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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#12 長い一日のおわり(2/2)
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繋がった連絡

(これお父さんが使ってた機種と同じ。でも、あれ?それって何年前だっけ?)

比路はまだ自分自身の携帯電話を持っていない。
けど親や司や稚空の携帯電話を幾度か触らせてもらったことがあるため、難無くの操作で自宅の電話番号に電話を掛ける。

「・・・・・・。」

すると受話器の向こうからトゥルルと鳴る呼び出し音が聞こえ、ホッと一安心。
公衆電話は拒否されてダメだったけれど、電話帳に登録されてない番号でも拒否されなかったようだ。
その証拠に、

『はい、もしもし。どちら様、ですか?』

無事、電話が繋がり受話器の向こうから比路ママの声が。

「あ、よかった。やっと繋げられた・・・。」



一日ぶりの

『あら?その声は比路?どうしたの?』

「別に用はないんだけど。今日の入学式の時、お母さんと会わなかったから。・・・だから来てたのかなって気になって。」

無事にお母さんと連絡が取れた比路。
一日ぶりに聞く声に、さらにホッとした息を吐く。

『お邪魔しちゃ悪いと思って声掛けずに帰ったけど、司くんのお母さんと一緒にちゃんと来てたわよ。』

「そっか。ならいいや。それだけ気になっただけだから。」

『それより比路。掛けてきた番号、司くんや稚空くんの番号じゃないみたいだけど、さっそく新しい友達から借りて掛けてるのから?』

「え?あ、うん。そんなところ、かな。寮に公衆電話もあったんだけど、さっきそっちで掛けたら繋げれなくて。」

『あららら?そうだったの、ごめんね比路。』



プラマイゼロ効果

『でもよかったわね。さっそく親切で優しい友達と出会えて。あとでちゃんとお礼言うのよ。』

「う、うん。」

そんな比路ママのお言葉効果で。日暮寮長に警戒していた気持ちがほんの少し。ほんの少しだけ緩和されたのか。

(優しい、か。)

と、考え直す。
けど、ついさっき言われた言葉を直ぐに思いだし、

(でもさっき面倒くさい言われたからな・・・。)

まだ引きずっていたようで、

『比路。お父さんが比路とお話したいって言ってるけど代わる?』

「え、やだ。お父さん絶対話長くするし、しつこいし、うるさいもん。借りた携帯電話だから、そろそろ切らないと。またね。」

結局、日暮寮長の印象はあんまり変わらないのでした。



言われたとおりに

比路ママと通話を終えた比路は借りた携帯電話を返しに、寮長室へと向かう。

「寮長、携帯電話を返しにー・・・。」

コンコンと、ノックを二回。
すると日暮寮長がドアを開けてくれたが。

「だから様付けろって。どいつもこいつも平然にスルーしやがって。」

「・・・・・・。」

お約束のようなお決まりの言葉。
比路も日暮寮長のことを様付けで呼びたくないようで。言われたことに、言い直す言葉も返す言葉も失くす。

「で?もういいのか。」

「おかげさまで。」

「そうかい。そりゃよかったな。」

けど、

「ありがとう、ございました。・・・携帯電話貸してくれて。」

そこは比路ママに言われたとおりに。
お礼をきちんと伝えてから、借りた携帯電話を返した。



比路と日暮寮長 4

「・・・どう、いたしまして。」

が。

「ふーん。礼はちゃんと言える子だったのな。」

「は?な、なんですか?その言い方。」

「すっげぇツンツンしてたから、てっきりそういうキャラかと思った。」

「貸していただいたんですから、お礼ぐらいちゃんと言いますし言えますよ。」

茶化されたのか。
冷やかされたのか。

「なんだ、違うのか。それはそれでまたつまらない話だな。」

「はぁッ!?つまらないってなんですか?人をなんだと思ってたんですか!?」

どちらでも大差はないが。
比路の中で日暮寮長に対する印象は、やはりあんまり変わらなかった・・・。



日の暮れ

「もうじき学習時間始まっから、それまでには部屋に戻っておけよ?点呼の時いなかったら寮則に基づき容赦なく罰するからな。」

「分かってます。言われなくてもちゃんと戻ります。」

そうして日暮寮長と別れた後、ふと階段の大きな窓から夜空を見上げた比路。

「・・・あ。」

今見上げてるものは、自分の家で見るのと同じもの。
なのにどうしてだろう?
それがまた違う景色のように感じて、また彼の心に不思議な感情を宿らす。

「・・・・・・。」

そんな思いにさえ「どうして?」と、疑問を浮かばせてしまう。
このまま呑まれそうなこの気持ち。

「・・・よし!」

でも飲まれないように、と。
ぐっと強く気を引き締めた彼は、少しだけ足を速めて自分の部屋へと戻ったのでした。
後ろを絶対に振り向かないように・・・。



青ノ葉 第12話をお読みいただきありがとうございます!

第5話から続いていたこの一日
ようやく12話にて終わりました
長くなりそう、どうしよう・・・の不安感から始まり
思ったより短かかった安心感で締めれた5〜12話
この一日が無事、終えて良かったと本気で思いました


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