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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#88 昼下がりの罰ゲーム(1/4)
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朋也の話は、また次回で

テスト週間期間が始まった翌日の日曜日。
明人から比路のスマホにメッセージが送られてきたことから始まった。

『保留にしてた罰ゲーム。忘れないうちにやっちゃいたいから、今日の午後。お昼ご飯食べたら寮の玄関ロビーに来てね。』

なので時間通りに待ち合わせの場所へ。
学生寮の玄関ロビーに行くと、そこにはもちろん明人もいたが、明人以外にももう1人。

「出来れば朋也くんにも、僕のこと。他にも鈴木っていう人がいるから、名字じゃなくて名前で呼んでくれた方が、違う人と紛れなくて助かるんだけど。」

「・・・・・・・・・すみません。」

「ううん、いいのいいの。無理強いはしないから大丈夫。でも気が向いたら、いつか朋也くんからも名前で呼んでもらいたいな。」

朋也の姿もあって、明人との珍しいツーショットを眺めながら比路は新鮮さを覚える。

「明人兄、お待たせー!って、あれ?朋也も一緒なの?」

「ううん、朋也くんは別件。一緒じゃないよ。」

しかし明人の罰ゲームに、朋也は無関係。
2人は、たまたまここで話し合っていた模様。

「それじゃあ朋也くん。比路くん来たから、僕らそろそろ行くね。」

「はい。鈴木先輩、色々とありがとうございました。」

なので比路は明人と一緒に、外出届けを提出したら街の方へ。
朋也に見送られながら出掛けたが、そんな朋也の話も今回の話とは別件なので、また次回まで置いておこう。



明人からの罰ゲーム

「ホントに僕1人だけだったんだ・・・。」

「そりゃそうだよ、これは保留にしてた罰ゲームの1つでもあるんだから。だから今日は1人で頑張ってね、荷物持ちさん。」

保留となっていた明人から比路への罰ゲーム。
それは明人が街まで買い出しに出掛けるから、比路はその荷物持ちとなったようだ。
しかしブルーリーフの罰ゲームには、30分という時間制限がある。
けれど今回は戦闘続行不可になった原因が呼び出しだったこともあり、今回だけ司の許可もあったため、そこは妥協した模様。

「でもこうやって明人兄だけと出掛けるのって初めてだから、ちょっと不思議な感じがする。」

「ごめんね。さすがにテスト期間中に、人数増やしてまで街に行くのは気が引けちゃって。かと言って、男1人で行くのも・・・ね。慣れてはいるんだけど、やっぱり誰かはいてほしいって思ってて。」

貸し出し用の自転車が数台余っていたが今回もレンタルせずに、仲良くバスに乗って街の商店街へと向かうのだった。

「でも司くんが来なかったのは少し意外だったな。比路くんにメッセージ送った時、司くんも一緒に来るかなって思ってたのに。稚空には言ってないからアレだけど。」

「昼ご飯食べる前まで、僕らアッキーたちの部屋で勉強してたから。だから多分、その勉強の続きをやりたかったんだと思う。司も補習はヤダって言ってたから、テスト期間中ぐらいはゲームも控えてるはずだし。」

「なるほど。それ聞いて少し安心したよ。司くんも勉強するときは、ちゃんとしてるんだね。」



商店街唯一の手芸屋さん

バスに運ばれて、数十分後ー・・・。目的地である商店街にご到着。
明人がさっそく向かった先は、ピンクがメインな外装の可愛らしい手芸屋さん。
演劇部の衣装を直すのに必要な裁縫用品を、まとめてごっそり買い物カゴへと次々入れていく。

「糸はなんとなく分かるけど。針もすごい量買うんだね、明人兄。そんなに使うモノなの?」

「うん、どっちも消耗品だから。」

「え?針って消耗品なの?床に落としたっきり無くしちゃう・・・とか?」

「ううん、違うよ。例えば、こういうミシンの針とかも。先が潰れてたり錆びれたりすると綺麗に縫えなかったり、歪んでしまうと縫い目が飛んだりするから。だから綺麗な縫い目を保つのには、定期的な交換が必要になるんだよ。」

「へぇー、そうだったんだ。知らなかった・・・。」

そんな中で知らなかったことを教わったりして勉強にもなったが、比路の気は正直それどころではない。
自分と明人以外にいるお客さんは全員女性。なんなら店内にいるスタッフでさえ女性しかいないのだ。
なんだか場違いな所に来てしまった感が強くて、落ち着けずにいる。

