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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#16 放課後の一悶着(3/4)
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比路と朋也の二つ影

「あ・・・!デブ猫、逃げちゃった。」

そんな二人の隙をついて、ふくよかな体型の割には素早い動きでシロはこの場から何処かへ去って行く。

「・・・・・・っ。」

その背中を見つめる朋也の顔は、どこか寂しそう。

「朋也って猫、好きなんだね。」

「い、いや。違う・・・!」

「なんでそこで否定するの?今までの動きでバレバレなのに。」

それを見て笑う比路。

「好きなら好きでそれでいいじゃない。隠す必要なんてないと思うよ。」

シロのおかげもあってか。
あんなことを言われてシロが去った後でも、二人の空気が重く戻るようなことはなかった。



チビのくせして・・・

朋也を連れた比路は昇降口で待っていたチロ先生の元へようやく戻ってきた。
かかった時間は長かったような短かったような不思議な印象を残させる。

「あらあら。それで後藤くんも峰岸くんもシロに引っ掻かれてしまったんですね。」

そしてついさっきあった出来事を話すと二人はそのまま保健室へ連れて行かれ、チロ先生から手当てを受けた。

「シロって、あのデブ猫のことですか?」

「えぇ。でも峰岸くん。シロのことはふくよか。ふくよかって言ってあげて下さい。シロは特に気難しい性格なので。」

「ふくよか・・・。」

比路はまだシロに引っ掻かれたことを根に持っていたのか。

「言い方変えてるだけで結局、太ってることには変わりないんですね。」

「峰岸・・・。」

自身の体型をのことは棚に上げて、シロに対して容赦ない言葉を吐き捨てる。
・・・お口の悪い子でごめんなさい。



ミッションコンプリート?

こうしてチロ先生からの頼みごとを終えれた比路。

「それはそうと峰岸くん。後藤くんを見つけて来てくれてありがとうございました。」

「いえいえ。チロ先生のお役に立ててよかったです。」

無事にミッションクリアとなったわけだが、全ての条件をコンプリートしたわけではない。

「・・・何も問題、ありませんでしたか?」

「え?」

「あ、いえ。妙なことを尋ねてすみません。後藤くんの制服が汚れているようなので。」

なのに、

「はい。何も問題ありませんでしたよ。猫に引っ掻かれたこと以外は。」

朋也と犬飼たちのことをもう忘れたのか、気にしてないのか、何なのか。
ニッコニコな表情で無理矢理に条件を全てクリアさせてミッションコンプリート。

「・・・・・・。」

そんな比路を見て、返す言葉を失くす朋也だった。



三人から二人へ

「では僕はこれで失礼します。」

「はい。本当にありがとうございました。気を付けて寮に帰って下さいね。」

比路は手当てを終えると、朋也のことはそのままチロ先生に任せて寮へと帰って行く。
すると当然この場に残ったのは、その二人のみ。

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

そしてチロ先生は彼が完全に去って行ったのを確認してから、言葉を口にする。

「さて、と。それでは一緒に部活場所へ行きましょうか。後藤くんがまた犬飼くんたちに絡まれないように。」

「え?」



やんちゃな貴方が心配

「見て、いたんですね。本当は。」

「ええ。峰岸くんにお願いしたとは言え、ただ待っているだけでは心配でしたから。」

比路に頼んだ後、自分もあの場へ向かっていたことを。
そして彼は、

「峰岸くんがあそこで引き返さずに行ってしまったのは予想外でしたけど。」

そこで何があったのかを、どこから見ていたのだろう。

「後藤くん。あまり喧嘩を容易く買ってはいけませんよ。例え強引に売られた側としても。」

「・・・チロ先生にも関係ないことですから。」

「そんなことありません。貴方も峰岸くんも犬飼くんたちだって、とても大事な生徒であることには変わりないですから。」

まるで全てを見透かしているかのように、朋也へ言い渡した。

「やんちゃで元気なのはいいことなんですけど、心配させないで下さいね。」

「・・・・・・。」



チロ先生の用事

漂う何とも言えない気まずい雰囲気。

「チロせんせーっ、いたいた!」

「!」

それをぶち壊すように保健室へやってきた一人の男子生徒。

「ほけんしつにいってたんですね。やっぱりまだあつまってないんですけど、じかんなのでそろそろきていただきたくて。」

その生徒は三先生、そして生徒会長の永瀬めぐる。
どうやらチロ先生を迎えに来たようだ。

「そうですね。では永瀬くんも一緒に向かいましょうか。入部届け出してくれた新入部員もこれで無事、揃ったことですし。」

そんな永瀬を見て頷き、チロ先生は着ている白衣のポケットから一枚の用紙を取り出し、朋也を捜していた本来の目的も一緒に果たす。

「改めまして後藤くん、園芸部へようこそ。」

「「え?」」



園芸部へようこそ

「入部届を当部に出していただきありがとうございました。」

「・・・・・・・・・・・・。」

入部した園芸部の顧問がチロ先生と知った朋也。
今チロ先生の手元にある紙は自分で書いて提出したはずの入部申請用紙。なのに、それを疑うほど返答に少々苦しむ。

「わーっ、わーっ!?」

一方、永瀬もこの場で朋也が新入部員であることを知り、驚いた様子を見せる。

「キミもしんにゅうぶいんだったんだね。おなまえは?おなまえ。」

「ご、後藤・・・朋也・・・。」

けど朋也に怯えることなく、初対面なのに超歓迎モード。

「ともやくんだね!はじめましてボク、えんげいぶの『ながせ めぐる』。よろしくね、ともやくんっ。」

「こ、こちらこそ・・・。」

互いに挨拶を交わして、顧問のチロ先生と一緒に三人で園芸部の部活場所へ向かうのでした。



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