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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#86 青ノ葉 林間録(後編)(1/5)
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負傷した怪我のせいで

「しっかりしろってば!!久ー・・・克也!!」

滑り降りたor落ちたあの崖下から移動した古びた小屋の中で、崩れるように倒れた久野。
けど意識までは失ってなかった模様。

「ー・・・大丈夫、だから。」

「大丈夫なわけないだろ!そんなぶっ倒れ方しておいて!」

犬飼の必死な声掛けに反応して、ゆっくりと倒れた身体を動かし、近くの壁に背をもたせる。
しかし久野のその身体は異常にまで熱を発していて、ぐったりと浅い呼吸を苦しそうに繰り返す。

「ホントに・・・大丈夫、だから。少し・・・ここで。先生たちの救助が来るまで、休ませてくれれば・・・、大丈夫だから。」

「お前・・・。まさかその怪我のせいで、熱が出てきてんじゃ!?」

そんな状態でも本人は大丈夫と口にするが、どっからどう見ても大丈夫とは思えない。
だから犬飼は己の知識だけでなんとかしようとしたものの、

「ちょっと待ってろ。今、何か探しー・・・ッ!」

負傷して痛む自分の足に邪魔されて、思うように身動きが取れなかった。

「だからそんな足で・・・、無理に動こうとするなって・・・。」



呼んでたよね

けどそんなの、どうでもいい。
例の噂の真意だって今は、どうでもいい。

「ー・・・こっちはお前よりも軽症なんだから。この程度、無理でもなんでもねえって!」

「・・・・・・・・・。」

犬飼は痛む足に気をつけて邪魔されぬよう、ゆっくりでもいいから動いて、この小屋の中で何かないか物色する。
けど人が住んでいた形跡がないせいで、小屋の奥にあるあの鎖以外、他に何か使えそうな物がなかった。
そんな彼を見ていた久野。

「・・・犬飼。」

「なんだよ?こっちに話掛ける余裕があるなら、その分休んでろって。救助が来たら、ちゃんと呼ぶからさ。」

「うん・・・。でもその前に、1つだけ。」

1人静かに頷いて、改めて犬飼に問った。

「・・・・・・俺も、冴って呼んでもいい?」

ー・・・と。

「は?」



呼んでしまった、つい

突然?いきなり?なんでだよ!?
そう心の声で強くツッコむ犬飼。

「何かと思えば、いきなり何、変なこと言い出してんだ。お前なんかに名前で呼ばれた日には虫唾が走って、今も鳥肌でいっぱいだわ。」

小屋内が薄暗いせいではっきりと見えないが、その顔は嫌がってるというより、かなり焦った表情をしている。

「え。でもさっき俺のこと・・・、名前で呼んでくれたよね?」

「・・・・・・・・・。」

何せ、ついで呼んでしまった久野の名を。
倒れても意識があった久野本人に、しっかり聞かれていたから。

「お前が変にぶっ倒れたからだろ。倒れた人見かけたら呼び掛けるって救命講習であっただろうが。それだ、それ。じゃなかったら誰がお前なんか!」

「・・・・・・そう。」

だからいっぱい言い訳を作って誤魔化して。
ついで呼んでしまったが、それはついであって意図的ではない。
なので久野の問いは、当然ノーであるが正解だった。



救命講習で習ったことを

けどそれはそれで別の答えに繋がる言い分。

「じゃあ嫌いな俺を・・・。いちおでも助けようとしてくれたことは・・・変わりないんだな。」

「・・・・・・・・・。」

過去に習った救命講習を行っただけと使った言い訳が、犬飼が久野を助けようとする意思の表れとして、久野に捉えられてしまう。

「・・・ったりまえだろ。ここでお前に勝手に死なれたら、オレが犯人にされるからな。」

「まあ・・・。1番の容疑者には、なるだろうね。」

「だろ?」

でも犬飼は、それはそれでその通り?

「お前のこと死ぬほど大っ嫌いだけど、今ここで死なれたら1番困るのはオレになるんだから。だから・・・絶対に死ぬなよ、こんなところで。」

休戦中な今だからなのか。
それを否定することなく、そう続けて口にする。
そんな話を聞いてた久野は犬飼に対して、

「うん・・・・・・、そっか。ならいちおでも言っとかないと、ね。・・・ありがとう冴。」

小さな笑顔を見せて、改まってお礼を伝えた。



そんな足で動くから

「なんか悔しいな・・・。俺もお前のこと死ぬほどじゃないけど、凄くムカついた日、何回も何回もあったのに・・・。それでもやっぱり嫌いになれそうにないのって。」

そして続けて色々と言っているが、犬飼にとってはどれも鳥肌が立ってしまうモノだったのか。

「だぁーかぁーらぁー!お前に呼ばれると虫唾が走るからやめろって!」

「だってダメだって、はっきり言われてない・・・。」

「だってじゃねえ!ダメだダメだダメだ!これでいいか?納得したか?ったく、礼も言われる筋合いないっつーの!お前もオレをムカついたままで嫌いでいろってば。」

「・・・もう無理だよ、それは。」

「あーもー!」

何もない中、せっかく物色していたのを中断させてまで、そんなことを言う久野に一言言い返してやろうと。
久野の元へズカズカと戻ってきたが、気を付けていた痛む足を忘れ過ぎたせいで。
最後に踏み込んだ途端、ズキンッと強く走った痛み。

「オレはお前のそういうところが1番嫌ー・・・うっ!?」

そのせいで犬飼まで転けるように倒れてしまったが、近くにいた久野がクッション代わりとなったので、無事と言えば身体は無事。
でも壁にもたれて座ってる久野の上を横から覆い被さってしまった形ともなってしまったので、無事じゃないと言えば心が無事じゃない。

「わ、悪い・・・。転けちまって・・・。」

「だからそんな足で・・・、無理に動こうとするなって・・・。大丈夫?怪我はない?」

「た・・・多分・・・。」

それによって久野と犬飼は、また再び1番近い距離になったのだから。



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