≪ top ≪ main


青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#86 青ノ葉 林間録(後編)(3/5)
]  [目次へ]  [

それからの夜

それから、その夜。
久野と犬飼が無事に帰ってきたことにより、今晩のバーベキューも無事に開催される。
焼肉に海鮮、野菜に焼きそば、炊いた白米。
よりどりみどりなご馳走が、クラブハウス内の掃除で空かせた男子共の腹へと、どんどん食い尽くされていく。
そんな団欒な一時を、先ずはA組から。

「そういやカトケンさー。せっかく颯太に話すチャンスあったのに、なんで言わなかったんだよ。バッテリーの件。」

「練習サボる投手は、ウチのチームに要らないからな。」

「んー?でもあん時、颯太は颯太で何かしらの事情があったように思えるけどな。んでもってその台詞、現バッテリーのサボり魔キャプテンにも言えよ、女房役ー。なんでオレが毎回迎えに行く羽目になってんだ。」

「ま・・・まぁ、陸哉。いずれにせよ颯太の件は、ちゃんと言うつもりではいる。遅くても新人戦までには間に合わせたいからな。」

この時。このタイミング。ここでじゃなくても出来る話を、お食事中に弾ませる。
陸哉と加藤は自分たちが所属している野球部に関して色々と話し合っていたが、風雅は矢口と。この林間学校中でずっと気にしていたことを改めて話す。

「で?純平。このクラブハウスで気になってたこと。あれから何か分かったことあったか。」

「・・・・・・何も分からないことだけ、分かった。」

「は?なんだよ、それ。せっかく純平を人柱にして、小説のネタに使えそうであれば使おうとしてたのに。」

「お前・・・。それでずっと俺を張ってたんだな。」

「だってなんか純平が面白そうな感じしてたから。」

けどどちらとも、情報や材料を得ることなく終えてしまったようだ。
でもA組の連中は基本的に、皆んなそんな感じ。
雰囲気も良いまま、穏やかに過ごしていた。



チクチク言葉の渦

そんなA組に比べてC組の空気は、犬飼が無事に帰ってきたとはいえ、反対しているようにみえる。
その中心には、もちろん桃地もいた。

「桃地くん・・・。犬飼たち無事に帰ってきてよかった、ね。」

「・・・・・・。」

「犬飼くんのこと気になるだろうけど、今は桃地くんもご飯食べよ?嫌いなモノとかある?」

「・・・なんでもいいっす。自分、好き嫌いないっすから。」

だから気になるのか。
空が話しかけてきて、そんな桃地の世話を焼く。

「じゃあここで待ってて。桃地くんの分、とってくるから。」

「・・・ありがとう、羽崎くん。」

けど不在の犬飼にも向けたクラスメイトのチクチク言葉の渦は、そんなんじゃ掻き消せない。
むしろその矛先が、そんな空にまで及びかける。



2人で一緒

空のこの行動は、彼の性分だ。
それを知っている身の鳴だったけど、それが仇となって彼が悪く言われるのは、見てて黙っていられない。
だけどクラスの連中を敵に回すのも出来ないから、そんな空に不安そうな声で話を掛ける。

「なんで空が2人分、盛って?」

すると空は、桃地の分以外にも。
もう1人分、余計に盛っている。
きっとそれは今いない犬飼の分。
部屋で安静にしてる犬飼のとこにも運ぼうとしていたのだ。

「事情はどうであれ、犬飼くんだってお腹空かせてるはずでしょ。周りにどう言われようが、お腹が空いてるクラスメイトを放っておくなんて真似、出来ないから。」

「・・・それもそうだな。空、そっちの持つから貸せよ。1人じゃ大変だろうから俺も手伝うよ。」

なので鳴は付き添うように、手伝うことに。

「いいの?僕は平気だけど、鳴は部活の件もあるわけだしー・・・。」

「いいよ、別に。空とだったら何だって。」

「そう・・・。じゃあお願い出来る?もう1個、持っていきたいモノがあったから。」

よって及びかけたチクチク言葉も、別の色に変わった。
でも対象は、空だけじゃなく鳴だけじゃなく、2人で一緒となったから不安は消えて、敢えて言わせっぱなしにさせて利用する。
だってそれは否定出来ないし、したくないことばかり。
むしろその通りだから、もっと言っていいんだよ?
言われれば言われるほど『空は俺の』だと、公式な認識が得られそうだったから。



