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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#87 裏側の朝とテスト勉強と(1/3)
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林間学校裏側の朝

青ノ葉学園の2年生が林間学校へ出発する同日の朝。
スズメの鳴き声が響き渡る、いつも通りの時間に起きた比路。
昨夜、一緒に寝た司を起こさないように、そっと起きて物音に気を付けてながら身支度を整えていた。
けど全く鳴らさなかったわけじゃないから、その音で目が覚めたのか。

「ん・・・っ、おはよ。ヒロ。」

「わ?!・・・ご、ごめん司。起こし、ちゃった?」

起きた司が、着替えていた真っ最中の比路に話掛ける。
それでビックリした比路だったが、今の時刻を思い出して直ぐに声の大きさを落とした。

「ううん、大丈夫。朝練行くところだった?」

「う、うん。」

そんな比路に、ちょっとギクシャク感があるのは、やっぱり昨日の司との喧嘩?が原因。
でもその日のうちに。
司とも仲直りしたから、もう大丈夫。

「そっか。・・・頑張って、いってらっしゃい。」

「うん。行ってきます。また教室でね。」

自分の準備が整ったら、いつも通りに司に見送られて、部屋から出て行った。が、今の時刻は朝の6時ちょっと前。
いつも通りに起きてしまったが故に、いつも通りの行動をしてしまった比路を見て、司は布団の中で思わずポカンと首を傾げた。

(って、あれ?まだ6時前だったんだ?ヒロったら克兄ちゃんいないのに、こんな早く起きてどうするんだろう???)



いつも通りじゃない、いつもの朝

そんなこんなで本日の1番手の生徒ともなった比路は、食堂前に来ても久野の姿がなく、2年生は今日から林間学校だったことを思い出してショックを受ける。
いや、決して忘れてたわけではない。
買い出しだって一緒に行ったのだから忘れてたわけじゃないが、今までの習慣が頭から離れさせてしまっただけ。

(あぁぁ・・・しまったぁ・・・。克也がいないなら、この時間に起きる必要なかったんだった・・・。)

何せこの時間に起きて食堂に向かうようになったのは、生徒会で忙しい久野と時間を合わせたいが為に始めたこと。
けどその久野がいなければ、こんな早くに朝ご飯食べて青ノ葉道場に向かっても、他の部員が来るまでは自分1人きりだけなので自主トレに励むしかないのだ。

(まあそれはそれで恭に追いかけ回されるよりは、有意義になるからいいとして。)

それでもこの時間まで、1人きりは寂しすぎたのか。

(・・・もう少しすれば朋也が来るから、ちょっと待ってようかな。)

少し待てば本日の2番手となる生徒、朋也がやって来るはずので、このまま食堂前にて彼を待つことにした。
するとその時、

(あ・・・。)

日暮寮長とチロ先生の姿を発見。
2人は離れた向こうの方で、何かを話し合っているのか。
内容までは分からないけど、寮長がチロ先生に注意を受けてる感が、ここからでも分かった。
また妙なことを企んでて見つかって、それで怒られているのだろうか・・・。



チロ先生に怒られてた寮長

そんな様子を朋也待ちついでの暇つぶしに見ていた比路。

(そういえば田邊って先輩から、2人の仲を調べてくれって言われてたっけ?克也からも2人は仲が良いって証言あったし、寮長本人とも前に話したけど、結婚願望ないどころか恋人もいない感じしてたっけ。それをそのまま伝えちゃダメなのかな?)

