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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#89 昼下がりの目撃者(2/6)
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犯人発見?

こうして比路と明人の2人を静かに見送った朋也。
明人に直してもらったキーホルダーを、さっそく落とし物ボックスへ届けようとしたが、その前に。

「・・・・・・。」

改めてこのキーホルダーを見させてもらったが、これは結構な年数を感じさせる品物だ。
よく見たら所々ボロボロだけど、それでも凄く大事に使われているのがよく分かった。
するとその時、

「犯人発見。」

「え?」

彼も玄関ロビーに訪れていたのだろう。
第一声から不穏な言葉を言われて振り向くと、そこには瑛が。
朋也が明人との用が終わったちょうどのタイミングで話し掛けてきたのだ。

「よりにもよって、お前かよ。それ持ってたの。」



キーホルダーの持ち主は

「・・・何の話だ?」

しかしタイミングが少し悪かったのか。
朋也は何に対して言われたか分からない。
だから改めて尋ねると、

「だからそれだって。後藤が今持ってる、そのキーホルダー。それ、空先輩のヤツ。」

瑛が言ってた『それ』は、先ほど明人に直してもらったストラップの付いたキーホルダーを指していて、その持ち主は空であることを教えてくれた。

「空先輩、それ無くしてから調子落としまくりで、凄く困ってたんだからな。このままじゃ今度の大会に影響出かねなくて。」

「この間、陸上部に寄った時にグラウンドで拾ったんだが。・・・そうか、あの人のだったのか。」

だからこれは落とし物ボックスに届けず、直接本人へ。
空の元に届けてあげるべきだ。

「とにかくさっさと空先輩に返してやれよ。」

「そうだな・・・。」



一悶着あった後遺症

しかしここで困ったことが発生。

「・・・・・・・・・。」

朋也は空と知り合っているが、連絡を取れる手段は何もない。
このまま寮の2年の階をウロつけば、そのうちきっと会えるかもしれない。
けど以前悶着起こした犬飼たちも同じ2年生で、ウロついているうちに、そっちの連中とも遭遇してしまう可能性があるから極力避けたい。
なのでここは残された一手を。

「・・・古河。羽崎先輩、呼び出せるか?」

ちょうど瑛がいたから。
空と同じ部活の部員仲間だから、彼ならきっとこの問題を解決出来るはず。
そう思って瑛を頼ることにしたのだが。

「その・・・。俺、2年の階には行けないから・・・。」

「まあ、俺としても空先輩にそれを早く返してやってほしいしな。呼び出してやるから、ちょっと待ってろ。」

「ああ・・・。」

「けどタダで頼みを聞くのも、なんだかなぁって感じだな。」

「は?」

揚げ足を取られたのか。
その瑛にタダでは済ませない話へと展開されてしまうのだった。



朋也と瑛の勉強会

そんな瑛のタダでは済ませなかった話は、至って簡単?
このテスト時期ならではの、お代金。
空と連絡を取り合う代わりに、テストの範囲だけでもいいから勉強を教えろと言ってきたのだ。
そうして2人が場所を移して向かった先は、なんと朋也の寮室。

「・・・なんで俺の部屋で。」

「仕方ないだろ。こっちの部屋だと颯太もいるし、ワンチャン恭まで来たら集中出来なくなるっつーか、なんつーか。あんまり誰かに勉強教わってる姿見られたくねえの。」

ここなら誰にも邪魔されないからと瑛が選んだ。
でも朋也の寮部屋は、朋也とルームメイトの圭の部屋でもある。
けどその圭の姿は見当たらない。

「相沢は?今日いねえの?」

「・・・今は出掛けてる。多分、夕方までには帰ってくると思う。」

「なら好都合だな。あの3人ほどじゃないけど、俺だって今度のテスト。どうしても赤点だけは避けたいからよろしく頼むな。こっちも空先輩から返信着たら、ちゃんと教えるから。」

「お、おう。」

それはそれで都合が良い話だが、さすがに許可もなく勝手に圭のスペースを使うわけにはいかないから。
瑛は朋也の勉強机を借りて、そこで教わることにした。



綺麗に整った室内の異分子

「なんか後藤たちらしい部屋って感じだな。」

「そう?」

朋也と圭の寮部屋は、あまり必要ない物が置かれてないせいか。
綺麗に使っている証拠でもあるが整い過ぎていて、だからこそゲーセンで司に取ってもらった、あの30センチの大きめな猫のぬいぐるみが妙に目立っていた。

「あの猫のぬいぐるみって、お前の?相沢のっぽくないよな。」

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「・・・・・・・・・っ。」

「マジか、後藤。お前、猫好きだったのか。」

それでも余計な物はそれしかないからか、寮部屋は全室同じ間取りなのに自分の部屋とは異なる印象を与えてくる。

「・・・・・・勉強。やりに来たんじゃないのか。」

「いいだろ?少しぐらい雑談したって。それぐらいしか、この部屋で振れそうな話ねえし。」



猫派同士

「それに俺も猫派の人間だから。今の貶す為に言ったんじゃないから、そこんとこ勘違いすんなよ。」

でもその目立つ猫のぬいぐるみのおかげか。
2人の間で共通出来る話題が生まれて、思いのほか『猫』で弾みだす会話。

「そっか、後藤も猫派だったか。なるほど、な。いいよな、猫。俺、実家で2匹飼っててさ。見るか?前に実家から送られてきた猫の写真。」

「・・・うん。」

「どっちも拾った猫だから雑種だけど、どっちも可愛いだろ?俺んちの猫。」

「うん・・・。」

こうして猫を中心にした話を交わして空からの連絡を待ちながら、2人でテスト勉強を始めたのだった。

「んじゃ、そろそろテス勉するか。」

「もう少し、写真・・・。」

「また後でな。俺らは勉強やりに来たんだから、先にそっちな。」



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