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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#2 青ノ葉学園へ(1/2)
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お迎え

翌朝の午前9時ちょっと前。

「司、そろそろ行くよ〜?ちゃんと起きてる?」

いつものように比路は、また窓から司の部屋へ。
昨日言っていたとおりの時間に、司のお迎えへやってきた。

「ん、おはよ〜・・・。今ちょうどエンディングだから、もうちょい待って。すぐセーブして止めるから。」

司が朝からゲームと言うのは日常茶飯事のこと。
いつも出かける寸前ギリギリまで身支度もせず、ゲームゲームなので比路に怒られるのが毎度のパターン。
けれど司も高校生になるという自覚を少しは持ってくれたのか。
世にも珍しく。すでに出かけられる服装で、比路のお迎えをゲームしながら待っていたのだ。

「へぇ、珍しいね。司がちゃんと待っててくれてたなんて。」

ゲームしてるのはいつもの彼だけど、そんないつもと違う姿に比路はホッと感心。
今までの苦労がやっと報われた気がして、そんな司をクスクスと笑う。

「あのな。俺だって日々少しずつ成長してるんです。それに今日に限ってはヒロのが来るの遅くて待ちくたびれるとこだったし。」

「遅くて悪かったね。これでも早く来たつもりだったんだけど・・・。」

そしてそういう意識が最低でも、あと2・3日は続いてほしいと。切実に思うのでした。



比路の癖

ゲームを終えた司は、うーんっと体を伸ばして疲れを癒す。
そのとき、司の目の周りに黒ずんだ隈が出来ていることに気付く比路。

「なんか隈ヒドくない?司も今日のことが楽しみすぎて昨日あんまり眠れなかったとか?」

そんな彼の顔も冷やかしたつもりだったのだが、

「・・・も?俺もってことはヒロ。ヒロは今日のことが楽しみすぎて昨日あんまり眠れなかったんだ。」

「な!違・・・っ!!」

「否定しても無・駄。バレバレだぞー。」

彼は時々、自分で自分の首を絞めるように墓穴を掘るという、分かりやすいようで分かりにくい癖がある。
もちろん司にとって、その程度の癖を見抜くなど朝飯前。

「墓穴乙ー☆」

「うぅ・・・っ。」

ブーメランのように返され、ニヤニヤ顔で笑われてしまう。



今、なんて?

「ぼ、僕のことはとにかく!それより本当に大丈夫なわけ?なんか眠たそうにも見えるけど。」

比路は自分の癖話をサッと流し、再び司の隈話に触れて心配に思う。

「まぁ、なんとか慣れてるから大丈夫。昨日寝てないから隈出来てても仕方ないって思うし。」

「は?」

そして司はドサクサに紛れて、とんでもない言葉を口で発した。

「ごめん。司、今なんて?」



隈の理由

彼の発言を聞き逃さない比路。

「隈が出来ても仕方ない。」

「その前。」

「ん〜?あぁ!昨日から寝てないって言った。」

「・・・・・・。」

それを聞いた瞬間。
怒りのパラメーターがマックスに向けて、みるみるうちに上昇していく。

「ヒロに寝坊しないよう言われたから、あれからずっっと起きてたんだ。いやぁ大変だったんだぞ。」

「・・・・・・。」

こんな野郎を少しでも見直した自分が、すごくバカだったと心底に思う。
ああ。せっかく感心していたあの気持ちを返してくれ。



お約束でした

「でもおかげで学園プリンス全キャラ制覇!CGもフルコンプ出来て今かなり満足!寮行く前にやり遂げられてマジでよかった!学プリ最高ッッッ!!!」

昨日のあれからのことを、調子よくベラベラベラベラ話しまくる司。
そしてさっきまでやってたゲームを勧めようとしたとき、

「ヒロにも貸すからさ〜。・・・ハッ!」

やっと比路の異変に気が付き、我に戻る。
けれどそれはもう遅い!