犬飼と空

そうして桃地の分を桃地に渡したら、犬飼の元へ。
部屋の前まで一緒にやって来た空と鳴だったが、2人だと余計な気を遣わすからと。
中に入ったのは空1人だけ、鳴は扉の外で待機する。

「犬飼くん・・・、どう?調子は?」

「なんで羽崎がここにー・・・、まあいいや。小太郎は、どうしてる?」

「いちお皆んなと一緒の場所で、ご飯食べて貰ってるよ。これは犬飼くんの分。バーベキューの具材、全種盛れるだけ盛ったけど、嫌いなモノあったらごめんね。」

だから今この場にいるのは犬飼と空の2人だけ。
でも犬飼にとって、空が来た展開は驚きが隠せなかった。
そして空までも桃地のように。

「あとコレ。こっちの100%のジュースなら飲められそう?」

「・・・・・・小太郎から聞いたのか?これ。」

「ううん、何も聞いてないよ。でも桃地くんが買ってきたヤツと同じのなら、犬飼くん大丈夫なのかなって思って。」

パシられてはないけど、犬飼の好みに合う飲み物をバッチリと当てたのだ。

「ごめんね、昼間。飲められないジュース、渡しかけちゃって。」

「・・・・・・・・・。」



犬飼と空 2

けど犬飼にとって、ほぼノーヒント?で空に当てられて、少し複雑。

「あの時、犬飼くん。飲まないじゃなくて、飲めないって言ってたから。なんかそれが、ずっと気になってて。」

「別に・・・、正確に言えば100%以外も飲めなくはない。ただ色々混ざってるような味が好きじゃないってだけだから。」

「そうだったんだ。」

でも渡されたからには、おとなしく受け取った贈り物の紙パックジュース。
持ってきたご飯も、ここで静かに食べ始める。
しかしそんな空に対して、犬飼は言いたいことがあるようで。

「羽崎・・・。純平の件で羽崎には助けられてるから。いちお、礼は言う。けど念の為に言わせてくれ。」

「何を?」

「お前は絶対・・・、こっち側に来るなよ。」

それを忠告のように聞かせた。

「それからこっちのせいで、鬼頭・・・。陸上部にも余計な負担かけさせてて悪かったな。」

「犬飼くん・・・。」



3人揃って元の場所へ

その後、犬飼に1人でいたいからと言われて、部屋から出て行く空。
すると部屋の外には待機していた鳴以外にも、いつの間にか月島の姿まであった。

「びっくりした。優介まで来てたんだ。」

「ついさっき来たばっかだけどな。」

「だってこっちの班、久野くんも冥くんもいなくなってバラけちゃったから、もうほとんど解散状態なんだもん。それぞれ別のグループに混ざっていったから、ボクもどさくさに紛れて、鳴っちとお空のとこに来ちゃった。」

どうやら彼が語るには、B組の空気もあまり良くない模様。
なのでそんな月島も一緒に連れて、3人揃って元の場所へと仲良く帰って行ったのだった。

「ねーねー。ご飯食べてお風呂入ったら、青春っぽく寝る前に恋バナする?恋バナ。」

「は?ヤだよ。どうせ『ボクのー、好きなー、人はー。佑先生なの!』って言うつもりのくせに。」

「え!?やだやだ。なんで言う前からボクが佑先生ラブってるの、鳴っちにバレちゃってんの!?」

「ソレソレ、今のソレだって。優介は語るに落ちてんだってば。」



]  [目次へ]  [
しおりを挟む




BL♂GARDEN♂BL至上主義♂
2015.05start Copyright ちま Rights Reserved.
×