこかへ行ってしまった。

「豊先輩、冥を怒らせないで下さいよ。」

「ペペッ、なんだよアイツ・・・。せっかく人が和ませようとしてたのに。」

「いや、思いっきり悪気ありまくってましたよね?和ませるつもりでいたなら、もっと別のやり方でして下さい。」

当然、久野にも叱られる始末。
悪ふざけもほどほどに。



比路と久野の始まり

「かけられたお茶がぬるくてよかった。」

「俺からも冥に言っておきますから、あとでちゃんと謝って下さいね。」

「ヤだよ。メイちゃん明らかにオレのこと嫌ってるし。」

「それは豊先輩の自業自得でしょうに。」

鬼頭が先に食堂を後にしていなくなったので、この場に残っているのは比路と久野と小町の三人。
残ったメンバーがちょうどよかったのか。
小町は気になってたことを二人に話す。

「ところでさ峰ぎっちゃんとかっつぁんって何?結局どんな関係なん?」

「どんなって言われても、同じ道場に通ってた昔からの知り合いですってば。」

「幼馴染みってこと?」

「うーん?小・中で通う学校の地区違ってたから、幼馴染みって言っていいのかどうか。」

それは比路と久野の関係。今度は悪ふざけなしで問う。
二人がどうやって出会ったのか知りたいようだ。



比路と久野の始まり 2

比路と久野の始まり。
それは小学校低学年、片方が二年生。もう片方は一年生の夏に初めて会ったと久野が話す。

「っと言っても、最初は全然話してなかったんですけどね。」

「それでお泊まり合宿の時に・・・、か。は〜、なるほど。地域の道場でも普通にそんなことやるんだな。」

「ふれあいにこにこ道場でしたけどね。稽古どころか先生もそんなに厳しい所ではなかったですし。」

今となっては懐かしいあの日の思い出。あの時のことを話す久野は懐かしそうにしていたけれど、なぜか比路は気が抜けてない様子。手に湯のみを持ったままお茶を飲まず、隣にいる久野をジッと見つめる。

「・・・・・・。」



比路と久野の始まり 3

「で?何あったん?その時。」

「・・・ちょっとそれは言っていいのかな。」

「そこまで話しておいて言わないはないっしょ?かっつぁん言っちゃえって。峰ぎっちゃんもいいだろ?」

「え。えっとじゃあ『上は大水、下は大火事ー・・・』。」

そしてそれを久野が口にした途端、

「克也。僕、先行くね。」

「え?あ。あぁ!比路ごめ・・・「知らない。克也なんて。」

やっぱりそれは話しちゃダメだったようだ。
機嫌を悪くした比路は話の途中でガタッと席を立ち、スタスタと使った食器類を返却棚に片付け、一人先に行ってしまう。

「で?かっつぁん何、今の。なぞなぞ?」

「と、とりあえず比路にダメって言われたから、その・・・。その時に何かあったってことで察して下さい。」



青ノ葉柔道部 朝稽古

そうして朝練開始の時刻を迎えて、柔道部も朝稽古が始まった。
青ノ葉の柔道部は、そこまで部員は多くはないが試合には十分出られるほどの人数。
選抜されたレギュラーは久野、小町を始めとした生徒が数人いて、全国出場の経験は過去にもないがそれほど悪くない成績を残している。
そして三年生と二年生は道着に着替えて混合で組み手を行い、一年生はまだ道着を持ってない子もいるので皆ジャージに着替えて、基礎体力作りとして道場の周りを走り込む。
そこには昨日入部したばかりの比路の姿があり、再び戻ってきたこの道なりに心を擽られながら、彼も稽古に励んでいたのでした。



青ノ葉 第27話をお読みいただきありがとうございます


久しぶりに新キャラが出てきました
鬼頭も小町もずっと前から考えていた二人だったので
ようやく登場させることが出来てホッとしております
小町に限っては「彼が原因で青ノ葉の制服がブレザーになった」
そう言っても過言じゃないはず・・・
しかもちまちまちの作品の中で堂々と「変態男子三戦士」に
ランクインできるほどのキャラ(笑)
そういうのがお好きな人は、ぜひ今後の彼にご期待ください
(でも作者的には小町より鬼頭のが好きなんですよね)


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