「つーかーさぁぁぁああああッ!!!それのどこが成長だって!?こんな日にまで徹夜でゲームとかどういうこと!?」

「あああ、いやいやいやいや。ちょちょちょちょ・・・っ。ちょっと待っ「待たない!問答無用!!」

「イギャァァァァアアアアッッッ!!!」

怒りに任せた司お仕置き専用技、ヒロスペシャルが豪快に炸裂。
やはり司は、いつもどおりの司だった・・・。



私立青ノ葉学園

比路母に車を走らせてもらってから数時間。
しばらくすると学校の校舎が見え、昼過ぎに正門前へとご到着。
入試ぶりの校舎とのご対面。合格する前と合格した後では、目に見える印象も当然変わってくる。

「お母さん、ここまででいいよ。送ってくれてありがとう。」

「明日の入学式は司くんのお母さんと一緒に見に来るからね。」

「ヤだよ。恥ずかしいから見に来ないで。絶対にお父さんも連れて来ちゃダメだからね!」

「はいはい。それじゃあ今日からの寮生活。司くんともちゃんと仲良く過ごすのよ。」

『私立青ノ葉学園』。
ここは男子校の全寮制な高等学校。
私立だけあって建物は綺麗で立派だけど、ごくごく普通の進学校。

「それじゃあ行こっか、ヒロ。」

「うんっ。」

そして二人は校舎がある方向とは反対側へ。
入学案内書に記載された地図頼りの比路ナビゲートで学生寮へと向かう。



青ノ葉学園 学生寮

青ノ葉学生寮は、校舎の反対方向。
校舎と寮。位置は離れているが、正門から桜並木で真っ直ぐ繋がる道がある。

「あの建物が学生寮みたいだね。」

名の通り、この学園に通う生徒専用の学生寮。
全学年の生徒が(一部を除き)ここで暮らしているため。それ相応とした4階建ての造りとなっている。
1階は玄関を始め、ロビーにオープンスペース。寮長室に医務室や食堂、大浴場にクリーニング室。
2階は三年生。
3階は二年生。
そして今年の新入生、一年生は4階に各自の部屋がある。

「いらっしゃい。貴方たちも新入生の方ですよね?」

「!」

そんな青ノ葉学生寮に着くと、さっそく玄関前で白衣を着た一人の男性教員に話しかけられた。



柊 千尋

「初めまして。私は青ノ葉学園の保健医、柊 千尋(ひいらぎ ちひろ)といいます。」

彼の名前は柊 千尋。
青ノ葉学園の男性教員の一人。
日中は校舎の保健室に。夜間は寮の医務室に居る保健医の先生。
『チロ先生』と言う呼び名があり、卒業していった生徒が付けた愛称だが今もなお呼ばれ続けられている。
チロ先生は青ノ葉学園で学園長よりも一番長く就任している先生なのに、顔付きがのせいで本来の年齢が分からないため『童顔モンスター』という称号もお持ちなのであった。

「どうぞよろしくお願いいたしますね。」

これから何かとお世話になるかもしれない保健医の先生が優しそうな人で、司も比路もホッと一安心。



フラグ回収

「森くんと峰岸くんですね。二人の部屋はえっとー・・・。」

保健医のチロ先生と対面して挨拶を交わした二人。
そして一緒に二人の部屋の位置を、チロ先生が持ってた名簿表を見て、用紙を指でなぞりながら確認。

「あ、ありました。森くんも峰岸くんも一緒の423号室ですね。」

「え。」

そしてフラグを踏んだ二人は、

「司と。」

「ヒロと。」

「「同じ部屋ァ!?」」

ものの見事に驚く声をハモらせた。

「何か不都合なことでもありました?」

「不都合と言いますか。何と言いますか。・・・司と一緒で一気に新鮮味が減ってしまいまして。」

「こーらこらこらヒロくんや!だから俺の目の前で、そういうこと言うんじゃないの!せめて聞こえないように言って!!」

司と同じ寮部屋だと聞いた比路。
家に居ても寮に居ても新鮮なのは周りの環境のみ。
あまり変わり映えのない人の環境に、ガクッと肩を落とした。



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