それから、その夜。 久野と犬飼が無事に帰ってきたことにより、今晩のバーベキューも無事に開催される。 焼肉に海鮮、野菜に焼きそば、炊いた白米。 よりどりみどりなご馳走が、クラブハウス内の掃除で空かせた男子共の腹へと、どんどん食い尽くされていく。 そんな団欒な一時を、先ずはA組から。
「そういやカトケンさー。せっかく颯太に話すチャンスあったのに、なんで言わなかったんだよ。バッテリーの件。」
「練習サボる投手は、ウチのチームに要らないからな。」
「んー?でもあん時、颯太は颯太で何かしらの事情があったように思えるけどな。んでもってその台詞、現バッテリーのサボり魔キャプテンにも言えよ、女房役ー。なんでオレが毎回迎えに行く羽目になってんだ。」
「ま・・・まぁ、陸哉。いずれにせよ颯太の件は、ちゃんと言うつもりではいる。遅くても新人戦までには間に合わせたいからな。」
この時。このタイミング。ここでじゃなくても出来る話を、お食事中に弾ませる。 陸哉と加藤は自分たちが所属している野球部に関して色々と話し合っていたが、風雅は矢口と。この林間学校中でずっと気にしていたことを改めて話す。
「で?純平。このクラブハウスで気になってたこと。あれから何か分かったことあったか。」
「・・・・・・何も分からないことだけ、分かった。」
「は?なんだよ、それ。せっかく純平を人柱にして、小説のネタに使えそうであれば使おうとしてたのに。」
「お前・・・。それでずっと俺を張ってたんだな。」
「だってなんか純平が面白そうな感じしてたから。」
けどどちらとも、情報や材料を得ることなく終えてしまったようだ。 でもA組の連中は基本的に、皆んなそんな感じ。 雰囲気も良いまま、穏やかに過ごしていた。
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