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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#24 青ノ葉 月下光(Epilogue)(3/3)
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比路の昔話

階段に腰を下ろして座る二人。
もうじき学習時間が始まるせいか。
物音はしているが静まっていく雰囲気に包まれていく。

「僕、ね。幼い頃、すごく泣き虫…だったんだ。それで強くなりたくて柔道習い始めたんだ。」

そんな中で少しだけ自分の昔のことを話す。

「けど中三の夏休み。隣町の道場から道場破りの体験に来られちゃって。克也が辞めちゃった後だし、僕もいきなりで初めてだったからどう相手していいか分からなくて。」

「負けたのか?」

「ううん、負けなかったよ。でもその時ちょっとしたミスで相手の子に怪我させちゃって…。」

当時、負わせた子の怪我はそんなに大きいモノではなく大事に至らなかった。けどその時の感触が自分の中に残っていて、それが怖くなって受験勉強を機に辞めてしまった。

「強くなりたくて通ってたはずなのに。人を怪我させるほどの力までは求めてなくて・・・。」

「・・・峰岸。」

その当時のことが悔しいのか。
そう口にしながら比路は自分の服を強く服を握っていた。

「確か今日、森に物凄い技くらわしてなかったか?」

「それはそれ。これはこれ。司は別。人が気にしてることわざわざ言ってくるんだから。」



比路の昔話 2

そんなトラウマを抱えた比路は、過去の出来事を克服出来ずに今も立ち直れていないようだ。
受験と共にこのまま辞めるつもりでいたが、そこにも迷いもあり心にそれが引っかかっていた。

「ある人と約束してるんだ。」

「約束?」

「・・・うん。強くなるって、強くなれって約束されて。」

それも比路の昔話の一つ。
このまま辞めてしまえば交わした約束を破ってしまう。
トラウマを克服出来ずにいても、それだけはしたくない。いやだってハッキリ分かっていたから。

「朋也にとって約束って、なに?」

「え。」



約束って、なに?

比路はそれをどんな気持ちで言ったのだろう。
その答えに朋也は、

「交わした以上は、守るべきモノだろ。」

と、返した。

「・・・うん。そう、だよね。」

過去のトラウマを抱えながらも揺れている天秤。
けど、ハッキリしてる気持ちがあるのなら、その気持ちを尊重するべきでは?

「柔道自体は嫌いになってないんだろ?」

「・・・うん。」

「それなら峰岸の中でもとっくに答え出てるんじゃないのか?」

「そう・・・、だね。」

だから朋也は、悩みに迷ってるその背中を押すことにした。
最終的な決断は比路自身が決めることだから、これ以上のことは言えないけど、彼の選ぶ選択に後悔がないように。

「ありがとう朋也。話を聞いてくれて・・・。おかげで気が晴れたよ。」



やっと伝えられた言葉

「峰岸。」

「ん?」

「それ、俺のセリフ。」

もうじき学習時間が始まるので、二人もそろそろそれぞれの自室に戻ることにした。
その最後に、

「あの時も今日も助けにきてくれてありがと、な。ずっとそれだけ伝えたかった。」

「お礼なんていいよ。お礼言われるほどのことはしてないし。」

「いや。本当にありがとう。」

ここにきてようやく。ずっとずっと言いたくて言えなかったこと。
ありがとうの言葉を伝えられた朋也だった。



改めてよろしくね

「ねえ、朋也。ヤじゃなければこれから僕らとウンと話してウンと遊ぼ?クラス委員長とかそんなのもナシにして、僕らと一緒に。」

「あ、あぁ。」

「これからもよろしくね朋也。」

「こちらこそ。」

そして二人は握手を交わし、改めて友達としての友情を刻むのでした。

「・・・この貸しは必ず返すから。」

「いやいやいや。なにそれ?返さなくていいよ、そんなこと。貸しつくった記憶ないし。」



青ノ葉 第24話をお読みいただきありがとうございます

朋也エピソードは、これにておしまいです
4パートで終わらすはずが、全部で5パートになりました
遡ってくるまで時間かけすぎてしまったのが原因
でも書いてて楽しかったです
詰まりそうではなく実際に詰まりましたけど、
それでも楽しかったです
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!


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