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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#88 昼下がりの罰ゲーム(2/4)
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七夕限定のフォーチュンクッキー 2

さすが昼下がりの日曜日。
店内のテーブル席は満席だった為、カウンター席で肩を並べて着いた比路と明人。
2人はさっそく買ったばかりのフォーチュンクッキーの中に入ってた紙片のおみくじを、それぞれで見てみた。

「わ?!ホントだ。ホントに中に紙が入って・・・、あ。・・・落としちゃった。」

「大丈夫?取ろうか?」

「ううん、大丈夫大丈夫。明人兄のおみくじ、なんて書いてあったの?」

比路は取り出しに失敗してしまい、直ぐに見ることが出来なかったため、先ずは明人のおみくじから。

「えぇっと、『True love stories never have endings』・・・かな。」

「えぇ!?まさかの英文!?明人兄のそれ、日本語に訳すと何て書いてあるの?」

『True love stories never have endings』。
それは米国の、とある作家が残した名言の1つ。
日本語に翻訳すると『真実の愛の物語には、結末なんてない』と書かれていたのだ。

「なんかよく分かんないけど深そうな言葉???深そうってことだけは、なんとなく分かる気がする、うん。」

「まあ七夕限定って書いてあったし、それっぽい内容が出てくるよね。」



七夕限定のフォーチュンクッキー 3

お次は比路のおみくじ。
床に落としてしまった紙片を拾い、改めて読んだのだが、不満そうな表情で首を傾げる。

「僕のはー・・・、なにこれ?途中で英単語が切れちゃってる・・・。」

「どれ?比路くんのは何て書いてあったの?」

その一方で明人がそれを見た途端、思わず拍子を抜かすほど驚く。
2人とも同じ英文を読んだはずなのに、それぞれで異なる反応を見せたのだ。

「『Premonition of A』・・・って、はぁ?ウソでしょ?このおみくじ、何十年前の・・・。」

「なになに?どういうこと?明人兄、もしかして意味分かるの?」

「あー・・・、えっと。翻訳サイト使っていいから、比路くんも自分で訳してみるといいよ。」

「う、うん。」

『Premonition of A』。
明人に言われたとおり、自分のスマホで翻訳サイトを開き、その英文を日本語に訳す比路。
しかし英単語が途中?で途切れてしまっているせいか。
返ってきた結果は『Aの予告』と表記されただけ。

「このAってなに?この後、何の英字が入っていたの???」

「ううーん・・・、なんだったんだろうねぇ?まあ、フォーチュンクッキーの中身って、だいたいこんな感じだから。おみくじの結果も、あんまり深く気にしない方がいいと思うよ。僕のも比路くんのも悪い内容じゃないはずから。」

明人も分かっているのか分かってないのか。
結局、答えは曖昧のまま、これにてフォーチュンクッキーの説明を終えたのだった。



他に誰もいない機会だったから

しかしフォーチュンクッキーが齎した影響は、比路と明人の間に微妙な空気が流れ出す。
いやむしろ今は彼と自分だけしかいない。
周りを見渡しても、他に知り合いは誰もいない滅多にない機会だったからか。

