≪ top ≪ main


青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#21 青ノ葉 月下光(2)(3/3)
]  [目次へ]  [

朋也と明人

永瀬がいなくなり急に静かになった室内。
残った二人で使用した食器類を片付ける音がカチャカチャ大きく響く。

「鈴木先輩、今日はありがとうございました。そしてご馳走様、です。」

「こちらこそ片付けまで手伝ってくれてありがとう。ここはもう大丈夫だから、後藤くんもそろそろ寮に帰りなよ。」

「いえ。まだあっち(園芸部)の片付けも残っているので。」

「あ、そうだったんだ。でももうじき門限だから早めに帰るんだよ。」

そして一通り片付けが終わると、朋也も園芸部の部活場所へ戻って行った。

「後藤くん。よかったらまたいつでも遊びに来ていいからね。めぐいなくて一人の時でも歓迎するから。」

「・・・はい。ありがとうございます。」

家庭科室にまだ一人残った明人に見送られながら。



忘れてはいけないこと

活動時間より長かった休憩時間。
暮れた日が夜を迎えようとしており、暗くなった空に昇った月が明かりを照らし始める。
色々あって色々バタバタして色々流されっぱなしで少し疲れたけど、それでも悪くなかった印象を朋也に抱かす。

「・・・・・・。」

けど、忘れてはいけない。
これは当たり前ではないことを。

「・・・・・・・・・。」

だって朋也にとっての、それは・・・。

「よぉ。遅かったな。」

「!?」

望んでいなくても望まなくても、彼にとって慣れた日常。
これが彼にとっての当たり前だということを・・・。



待ち伏せ

家庭科室から渡り廊下を通って、園芸部の部活場所に戻ったその時。そこで朋也を待ち伏せしていた二年の不良生徒・犬飼たち。

「やっと来たか。お前が来るの待ってたぜ。」

朋也や永瀬が家庭科室で休憩していた時間は活動よりも長かったが、その間に彼らがやったのだろうか。
花壇に植えていた花は踏み荒らされ、畑に植えていた作物も全てなぎ倒し、今もなお数名がその行為を止めずに続けている。

「・・・・・・ッ!」

さっきまで見ていた風景と、目の前に広がっているこの風景。
それはあまりにも異なりすぎていた。

「お前が園芸部、ねぇ。そのなりでよく入ろうと思ったな。似合ってないつーかギャグ?お笑いでも目指してんのか?」

「なに、して・・・!」

「あ?これ?おめェがいつまでもこねぇから暇つぶし?けどやっぱつまんねぇな。草ばっか蹴ったって何も面白くねぇ。」



無事だったモノ

なんで?どうして?こんなことを?

「ッ!!!」

朋也は彼らにそれを問うことなく、強く握りしめていたこの拳を振った。が、バシッと強い音と共に犬飼の掌に収まってしまう。

「おっ、と。あっぶね。」

「離せッ!」

「おーおー、威勢いいじゃん。けどな、もうちょい周り見て判断した方がいいんじゃねぇの?」

そう言われて見せられたのは、一つの植木鉢。
それには何かの植物が植えられており、鉢の外側に大きな字で「ながせ めぐる」と太字のマジックペンで書かれていた。



握られた弱点

「これがどうなってもいいっていうなら話は別だが。」

「それは・・・!」

「お察しのとおり、生徒会長の植木鉢だな。ご丁寧に名前書いてあったから見つけやすかったわ。」

園芸部がこんなに荒らされてしまった中、唯一無事だった永瀬の植木鉢。
でもそれはまだ無事だっただけ。犬飼たちはワザと手を出してなかったようだ。

「やめろ…っ。それに手を出すな!」

「言葉使いなってねぇやろうだな。やめろじゃなくて、やめて下さいだろうが。いいんだぜ?お前の目の前でこの鉢壊してやったって。あんなお子様会長怒らせたって、どうでもいいし怖かねえけど。お前は嫌だよな?」

「・・・・・・。」

そして握られた弱みを取引にして、朋也に選択肢を与えてきた。

「先ずはこの拳、下げろ。」



朋也の選択肢

「・・・・・・・・・。」

永瀬の植木鉢が助かるかは、朋也の選択次第。
朋也は言われるがままに犬飼に従う。

「言っとくが、こうなったのも全てお前のせいだからな。」

犬飼たちの目的は特にない。目をつけた下級生を己の憂さ晴らしに使うだけ。
けど今度ばかりは逆らいも抵抗も許されない。
与えられた選択肢が朋也に迫り責める。

「怨むなら自分を怨めよ。」

そして四方八方からとんでくる拳を受け入れる、ただのサンドバックにさせられた。

「・・・・・・・・・。」

自分にとって当たり前の日常を。
けど構う心が、どうしてもそれを嫌がった。
嫌がったから諦めたくなかった。
嫌がったから逆らっていた。
けどその結果がこの様を引き起こさせた。
やっと慣れたんだから、慣れたまま諦めていればよかったんだ・・・。
そうすればこんな思いもせずにすんだのだから。



青ノ葉 第21話をお読みいただきありがとうございます

朋也エピソードは喧嘩シーンがほぼメインです
書きなれてないシーンを書くのは結構苦しい・・・
おかげで何度も何度も詰みかけております
おかげさまでストックもかなりなくなりました
追いつかれるの早すぎィ!あんなに貯めてたのに!
朋也エピソード終わったらストック補充のため
更新ペース調整しないとマズイかもしれません


]  [目次へ]  [
しおりを挟む




BL♂GARDEN♂BL至上主義♂
2015.05start Copyright ちま Rights Reserved.
×