けれど2人は数分も経たないうちに話終えたのか、その場で解散。
チロ先生は違う方向に行ってしまったが、日暮寮長は食堂側へとやって来る。

「ー・・・、しくった・・・。」

そして何やらブツブツと。
注意されたことに対して文句がありそうな感じで呟いていたから、気になって挨拶も兼ねて声を掛けた。

「寮長。今、チロ先生に怒られてたんですか?」

「あ?峰岸、か。今日はさすがに克也も来ないってのに、珍しいな?1人でもこの時間に食堂来るなんて。」

「癖というか習慣というか。つい、いつも通りに起きてしまっただけです。寮長こそ、チロ先生に怒られるほど、また何を企んでたんですか?」

「あー・・・。企んでたっというよりは・・・。」

すると寮長は、その答えに何かを考え込む。



注意された理由

でもそれは一瞬だけ。
周りに他の生徒もいないのを確認してから、ここだけの話のように教えてくれた。

「まあ峰岸には、バレてるからいいか・・・。克也がアホして、昨日お前の前で言ったろ?克也と俺で昼間、外にメシ食いにいったって話。」

「してましたね。でもそれ克也だけじゃなくて、寮長もですよね?2人して僕の前で、すごく言ってましたし。」

「そう。それそれ。その話がチロせんせーにもバレてて、注意されたってだけの話。」

それは事前に『久野と日暮寮長が2人でご飯食べに行った』話を、知ってたから聞けた秘密のお話。

「・・・ダメなんですか?それ。」

「いや。俺が誰とメシ食おうが、そんなの俺の勝手だろ。」

「え?でも今、それで注意されたって。」

「・・・・・・・・・。」

しかし何でその件で、チロ先生から注意を受けたのだろう?
気になってもっと尋ねたら、その訳は直ぐにでも分かった。

「要は、度が過ぎると贔屓になっから。」



あんなに喜んでいたから

それを言われてみれば、昨日の話以外の過去にも、色々と思い当たる節が幾つかある。

「それを分かった上で、ちょっとでも外側から何とかしてやりたかったんだが・・・。やっぱあんま為にはなってなかったよな。」

「で、でも克也は、あんなにも喜んでたから。」

「けどそれが原因で、前に克也と峰岸を気まずくさせたろ。」

「・・・ぁ。」

けどそれは仲が良い証でもあるが、あまり良くなかったことでもあると彼は言う。
そんな己の行動に、日暮寮長は珍しく落ち込んでいるように見えた。
だから比路は比路なりに、なんとか励まそうとする。

「で、でも克也は・・・、あんなに喜んでたから・・・。だから・・・、その・・・。」

しかしこの後に続けようとした言葉が見つからなかった。



励ましは不要?

けど彼は見た目ほど沈んでなかったのか。

「まあ、それは当然だろ。なんせ克也は俺に憧れてんだから。」

「え・・・。って、やっぱり気付いてたんですか?克也の気持ちというか、なんというか。」

「あれだけ真っ直ぐ素直に向けられたら、気付かない方がおかしいだろ。」

比路の励ましは不要になるほど、直ぐに元通り。
そしてリスペクトされてる久野の想いも、以前から気付いていたようだ。

「峰岸も俺に可愛がられたかったら、先ずは様付けで呼ぶところから始めろよ。」

「絶対ヤダ。克也だって寮長を様付けで呼んでるとこ見たことないし。」

彼は得意げに笑って、歓迎しているように。
それはそれで受け入れていたのだった。

(あれ?そういえば克也って、寮長呼ぶ時ってなんでー・・・。)



近々やるよ、学寮イベント

そんなこんなで比路が日暮寮長と話をしている間に、朋也も本日の2番手としてやって来る。

「あ。おはようー、朋也。」

「・・・おはよ。」

なので2人もこれで話を終えようとした、その時。
去って行く寮長からヒラヒラと、キラキラな紙で出来た何かの飾りが落ちてきた。

「あれ?寮長、なんか落としましたよ。・・・って、何これ?星?」

「ん?あっ!こいつ、俺の服の中に紛れていたのかよ。探してたところだったから言ってくれて助かったわ。」

それを拾ってよく見たら、その飾りは星の形をしていたのだ。
気付いた寮長はホッと一安心したような息を吐いて受け取ったが、何でこんな物が彼から落ちてきたのだろう。

「もしかしてお守り的な何かでした?それ。まさか寮長に、こんなメルヘンチックな一面が!?」

「なわけあるか。箝口令ほどじゃないけど、お前ら1年がまだ知らない寮内イベントが、もうじきあってな。こいつはそこで使う装飾品の一部。」

「へぇー。って、やっぱりまた前の学寮戦みたいなこと企んでたんですね。」

「今度のは、そんな大きな内容じゃないけどな。テスト週間中にやるやつだし。」

「テスト週間の時期に開催しないで下さいよ。」

どうやら近々、学生寮内でまたレクリエーションがあるようだ。
以前の学寮戦ぶりなので割と久しぶりと言えば久しぶりだが、それを聞いた途端、嫌な予感しかしない。

「むしろそんな時期だからこそやるんだろ。期末テストは赤点2つで補習尽くしな夏休みになっから。補習が嫌なら、しっかり勉強しとけよ。」

どうか今度のは、まともな内容のイベントであってほしいものだ。



彦星と織姫の話

しかしその時、寮長は何を思ったのか。

「ところでお前らって七夕のー・・・、彦星と織姫の話って、どう思う?」

「って、なんでしたっけ?」

「恋人同士の2人は1年に1回だけ、天の川で会えるっていうやつのことじゃ?」

七夕の話。織姫と彦星の話のことを、比路と朋也に尋ねた。
けどそれを『どう?』と訊かれても、少し返答に悩む。

「僕は別に何とも。会えてよかったねって感じですけど、朋也は?」

「俺も特には・・・。」

「おいおい、一般的には切ないって言われてる話なんだから。どっちかぐらいはそれっぽいこと言えよ。」

けど2人共、1年に1回しか会えない状況をあまり理解出来ていないのか。
どちらも淡白な感想しか述べれなかった。
でもそれは寮長も一緒?

「まあ・・・言う俺も、惚気にしか聞こえないんだけどな、その話。雨が降っても橋と橋の向こうで、1年に1回は会えてんだからさ。」

全くもって会えない人たちからみたら、それは十分、惚気話だと彼は言う。
けど何故だろう?
それを口にした日暮寮長が、何故か比路の中で印象が妙に残ったのだった。

(なんだったんだろう?今の質問。寮長、七夕あんまり好きじゃないのかな?)



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