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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#87 裏側の朝とテスト勉強と(3/3)
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『克也代理』としての呼び出し?

それから暫くして、時刻は夕方を迎える。
林間学校だった2年生が、そろそろ青ノ葉学園へ帰ってくる頃だろう。
なのでブルーリーフの勉強会もそろそろお開きになって片付けていた時、比路のスマホに1件のメッセージが受信される。

『至急、玄関ロビー』

それを送ってきたのは、なんと日暮寮長。

(え・・・?)

また『克也代理』としての呼び出しだろうか。
以前、寮内放送で呼ばれた時、友達に要らない心配かけるから、せめてスマホに連絡入れて欲しいと言ったこと。ちゃんと聞いてて覚えてくれてたようだ。

「ごめん。ちょっと僕、席外すね。」

「ん?ういうい。じゃあヒロの荷物は持ってってあげるから、行ってらっしゃい。」

「うん。ありがとう司。ちょっと行ってくるね。」

なので今度こそ文句言われないよう、急いで玄関ロビーへと向かう。



目線の先には

玄関ロビーでは、やっぱり林間学校から帰って来る2年生の姿が多かった。
そこには日暮寮長の姿もあり、やって来たばかりの比路は誰よりも先に寮長を見つけたが、彼の視線は一点を見つめたまま。
気になってその先を追うと、そこには小町に肩を借りて歩く久野がいた。

「寮長?何見てー・・・って、克也!?」

「ッ!」

そんな2人を見た途端、真っ先に彼らの元へ。
するとそれに気付いた久野は、ビクッと一瞬だけ身体を竦ませる。

「豊部長。克也のその怪我は?一体、何が?」

「オレも呼ばれたばかりだから、まだ詳しくは分からないんだけど。かっつぁん、林間学校中にやっちゃったみたいで。」

そして比路をまともに見ることが出来なかったのか、顔は逸らしたまま。

「・・・違う。・・・そんなこと、ない。」

何かを否定するように呟いていたが、声が小さすぎて誰の耳にも届かなかった。



我が儘も言ってる場合ではない

しかし今は、それどころではない。

「小町。喋ってる暇あったら、早く克也を医務室に運んでやってくれ。」

比路と小町でいつまでも話が続きそうだったから、見ていた日暮寮長が間に入って2人の会話を遮る。
そして小町は呼び出した用として、久野の荷物を比路に任せようとしたが、

「はい。あ、でも峰ぎっちゃんも来たことだし、せっかくだから荷物は峰ぎっちゃんにお願いしようかとー・・・。」

「・・・・・・・・・っ。」

持ち主である久野本人が黙ったまま、苦い表情で首を横に振ってまで嫌がっていた。

「ー・・・かっつぁん。こんな時にまで、そんな我が儘言わないでくれる?」

「え。」

けどその意見は、小町によって却下。

「峰ぎっちゃん、そういうことだから。オレは、かっつぁんを医務室まで運んでくから。峰ぎっちゃんは、かっつぁんの荷物よろしく。」

「あああ、待って!やめて!豊先輩!これは我が儘とかじゃなくてー!「はいはい。かっつぁんは怪我人なんだから、このまま大人しく医務室に連行されてようね。」

あとのことは比路に任せて、小町は寮長に言われた通りに、久野を医務室まで運んで行った。



久野が嫌がってた理由はソレ

けど任された側は、どうしていいか分からない。
ポツーンと残された比路は、久野の荷物をどうするべきか悩まされる羽目に遭う。

「それじゃあ峰岸、悪いが久野の荷物。峰岸に任せていいか?俺が小町や峰岸を呼び出したのも、そういうことだから。」

しかも呼び出した日暮寮長からも任される始末。

「え。それって僕でホントに大丈夫なんですか?僕、克也に凄く嫌がられてたんだけど。」

「まあ、それはー・・・そうだな。小町が言ってた通り、克也が我が儘言ってただけだから。峰岸が克也の汗臭い荷物を片すの嫌じゃなきゃ気にすんな。」

「林間学校から帰ってきた後なんですから、何、当たり前のこと言って?それぐらい別になんとも。」

でもそれは助言通りに動いていいのか。
竦まれた一瞬も、逸らされた顔も見てしまった後だ。
そのせいで悩みが解決されないが、このまま置きっ放しにすることも出来ない。

「クリーニング室は今、2年が占領してっから。使うんだったら、空いたタイミング狙えよ。」

「え?あ、そっか。今の克也の状態考えたら、洗濯もした方がいいですよね。でも僕の洗剤でやって大丈夫かな?克也が自分の洗剤にこだわり持ってたらどうしよう・・・。」

なので久野に申し訳ないと思いつつ結局、任された通りに久野の荷物を片すことに。

「気にすんな気にすんな。たまにはそんな日があったっていいだろ。むしろ峰岸は『有り難く思え』って気でいろよ。言葉通りのことを克也にしてやってるだけなんだから。」



久野のところに向かわない寮長

しかしその時、

「んじゃ、あとは任せた。」

「え?」

日暮寮長がそのまま自分の部屋に戻ろうとしたのを見て、比路もつい変んな声が出てしまう。

「寮長は克也のとこ行かないんですか?」

「そっちは小町に任せたから、俺まで行く必要はないだろ。」

だって呼ばれた用も片付けとかはこっちに任せて、自分も久野のところに向かうのかと思っていたから。
きっと久野だって、色々と寮長に話したいことがあるはず。
だから久野の為にも向かってくれるよう促す。

「え。けど克也的には寮長もいてくれた方が、きっと。」

「悪いが俺もまだ仕事が残ってんだ。克也の相手をしてやれるほど暇じゃねえから、峰岸や小町を呼んだんだろ。」

「でも・・・。」

しかし彼に何を言っても、全く頷いてくれる気配がなかった。



寂しさ思わす去る背中

けれどその代わりとして、比路の頭にポンと置かれた寮長の手。
ビックリした比路は、その一瞬だけ肩を竦ませる。

「!」

でも彼の手はどこか優しく、隠せてない不安を宥めようとしてくれていた。
それはまるで、前の時と一緒。
なのにどこかが違う。何かが違う。

「・・・・・・。」

「寮・・・長?」

口に出して言えない何かを、そこから伝えられた気がした。

「・・・それじゃあな。」

「ぁ・・・。」

そうして日暮寮長は最後に、優しくポンポンと叩いてから退かし、寮長室へと先に戻って行く。
だけど背中は、どこか寂しさを思わす色をしていたのだった。



青ノ葉 第87話をお読みいただきありがとうございました!

2月の更新忘れてて申し訳ないです・・・


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