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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#86 青ノ葉 林間録(後編)(5/5)
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せっかく面影なかったのに

けど完全に見失ってなかった夢への道標。
それが聞けられて、安心した鬼頭は久野から離れる。

「飲み物、なんかいる?なんならあそこの自販機から買って来るけど。」

「・・・抹茶ラテがいいな。」

「流石にそれは売ってないんじゃないか?ただの緑茶とかならまだしも。」

そして落ち込んだ彼を落ち着かせようとする。

「やっぱり売ってなかった?あの自販機に。」

「見てないから分からないが・・・まあ、諦めろ。ない確率のが大きすぎるから。」

「じゃあ要らない・・・。」

昼間。いや、昨夜からあれほど気まずくしていた2人だったのに。
せっかく、その面影がないように思えたのに。

「でもホント、林間学校が2年だけの行事でよかった。こんな情けないとこ見られたら、比路に幻滅されかねないし。」

「ー・・・・・・・・・。」

「ガッガリだけはされたくないんだよね。昔から馴染んでた年下の子だけあって。」

久野がその原因になった比路のことを言うから、鬼頭は複雑そうに黙り込んでしまった。



久野の気持ち

けれどいつまでも終着しないのは、それはそれでもどかしい。
だから確かめるように、久野に問った。

「克也って、結局・・・・・・。好き、なのか?そいつのこと。」

「ん?!え!?なんで冥まで、そんなこと俺に訊くの?」

「なんでじゃないんだよなー・・・。」

「いやいやいや。俺にとっては、やっぱりなんで?だよ。蓮さんも豊先輩も、そういや会長にも言われたことあったけど。なんでそんな風に言うの?」

「自分で気付いてないのか?」

それは久野自身の気持ち。

「だって俺、普通に接してるだけよ。」

「普通?その割には、カッコつけてないか?異様なまでに。」

「うっ。だ、だってそれはたった1つの差だけど、俺のが年上なんだから。そういう年齢的なプライド、俺にだって普通にあるわけで・・・。」

向き合わせるべきか。
向か合わせないべきか。
天秤に掛けられる複雑な気持ち。



途絶えられない気持ち

「で?どうなんだ?そいつのこと。」

「冥には言うけど、好き・・・だよ。でも・・・。」

どっちが正解か分からない。

「寮長のことは、好きなんだろ?」

「うん。あ、リスペクト的な意味でね。俺が一方的に憧れてるってだけであって。」

「じゃあアイツ・・・。峰岸のことは?どの好きに値する?」

「どのって、え???」

「ライク?リスペクト?それともー・・・「待って、冥!」

分からないから、答えが見つけられない。

「それ以降は言わないで。俺・・・、そこだけは向けちゃいけない気がする・・・から。」

「・・・・・・・・・。」

「多分・・・、だけど。それで表すのなら、ライクじゃないかな?普通に。恋愛感情だって持ったこと・・・、ないから。」

なのでどっちが正解だったのか。
久野の気持ちを知った今も、鬼頭は複雑な気持ちが途絶えられなかった。



鬼頭の気持ち

「・・・そう。悪かったな、変なこと聞いて。」

「うん・・・、ホントにね。冥だから言ったけど、正直かなり焦ったよ。」

久野には久野のプライドがあるように。
鬼頭にだって鬼頭のプライドがある。

「じゃあ・・・変に遠慮する必要、なかったわけか。」

「遠慮って、え?冥、比路に遠慮してたの?」

「いや、正確に言えば違う・・・。克也がそうであるようなら、俺は絶対に勝てない気がしてたってだけだ・・・。」

けどもう踊らされたくないのだ。
大事にしてた結果、複雑になってしまった原因の気持ちに。
だから鬼頭は、この期に及んで告げた。

「俺はずっと。克也、お前のことが・・・好き、だったから・・・。」

「え。」

自分の想いをー・・・。



もう待てない気持ち

「あ・・・、え・・・っと。」

しかし久野にとって、それは急なお話。
いきなりの告白だったから、整理が付けられない。

「俺も、その、冥のことも好きだけどー・・・、えっと。」

「だけど何?まだ他に好きな奴いるのか?・・・俺の把握不足だったか。」

「待って、冥。そんなんじゃなくて、本当に待って。」

なのに鬼頭は、そんな久野を待たない。

「・・・返事は無理にしなくていいから。俺も待つつもりはない。こんな時期にこんなこと言って悪かったな。」

「お願いだから、待って。」

言うだけ言って、それで満足でもしたのか。
どんどん久野から離れていく。

「克也、俺が勝手に言ったこと聞いてくれて・・・ありがとう。俺はもう戻るから。ちゃんと休んどけよ。じゃあな。」

「冥・・・っ!」

そして怪我で動けない久野を、この部屋に置き去りにして出て行ったのだった。




こうして色々あった林間学校も夜は明け、朝を迎えた。
その後も林間学校らしい企画イベントが目白押しにあったが、1泊2日の期間はあっという間。
夕方には全員、青ノ葉学園へと帰って来たのだった。



青ノ葉 第86話をお読みいただきありがとうございました!


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