「ねえ、明人兄・・・。時間って、まだかかる?」

「ん?うんっ。せっかく来たんだから、もう少しゆっくり見させてね。」

その一方で明人は、いつも通りの様子だったが、ソワソワしてる比路の様子が新鮮で面白かったのか。
ニコニコした笑顔を悪い色に染めさせて、言葉通りに、ゆっくりと。買い物を過ごすのだった。



同性が1人プラスいるだけで心強い

そんなこんなでようやく終わった明人のお買い物。
会計のスタッフに入れてもらった紙袋の荷物は、罰ゲーム通り比路に持たせる。

「明人兄、凄いね。今のお店、ずっと平然と過ごせていられるなんて。僕1人じゃ、用があっても絶対に入れない場所だったよ。」

「まあ、この商店街にある唯一の手芸屋だから。何回か通ってるうちに慣れはしたけど、それでもやっぱり自分以外の男が、もう1人ぐらいいてほしいって常に思ってるよ。肩身狭い気持ちもそれだけで和らぐし。」

比路はやっとの思いで落ち着けなかった場所から出れて、ホッとした安堵な息を長く吐く。
明人は稚空のお兄ちゃん。
親友のお兄ちゃんは、凄い人なんだなー・・・。と、明人に対して改めて関心を覚えた。

「あ、でもこういうってネットショップとかで買ったりしないの?」

「うん。そもそも寮着で通販利用するのは禁止されてるし。それに実家着だと、こっちの許可もなく姉さんに開けられて見つかって。青ノ葉に送り届けてくれる条件として、何着か衣装を作らされる目に合って大変なことになるからヤだ。」

「な、なるほど。アッキーや明人兄のお姉ちゃんも、話を聞けば聞くほど凄い人だね。」

「鈴木家では神様仏様茜様だから。僕と双子の姉とはいえ、稚空も僕も。姉さんには誰も逆らえないんだよ・・・。」



せっかく街に来たから

「今日は色んな意味で付き合ってくれてありがとね比路くん。罰ゲームだったとはいえ助かったよ。比路くんだってテスト勉強しなくちゃだったのに。」

「だって敗者は勝者の言うこと、なんでもきくのが罰ゲームのルールだもん。」

「あはは、そうだったね。ごめん、ごめん。」

そうしてこのまま真っ直ぐ帰れるかと思いきや。
テスト週間中とはいえ、せっかくの日曜日に商店街までやって来たのだ。

「そのごめんついでに、もうちょっとだけ。付き合ってもらってもいい?比路くん。」

「え。まだどこか、さっきみたいな手芸屋に行くの?」

「ううん、違う違う。せっかく街まで来たから、お茶して帰りたいなって思っただけだよ。」

なので、もう少しだけ。
明人が寄り道しようと言い出し、比路を付き合わせることに。

「お茶ー・・・ってことは、抹茶とかがある店に行くの?」

「え?行かないよ。比路くんが行きたいのなら、僕は甘味処でもいいけど。比路くんって抹茶得意だったっけ?」

「ううん。でも少し前に商店街来た時、そんな感じのお店に寄ったから。行くのなら別の店がいいなって思って。」

「なるほど。」



七夕限定のフォーチュンクッキー

2人が向かった先は、さっきの手芸屋から少し歩いた距離にあるチェーン店の喫茶店。
地元にもあって馴染みのある喫茶店だったので、比路も今回は気遅れすることなかった。
そして比路はアイスティーを、明人はアイスカフェオレを。
受付けのレジで注文しようとしたその時、レジ横に置かれていたこの店限定のちょっとしたお茶菓子に目が止まる。

「へぇー、七夕限定のフォーチュンクッキーか。なかなか面白いモノ売ってるんだね、ここの店舗。」

「フォーチュンクッキーって、何?」

「あれ?比路くん知らないの?フォーチュンクッキー。中におみくじが入ってるクッキーのことなんだけど。」

それはフォーチュンクッキー。
明人も説明してくれた通り、クッキーの中に運勢が表記されたおみくじが入っているお菓子のことである。

「中におみくじって、どういうこと?棒アイスみたいにアタリとかがあるって感じ?」

「うーん。あんまり男2人でやるようなイメージないけど、試しにやってみる?実際に見てもらった方が、僕としても説明付けやすいし。」

しかし口で説明しただけでは比路が理解を掴めなかった為、実際にフォーチュンクッキーを。注文したドリンクと共に2個買って、やってみることに。

「おみくじってことは、要は籤引きってことだよね。僕、あんまり籖運自信ないな・・・。」

「僕としては、おみくじと籤引き。あんまり一緒にしてほしくないかも。」



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