それを気にしてるのも、やっぱり犬飼だけ。 久野は他のことに気を取られているのか。 それとも自分にとってちょうど良かったからなのか。 自分の上に転けて倒れた犬飼を、とっ捕まえた上で再確認。
「ホントに・・・ダメ?」
「え。」
「俺も・・・冴って呼んじゃ。」
「・・・・・・ダメだっつってんだろ。」
どうしても犬飼をそう呼びたいのか。 答えがノーで、ダメだと言われ続けているのに、あまり諦めきれてない様子。 しかもそんなこと熱が帯びて赤らめた顔で言われ、犬飼は思わずたじたじと狼狽える。
「ダメ?ホントに・・・。」
「ー・・・・・・っ。好きにしろよ、もう。」
「うん・・・、分かった。じゃあそうする。」
結局、犬飼が折れる形となって、自分の主張を譲らなかった久野だった。
「ありがとう、冴。」
「お前・・・さ、若干だけどさ。熱で変におかしくなってないか?」
「多分・・・。なんかあんまりよく、分かんなくなってきた・・・。」
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