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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#22 青ノ葉 月下光(3)(3/4)
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初対面ではない二人

比路は明人の情報を頼りに、まずは校舎の渡り廊下を目指す。
寮の門限は過ぎていても、まだ数名が残っているようで校舎から漏れる照明が道に光を照らしてくれている。
そのおかげもあり迷いなくそこに辿り着けたが、

「どうしたんすか?こんな時間に。」

ちょうど渡り廊下にいた二年の男子生徒、桃地 小太郎が向こうから話しかけてきた。

「もう遅いっすから寮に帰った方がいいっすよ。」

比路と桃地。二人は初対面ではないがこうして改めて顔を合わせるのは今が初めて。
以前の悶着で桃地は比路をよく覚えているが、比路は犬飼の下っ端の一部だった桃地を覚えていないようだ。

「寮に帰らないと、もっと大変なことになるっすよ。」

「すみません。今、友達探してるので・・・。おっかなそうな一年生見ませんでした?」



桃地のサイン

その時のことを印象に残ってなかったせいで思い出せない比路。
話しかけてきた桃地を怪しむことはなかった。

「ダメっすよ、ダメ。キミも自分と一緒に帰るっすよ。」

しかし何を言っても何を訊いても、比路を寮に返そうとする桃地。返ってくる言葉は求めた答えではない。
それが頼りなく思えたのか、何かを感じとったのか。

「ごめんなさい。急いでいるので失礼します。」

平行になりかけた話を無理矢理に阻止。

「キミも人の話ぐらいちゃんと聞いた方がいいっすよ。」

けど桃地は無視してるつもりはなく、彼なりにサインを出していたのだ。
それを気づかず、比路は桃地の横を素通りこのまま渡り廊下の先に向かおうとした途端。

「そこまでだ。」

「!!」

夜の暗闇の中。月明かりに輝いたナイフの刃が突然目の前に。突然突きつけられ、この足を止めさせられる。

「自分、言ったっすよね?寮に帰らないと、もっと大変なことになるって。」



囲まれる比路

渡り廊下の影で待ち伏せ、比路にナイフを振り翳した生徒の名は二年の矢口 純平。

「桃地。コイツで本当にあってるのか?」

「間違いないっすよ矢口さん。犬飼さんをぶん投げた一年生、自分は絶対に忘れないっすから。」

「こんな野郎に伸されたとか、いまいち信じられないんだが。」

前方には矢口が翳したナイフが。
後方には桃地を含めた複数の不良生徒が。

「・・・・・・。」

矢口が現れると共に、他に隠れてた不良生徒もぞろぞろ出てきて自分の周りを囲まれ、比路の動きが止まる。

「ま。コイツを目の当りにしたら生意気な一年でもさすがに怖気つくか。」

「・・・・・・。」

「そんな怖い顔しなくて大丈夫っす。おとなしくしていれば痛い目合わずに済むっすから。このまま犬飼さんのところへ一緒に来てもらうっすよ。」

そして抵抗すらろくに出来ない。いや、しないまま桃地や矢口たちに連行されて行く。



荒れ果てた園芸部

不良生徒たちに捕まった比路は、そのまま渡り廊下を渡った先へ。園芸部の部活場所へと連れて行かれる。

「え?なに、ここ?」

けど目の前に広がる景色が。花壇に畑、目印にしていたビニールハウスすらもひどく荒らされていて驚きを隠せなかった。
でもそれは比路だけではない。

「え!?なんっすか、これ・・・?」

連れて来させた桃地が何故かこの状況に驚いており、顔を青く染めさす。
そして、

「犬飼さん!どういうことっすか、これ!?ダメっす!今すぐにやめて下さい!!」

向こうで束になってる複数の不良生徒に大きな声を出して、これ以上荒らす行為を止めさせようとした。



荒れ果てた園芸部にて

「ダメっす!ダメ!こんなことしたらめぐ先輩に・・・ッ!」

「はァ?いきなりなに言ってんだ。小太郎、お前がいいって言ったじゃねぇか。」

そんな桃地が止める声に、向こうにいる複数の不良生徒たちの中から犬飼が一人出てきてこっちにやって来る。
けれど犬飼と桃地。それぞれの言い分は二転三転すれ違っており、桃地が負け気味で言い争う二人。
ここにきてまさかの仲間割れ?

「んだよ?小太郎、まさかあんなお子様会長が怖いのか?お前が情報提供してくれたくせによ。」

「た、たしかに例の一年生のこと自分が言ったッす。でも園芸部まで荒らしていいとは一言も。」

すると不良生徒の束の隙間から一瞬だけ見えた一人の人影。
それにハッと気づいた比路。
門限過ぎても帰ってこないから探していた彼の名を。今もそこで暴行を受け続けて耐えている彼の名を呼んだ。

「朋也!?そこにいるの?」

「・・・峰岸、なんで?」



変わった流れ

その一瞬で変わった流れ。

「おい。動くなよ。」

「・・・・・・・・・。」

けど変わったのは一瞬にすぎなかった。
やっと朋也を見つけられたのに。
すぐそこにいるのに。
矢口が翳してくるナイフが比路の動きを封じた。

「冴。とっととやっちゃえよ。」

「おっと、そうだった。この前は油断してすっかり世話になったからな。」

そして桃地との言い争いを油断した犬飼が、今度は比路の前へやって来る。

「やられた分きっちりお前にも返してやるから覚悟しろよ?まさか忘れたなんて言わないよな?」

「え、だれ?何の話?」



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