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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#20 青ノ葉 月下光(1)(1/3)
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後藤 朋也episode

「くっそ・・・!どこ行ったアイツら!!」

学生寮の門限時刻が過ぎ、月明かりに照らされる夜の時間帯。
繋ぐ手をしっかり握って追ってから逃げた二人。

「大丈夫か?峰岸。」

「・・・平気だよ、これぐらい。」

複数いる不良生徒たちから目のつきにくい場所に隠れると共に、片方が片方を逃がそうと掴んでいた手を離す。

「あとは俺が彼奴らを引き付ける。だからその隙をついてここから逃げてくれ。」

「朋也・・・。」

だから彼に言ってやった。

「ごめん。それは出来ないよ。」

と・・・。
それは少しだけ先の話。
慣れた日常に屈し、繊細に傷つきながらも抗っていた後藤 朋也の物語。



束の間の昼休み

そこに至るまで遡るちょっと前のこと。

「つかポーン、いたいた!」

「つかポンやめい。」

昼食を終えた昼休み真っ最中。
隣りのA組からB組の教室に、稚空が上機嫌に満面ニッコニコな笑顔で司の元へやってきた。

「あれ?ひろピーはどこ?」

「ヒロすけなら梅ちゃんと一緒にトイレ行ったけど?」

「なるほどなるほど。それはまたグッドなタイミングで気ちゃったなオレ。」

そして何か勿体ぶっているような仕草を見せる。

「え?なに?どうかしたアッキー。ヒロに何か用事?」

いったいどうしたことだろう。



オープンに腐ってる彼ら

今この場に比路も梅ちゃんもいない。
それをいいことに稚空は制服の内側に隠し支えていた一冊の小説を取り出し、司に見せつけてきたのだ。

「ふふふー。約束通り持ってきたよ学プリの小説本。つかポンのお気にってこの人であってるんだよね?」

「!?!?!?」

念のために色んなことを考慮し、表裏背表紙の扉絵が見えないようにと厚い紙質のブックカバーをして隠している。
が、そんな話を教室内で堂々と怖いもの知らずでオープンにし始めた彼ら。

「ちょッ!?アッキー、まさかそれって!?」

「この間、実家に帰ったとき一緒に借りてきたんだ〜。全年齢ではなかったシーンもきちんと最後まで執筆されてるよん。」

司と稚空に二人から50歩100歩の腐った男臭が漂う。

「本当に持ってきたんだ・・・。」

「もちろん読むでしょ?つかポン。」

「だからつかポンおやめなさい。」



超える戸惑い

「読まないの?つかポン。」

「つかポンやめいって。」

稚空の話術と稚空が持つ小説からの誘惑。
ボーイズなラブのBLゲームを好んで遊ぶ司でも、超えてはならないハードルを越えるのに渋々としていた。

「前にも言ったけど。俺、本読むと眠たくなるし。」

「じゃあ挿絵とその付近から読み始めるといいよ。気が付いたら全部読んじゃってるパターンになれるから。」

「いや。だってそれ、モロにあるわけでしょ?」

「うん。モロあるよ。保健の教科書以上にオトナの階段登れちゃうかもね?」

それはいつまでも首を縦に動かさなければ、横にも動かさない曖昧な返答。
そんな半端に流石の稚空も長く付き合っておれず、

「見たくないのなら別に貸さなくてもいいんだけどね。」

「待ってアッキー!俺、まだ何も言ってないだろ?」

「じゃあどっち?」

「〜〜〜・・・っ、貸して下さい。」

焦りまで上手に誘って、無理矢理だけど自発的に頷かせた。



未知の世界へようこそ

「大丈夫だよつかポン。人間素直が一番なんだしオレも理解してるからこそ、こうしてつかポンに貸したわけなんだから。」

「とりあえずつかポンやめろって。」

ついに司の手に渡ってしまったBLゲーム学園プリンスの小説本。
そこには本命キャラルートのシナリオが全てという全てが執筆されており、ハードルに未知な世界まで挿絵付きで描かれている。

「あれ?いらっしゃい稚空くん。」

「「わぁぁあああ!?」」

そこへトイレから教室に帰ってきた梅ちゃん。
この腐った空気を読めずに、遊びに来ていた稚空を笑顔で歓迎。
そろそろ戻ってくるころだろうと分かっていても腐った二人はビックリとして驚いた声を上げ、その拍子に学プリの小説を床に落とした。

「司もアッキーもどうしたの?そんなに驚いて。今、何か落としたよ。」

そして梅ちゃんと一緒に戻ってきた比路がそれを拾い、

「何の本?これ。」

「あ、ダメ!ヒロそれを見るな!」

「え?」

司よりも先にモザイクだらけの未知な世界を見てしまう。

「!?!?!?」



避けられない制裁

「やばッ!」

見てしまったそんな世界を瞬時に閉じた比路。
真っ赤に染めた顔で、とてつもなく禍々しいオーラを放つ。

「〜〜〜・・・ッ。」

比路が拾った時から?
司が借りた時から?
稚空が教室にやってきた時から?
いやいやいや、もっともっともっと前から。いつからか覚えてないが、いつからか起きていたこのフラグ。
けど比路に見つかった以上は避けられないこの後の恐ろしい展開。

「あ!オレ、そろそろ教室に戻るね!午後一から体育の授業だったんだ。ジャージに着替えておかないと。」

「待って!アッキー!俺を、俺を一人にしないでー!!」

「ちょッ!?やだ、つかポン離して!お願い離して!!」

「いやだーーーッ!!!」

腐った二人はギャーギャーギャーギャー騒がしく、互いに足を引っ張りまくり。
そうしてる間に恐れていたことが背後から。

「二人とも。僕と一緒にツレション行こうか。」

「「・・・・・・・・・・・・。」」

二人を掴む比路の握力が最大すぎて、捕まえた二人を逃がそうとしなかった。



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