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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#23 青ノ葉 月下光(4)(2/4)
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久野の助言

「この状況で助言するのもアレだけど今回ばかりは分が悪い。お前の都合なんてとっとと諦めて帰れ。お前に勝ち目なんて元からないんだから。」

「いきなり何言って?誰がてめェの指図なんて聞くかよ。」

久野がきて流れが変わった今。
けどここ残っているのは犬飼だけじゃない。
桃地も含めてほとんどいなくなってしまったが、矢口がこの場に残っていた。

「おい、生徒会。俺もいること忘れてないだろうな。」

「矢口、か。」

そしてそう言って再び相棒のナイフを比路たちに向け、自分の存在を知らせると共に、この流れを自分たち側に戻そうとした。

「入学したばかりの一年にこれ以上の怪我を負わさせたくなければ生徒会もおとなしくすることだな。」



最後の忠告

「何もわかってねぇのは久野、てめェの方みたいだな。」

この状況を読んで久野はやめろと言い続けるが、犬飼や矢口は聞く耳を持つことなく、彼らに疲れたような息を静かに吐く。
これが最後の助言。いや彼なりの忠告だったようだ。

「分かってるから言ってやってる。そこに昔からよく見知った子がいて痛い目あうのはお前らなんだからやめておけ。」

「お前の知り合いどっちか知らねーけど痛い目合うわけねェだろ。」

けどそれでも聞く耳を持たなかった。
それどころか

「こ〜んな強面とチビなんかに。」

と、犬飼が口にしてしまう。



瀬戸際で

その途端。

「ー・・・冴ッ!」

「え?」

気がついた時には犬飼の足が空に、頭が地に向いていた。
今までろくに抵抗してこなかった比路が犬飼を背面からすくい上げており、

「チビっていうなー!」

「ーーーーッ!!!」

そのまま加減のない威力で地面に叩きつけたのだ。

「人が黙って聞いてれば好き勝手にー・・・って、あ!思い出した!あんたあの時の!」

そんな一連の動きの瀬戸際でようやく比路は犬飼を思い出す。
そして最後に、

「人のこと『チビ』呼ばわりするなって言ったよね。」

「ぐ・・・ッ。」

投げつけた犬飼を生意気な面と冷たい目で蔑むのでした。



なかったことにしたかった

「本気で忘れてたんだな峰岸。」

「なかったことにしてたから・・・。」

ついに犬飼に手を出した比路。

「だから言ったのに・・・。」

見ていた久野もまた深い息を吐いて、「あ〜あ〜」と言葉も零す。
またもや投げつけられた犬飼。目をグルグルと回してしまう。
その時、

「ふざけやがって!」

そんな犬飼を見て、そのまま黙って見過ごせなかったのか。
今度は相棒のナイフを構えた矢口が、比路に狙いを定めて向かってきた。

「あーもー・・・。」



納得出来ない現実

そしてその次も瞬きをしたら見逃してしまう一瞬の瞬間。

「鬱陶しい!!」

「!?」

比路は言われた禁句によっぽど頭にきたのか。
自分に向かってくる矢口にも決定的なダメージを。彼が持つ相棒のナイフを蹴った衝撃でパキーンと折れ、刃だけが地面に落ちる。

「さっきから危ないだろ!こんなモノ振り回して!」

「え?」

その一瞬を目の前で見ていた矢口ですら、直ぐに理解が出来なかったようだ。
説教してくる比路の言い分は最もなことを言い放っているが、納得なんて出来ない。
こんなチビの身丈なくせに矢口の自前なナイフを一瞬で蹴りおるなんて納得出来ないのに、でもそれが現実だった。



犬飼の反撃

「いくらなんでもこんなことしちゃダメだよ!自分がしてたことちゃんと分かってる?」

「え、あ・・・。」

「本当に誰かに当たったらどうすんのさ!怪我だけじゃすまなくなるんだよ!」

相棒を折られた矢口は納得出来ないショックにより戦意を静かに失う。
比路がガミガミと矢口に説教してる彼らのそんな一連を見ていた久野。

「だから言っただろ。痛い目合うからやめとけって。」

目を覚ました犬飼に残念そうに言葉を零す。
矢口同様、この結果に納得出来ないのは犬飼も同じ。

「・・・・・・くっ。」

このやり場のないムシャクシャとした遣る瀬無い気持ちをどうするつもりなのか。
倒された体をゆっくり起き上がらせ、つくった握り拳にひとまとめる。



久野の防衛

そして久野が背を向けて隙が生まれた瞬間、

「うるせー!てめーだけでも殴らせろ!」

それは八つ当たりもへったくりもいいところ。
犬飼はこの拳で久野に殴りかかった。が、

「嫌に決まってるだろ。そんなこと。」

「!?」

生まれたはず隙は何処へやら。
久野は背中にも目でもあるかのように、勢いよく向かってくる犬飼の拳をスッとかわし、その片腕を両手で掴んで懐に入って肩で担ぎ前へ投げ倒し。比路が投げ飛ばしたやり方より美しく、綺麗な一本背負いが決まった。

「毎度毎度、余計な仕事ばかり増やしやがって。」

「く・・・!」

「本当お前ってロクなことしか起こさないのな。」



逆両思い

比路だけではなく、久野にも投げ倒された犬飼。

「っつー・・・。生徒会が生徒投げとばすな!」

「仕方ないだろ。余計な仕事ばかり増やすお前がムカついて、つい。」

「ついってなんだ?正当防衛とか何かもっと色々言い訳あるだろ!」

「隙だらけのお前に防衛なんて必要ないだろ。」

「ってか、常識的にありえねえだろ。生徒投げとばす生徒会とか。」

「常識云々言うのなら、その前に当たり前のことを守ってから物事言え。」

しかも久野にいたっては正当な理由は特になく、ただ犬飼がムカついたから。
始めから手を抜いていたから気絶しなかったものの、正当防衛であってもなくても。久野が本気で犬飼を投げ倒していたら、きっと今ごろ医務室行きになっていただろう。

「くそムカつく。お前マジで嫌い。先公のイヌのくせに。」

「奇遇だな。俺もお前のことムカつくし、マジで嫌いだから安心しろ。」



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