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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#88 昼下がりの罰ゲーム(4/4)
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あとのことを任される比路

でもおかげで比路と久野が、再び気まずくなるようなことはなくてギリセーフ?

「それじゃあ比路くん。僕、先に自分の部屋に戻るから、あとよろしくね。罰ゲームも、ここまでで大丈夫だから。」

「えぇぇ!?」

明人は自分で招いておきながら、あとのことは比路に任せて、満足そうに去って行く。
残された比路は、明人に残された言葉が。何をよろしくされたのか、いまいちよく分からなかった。
だけど、

「・・・違う。・・・違う。・・・違う。そんなんじゃ・・・、ない。」

「・・・・・・・・・。」

真っ赤な顔のまま、ぶつぶつ呟いている久野の様子が気になって仕方がない。
なので明人が去った後も部屋に帰ることはなく、このまま彼と一緒にいることにした。

「か、克也?」

しかし久野に声を掛けた途端、

「ひッ!」

「え?」

一瞬とはいえ肩をビクつかせるほど、竦まれてしまう。



誤魔化した先で沈む話題

「か、克也?」

そんな彼の反応に、つられて比路も思わず肩をビクつかせた。
久野も久野で、そんな自分に気付き、アワアワと必死に誤魔化して話しを逸らす。

「あ、えと・・・、ごほんっ。さ、さっきはごめんね比路。その、えぇっと、そう。なんでもない、なんでもない。なんでもないから気にしないでもらえると助かる、かな。」

「う、うん・・・。」

「それよりも比路。昨日は俺の荷物、片付けさせちゃってごめんね。」

そして改めて昨夜のことを。
林間学校の荷物を、比路が片した話題に変える。

「その・・・、汗臭いモノとか汚いモノとか入ってたから・・・。そんなモノを比路に洗濯までさせちゃって、ホントごめん・・・。」

しかしそれはそれで、久野にとって申し訳ない話だったようだ。
改めて変えた話なのに、ズーンと落ち込みながら、さらに比路に謝った。



謝ることじゃないよ

けれど謝られた比路は『何のこっちゃ状態』。

「え?何でそんなことで謝ってんの?克也。」

「だ、だって汚いモノとか汗臭いモノとか、いっぱいあったから・・・。」

「でも全然謝ることじゃないよ。そんなの部活じゃ、いつものことで当たり前のことだし。なんなら昔通ってた道場の頃だって。」

「駄目。謝らせて。昨日の件と部活とじゃ全然違うから。」

だから謝らなくていいと伝えたものの、それでは久野の気が済まない模様。
なので2人の言い分が、このまま平行線を描きそうになったその時、

「かっつぁん、そこは普通に『ありがとう』でいいじゃん。せっかく峰ぎっちゃんがかっつぁんのことを思って、洗濯までして片付けてくれたんだからさ。」

「豊先輩・・・っ!」

比路と久野の今の会話を聞いていたのか。
やってきた小町が2人の言い分を遮ってくれたおかげで、丸く収まったのだった。

「峰ぎっちゃんだって、かっつぁんの『ごめんなさい』なんて求めてないって言ってんだからさ。そこは怪我人として素直に甘えとこうよ。」

「いや、でも・・・「かっつぁんはホント甘え下手だね。そんなとこまで難しく考えていたら、そのうちハゲるよ?」

「ハゲッ!?」



知らせざる学生寮の宿泊室

それにしてもやってきたばかりの小町はどうしたことか。
いっぱい荷物を詰めた大きなバックを抱えていたのだ。
まるでこれからどこかに。連泊しても問題なさそうな感じで。

「豊部長。その荷物何ですか?これからどこかに泊まりにでも行くんですか?」

「いや。これは全部かっつぁんの部屋から持ってきた、かっつぁんの荷物。」

気になったから尋ねると、それは全て久野の荷物だと小町が教えてくれた。

「俺が豊先輩に頼んだんだ。少しぐらいなら動いても平気なんだけど、階段の上り下りが。この足だから、どうしても辛くて・・・。それで暫くの間テストが終わるまで、蓮さんにお願いして、1階の宿泊室を1部屋貸してもらえることになって。」

「宿泊室なんてあったんだ?知らなかった・・・。」

「うん。遠方からの来客が宿泊するときにしか使わない部屋だから。だから1年生はもちろん、2・3年でも知ってる生徒あんまりいないんじゃないかな。」

そして話の流れで、この青ノ葉学園の学生寮には来客用の宿泊室があることも知った比路。
久野は負った膝の怪我の影響で、暫くの間。少なくてもテストが明けるまでは、その宿泊室を借りて、そこで過ごすことにしたそうだ。



小町を待っていた久野

そうして負傷人の久野が玄関ロビーにいたのは、小町を待っていたから。

「豊先輩、俺の荷物持ってきてくれてありがとうございました。他に頼れる人がいなかったとはいえ、3年の豊先輩に2年の俺の部屋まで行かせてしまって。」

「んん?2年で他に頼れる人いないって。かっつぁんには、メイちゃんがいるじゃん。メイちゃんはどうしたのさ。」

「え。あ。いや。その・・・っ。冥も大会間近で、テストよりもそっちを忙しくさせてますから。ルームメイトとしても、それはあまり邪魔したくなくて。」

「ふーん?とりあえず、かっつぁん。持ってきた荷物、これで足りるか確認して欲しいから、そろそろ・・・。」

「あ、そうですね。それじゃあ比路、俺らもう行くね。もし後で鈴木先輩に会ったら、さっきはごめんなさいって。俺がそう言ってたって伝えておいて。」

「う、うん・・・。」

だからここで比路とはお別れ。
久野の荷物運びに、彼まで関わることはなかった。
それが比路にとって心残りだったのか。

「それじゃあ豊部長。克也のこと、よろしくお願いします・・・。」

「あいあい。かっつぁんが負傷中の間、峰ぎっちゃんにも頼むこと出てくるだろうから。そん時は峰ぎっちゃんもよろしくね。」

「駄目ですよ豊先輩。比路にまで迷惑かけるだなんて、そんな真似、絶対に出来ませんから。」

久野のことを小町に任せて、これにて比路も自分の部屋に帰って行った。



一緒にいると?

けどその一連を終始、1番近くで見ていた小町。
このまま流してもよかったのだが、比路と別れたばかりの久野が気になったから、それを改めて指摘する。

「かっつぁんってさ、峰ぎっちゃんといると疲れるの?」

「へ?はぁ!?なんでそんな・・・っ。そんなこと、あるわけないじゃないですか!」

「だって今、ホッとした感じで一息付いてたし。確か前に街まで買い出しから帰ってきた時も、峰ぎっちゃんと別れた途端、同じような溜め息吐いたっしょ?」

そう。久野は比路が去ったのを見て、ふぅ・・・と。まるで事が去って安心したかのような一息を付いたのだ。

「さっきもそうだったけど、もうちょっとくらい甘えたっていいのに。」

「駄目ですよ、そんなの。いくらなんでも、みっともないじゃないですか。年下の男の子に、そんな真似・・・。」

でも指摘したからと言って、この場で解決するとは限らなかったのは、また別の話も関わっているからだろうか。
しかしこればかりは当人の問題。
自分がいくら言ったって、あまり効果がない気がしたから。
だから小町も、これ以上は突っ込まないようにしたのだった。

「難儀だね、かっつぁんは。」



青ノ葉 第88話をお読みいただきありがとうございました!

今月より更新再開です


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