「あの・・・さ、比路くん。」

「ん?」

アイスカフェオレを一口飲んだ明人は、改まったような声色で、比路にこう尋ねる。

「比路くんって、さ。好きな人とか・・・。いたりする、の?」

「え?」

それは訊かれた比路も、予想外すぎた質問だったのか。
顔を赤く染めて、凄く驚いた声を上げた。

「えぇぇ!?な、な、な・・・っ。明人兄、なんでそんなこと訊くの!?!?」

「なんとなく?驚かせちゃってごめんねだけど、でも今は僕らしかいないせっかくの機会だから。だからたまには年頃らしく?色のある話をしてみるのもアリかなって思って。」



いないも1つの答え

「それって・・・・・・、今現在でってこと?」

「どっちでもいいよ。今でも、今まででも。」

「・・・・・・・・・っ。」

そんな明人の質問に対して、戸惑いを見せる比路。
けどどうしたことか。
語るにつれて赤かった顔色が、どんどん曇っていく。

「それって、いないと・・・ダメ?」

「ダメってことはないよ、比路くん。」

「・・・・・・・・・。」

「・・・ごめんね。突然、慣れてない話して。」

この手の話は苦手なのだろうか。



『もしも』のお話

「そっか。・・・・・・じゃあさ、比路くん。今現在で、もしもの話だよ。」

だけど寮に帰ったら、もうこういう話は暫く出来なくなると踏んでいたからか。
明人は比路の様子を見ていた上でも、踏み込むように構わず続けた。

「もしも比路くんのことが、好きで好きで仕方がない子がいたとして。ある日突然、その子から好きだと告白されたら・・・。比路くん、その子と付き合う気・・・・・・、ある?」

「え。」

『もしも』と言うのは、何かを仮定して想定させたお話。
なのに彼の目は、やけに真剣さを物語るように、比路を真っ直ぐ捉える。
だから比路も、それには裏があるんじゃないかと感じとったのだろう。

「明人兄、それってもしかして・・・。誰かのこと言ってたりする、の?」

そのまま質問を質問で返したが、

「・・・なら逆に。比路くんは、誰のことを言われたと思う?」

「ー・・・っ。」

向こうも向こうで意地悪なことに、さらに質問で返してきた。
でもそれは、ある意味お互い様。
なのに比路は、思わず返す言葉を失ってしまう。



それもまた1つの答え

そうして数分置いて、比路が改めて出した答え。

「分・・・・・・、かんない。」

それは『はい』でもなければ『いいえ』でもない、天秤が付けれない言葉。

「好きになってくれたことは、多分嬉しいって思う・・・よ?でも付き合うってなったら・・・・・・。」

「そっか。」

そんな甲乙もない答えでも、明人は頷いて満足してくれたようだ。

「ごめんね、比路くん。せっかくの機会で、ここだけの話にしたかったから、何度も何度も意地悪なことしちゃって。」

「僕の方こそ、なんかごめんなさい。その・・・こういう話、上手に盛り上げること出来なくて。」

「大丈夫だよ、比路くん。比路くんが謝ることなんて何もないよ。むしろ僕が、いっぱい謝るべきだって我ながら思うし。」



話してくれたお礼のお詫びに

せっかくの機会。
ここだけの2人の話。
それはもう少しだけ続く。

「比路くんばっかじゃアレだから、僕もお詫びとして。せっかくだから稚空の初恋の話してあげよっか?」

「え!?アッキーの!?・・・知らなかった。アッキー、好きな人いたことあったんだ。」

「あれ?もしかして初耳だった?既出話だと思ってたのに。」

「僕らあんまりこういう話したことないから。」

次の話題としてあがったのは、稚空の初恋エピソード。
明人からのお詫び話なのに、何故か標的されて犠牲となる。

「稚空がいつも前髪を結ってる髪留めのゴムあるでしょ。あれはね、実はね。稚空が初恋の人からプレゼントされた物なんだよ。」

「えぇぇ!?」

相手の名前は最後まで伏せられていたから、誰かまでは分からなかった。
だけど稚空のチャームポイントでもある前髪を結った赤いゴムに、そんな色話が関わっていただなんて、付き合い長いはずなのに予想も付かないお話。
比路も比路で、普段なら興味なくても、稚空の話ともなれば気になるのか。
明人が勝手に語った暴露話を、最後まで耳を傾けて聞き続けたのだった。

「送った側の人間は当時、自分じゃ使わない物だったから。だから不要品を稚空で処分したって感じだったけど。」

「そうだったんだ・・・。それでもアッキーは初恋の人からのプレゼントを、今も大切にしてるってことだよね?」

「まあ、そういう見方もあるね。」



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