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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#21 青ノ葉 月下光(2)(1/3)
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オレンジ色の放課後

「はい。これで今日の授業はおしまいです。部活動がある子は部活動場所に、寮に帰る子は気を付けて帰って下さいね。」

空がオレンジ色に染まり始めた夕方の放課後。
今日一日の授業が終わり、部活動がある生徒は部活動へ。部活にまだ入部してない生徒は学生寮へと帰って行く。

「・・・・・・。」

そんな中、誰よりも先に教室を出て行った朋也。
「さよなら」を言わずに交わさずに。
「またねー」も言わずに交わさずに。
誰かが誰かに言った言葉を耳にしながら、一人静かに廊下を歩く。

「・・・・・・。」

その時、ふと窓に向けた目が空を眺める。
今日はいい天気だったから綺麗なオレンジ色に染まっていて心が奪われると共に構い、この気持ちを言葉として気づかせようと朋也の足を止めさせた。



青ノ葉 園芸部

そこから校舎を後にして渡り廊下の向こうへ向かった先には入部したばかりの園芸部の部活場所がある。
ここには幾つもの花壇や植木鉢、小規模な畑に適温を保ったビニールハウスまでもあり、花や野菜も育てているようだ。

「わ〜いっ!きょうもきてくれてありがとう、ともやくんっ。」

「・・・・・・。」

そこへ朋也より一足早く来ていた園芸部の部員、そして生徒会長である三年の永瀬めぐる。
ニッコニコな笑顔でお出迎え。

「よかったよかった。それじゃあぶかつどうはじめよっか?」

「よろしくお願いします・・・。」

朋也がやって来たと共に本日の活動をスタートさせる。
けど集まってるメンバーは朋也と永瀬の二人だけ。
入部初日はもっと人数いたはずなのに・・・。
さすがに続くこの状況に朋也も戸惑いを隠せなくなった。



青ノ葉 園芸部 2

園芸部のこの状況を改めて永瀬に訊く。

「ごめんね。きょうもボクとふたりきりで。」

「あ、いえ。その、他の人は?」

青ノ葉もなんだかんだ言っても立派な私立校。それなりにお金が要るわけであって、学費や小遣い稼ぎにアルバイトを希望する生徒が少なからずいるようだ。
そうでなくでも色んな理由を抱えた生徒がいて、その人の為にも存在する部活動が園芸部以外にもあり。帰宅部が不可能な分、参加出来る日だけ参加すればお咎めなしで校則違反にはならないそうだ。

「・・・といっても、にんずうが『きてい』をこえてなければ、ぶかつどうとしてなりたてれなくなるんだけどね。」

「そう、だったんですね。」

だから主に参加するメンバーは少ないのが基本。
その事情を聞いて納得し頷く朋也。

「変なこと訊いてすみませんでした。」

「ううん、そんなことないよ。にゅーぶしたとき、ともやくんにキチンとせつめいしてなかったから。ボクのほうこそごめんね。」

「いえ・・・。」

「そういうわけで、きょうもふたりきりだけど、いっしょにがんばろーねっ!」

こうして今日も永瀬と一緒に園芸部の活動を二人で励む。



朋也と永瀬

園芸部の活動内容は至ってシンプルで同じ動きの繰り返し。
花壇や作物に水やって、草むしって、育ち具合を観察したら、次の場所に移動して水やって、草むしって、育ち具合を観察。
種から育ててお世話して植物を育てることを通して、命を大切にする心、行動力、環境について考える力を養うのが方針だ。

「・・・・・・。」

そんな中で一人、テキパキと無駄な動きをせずに作業をする永瀬。
年上だけど自分より幼くて背の低い彼の姿を見て、朋也も負けじと作業を進める。
重い物は自分がなるべく。けどそれ以外は永瀬が先にやってしまっており、ついていくだけで精一杯だった。

「おもたいものばかりもたせちゃってごめんね。」

「いえ、こちらこそ。」

「ともやくん、たよりになるねっ。」

「い、いえ。そんなことは・・・。けど、ありがとうございます。」

この人が生徒会長だって入部した後に改めて知って驚いたけど、一緒に過ごす時間がそれを解決させていく。



家庭科室へ

「そろそろきゅーけいしよっか。」

そんなわけで一旦休憩。永瀬が休憩って言ったから休憩。
やっていた作業もキリのいいところで止めて従い、朋也も一緒に休憩することに。

「きょうは『いももち』があるんだよ。ともやくんもいっしょにおちゃしよーね。」

けど永瀬が向かった先は園芸部の部室ではなく家庭科室。
なぜここで?という疑問が生まれたが、問いただすことはせずに黙って永瀬の後ろを歩く。
そして、

「あきとー。やくそくどおりあそびにきたよーっ!」

「おわっ!?わぁッ?!?!」

勢いよく家庭科室に入場。
そこにいた一人の男子生徒、家庭科部員の鈴木明人が驚き、ビックリした声を二度も上げる。

「あー、びっくりした。いきなり入ってこないでって、入るときはノックしてっていつも言ってるでしょ。」

「あきと。なんでにかいもおどろいたの?」

「あれ?僕、二回も驚いたっけ?気のせいじゃない、気のせい。」

その後者は朋也を見て驚いたわけだが、それを言葉にして言わなかった。
が、なんとなく察した朋也は申し訳なさそうに永瀬と距離を置く。



永瀬からの紹介

「しょうかいするね。これ、あきと。こっちしんにゅーぶいんのともやくん。」

「これ扱い!?」

「よ、よろしくお願いします・・・。」

そんなわけで永瀬からの紹介で、改めてお互いを知る朋也と明人。

「一年生ってことは弟と同級生か。あ、さっきは変に驚いちゃってごめんね。めぐがお客さん連れてくるときっていつも突然だから慣れなくて。」

「い、いえ・・・。こちらこそすみませんでした・・・。」

明人が朋也に踊りた理由はきっと違う。
色々と言葉を選んでいたが、朋也を拒んだわけではないようだ。

「ううん、後藤くんが謝ることなんてなんにもないよ。お茶用意するから離れてないで後藤くんもこっちにおいで。」

「おいで、おいで。」

驚きはしたけど永瀬と一緒に歓迎していて、逆に自分が戸惑う朋也だった。



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