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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#12 長い一日のおわり(1/2)
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ワンモア罰ゲーム

「はぁ。結局、司にパシられた・・・。」

寮の食堂にて晩御飯を食べ終えてから自分たちの寮部屋、423号室へ戻ってきた司と比路だったが、

『何かジュース買ってきて。もちヒロの奢りで。』

『それ。僕(前回)の罰ゲームと被ってない?』

『先にルール違反した人が文句言わない!』

と。もう一度、罰ゲームを。勝者であった司に命じられてしまい、終始渋々と従う敗者の比路。

「えっと、あったあった。」

向かった先は学生寮の一階ロビー。
自販機にて司の好きな飲み物、グレープフルーツの炭酸飲料水の缶ジュースと、自分用の冷たいお茶をついでに購入。
そしてパシリという名のおつかいを速やかに終わらせ、部屋へと戻って行く。



便利すぎな拒否機能

その時、

「あ・・・。」

同じロビーに置かれていた昔ながらの公衆電話に気付く。

(そういえば今日来てたのかな?昨日もアレから家に連絡してなかったし、しておいた方がいいよね。いちお。)

ちなみに比路は自分専用の携帯電話は持っておらず、常に司といたから今までもあまり必要性を感じてなかった派。
あれからのそれからっというわけで、ちょうどいいので家の人と連絡を取ろうと。
お財布に入れていたテレホンカードを使い、実家に電話を掛けた。
がー・・・。

『公衆電話からの電話は、お受けできません。』

公衆電話からの電話を拒否られてしまう。

「あ、あれ・・・?」

なので次は比路ママの携帯電話に掛けてみる。
けれど、

『公衆電話からの電話は、お受けできません。』

と。
こちらも同じく公衆電話からの電話を拒否らてしまった。

「えー・・・っ。」

悪質や悪戯、迷惑電話の防止として非通知や公衆電話など拒否設定ができるセキュリティ機能。
そんな便利な高機能は携帯電話を持ってない息子からの連絡も無残に拒否り、家に連絡を入れる術を閉ざす。



公衆電話前にて

けど部屋に戻って司や稚空に借りれば大丈夫。二人の番号なら両親と連絡取ることができるから、全ての術がなくなったわけではない。

(家に電話してたー・・・なんて、あんまり知られたくないな。アッキーにはもちろん、司にも。)

なのにそれが格好悪く思えたのか、恥ずかしく思えたのか。
意地る気持ちが比路を悩ませて「どうしよう」と重たい息を吐かせた。
その時、

「おい、何してんだ?んなとこで。」

「!」

いきなり声を掛けられビクッと驚くと共に竦む体。
振り向くとそこには、

「ん、あぁ。誰かと思えば峰岸、だったか。」

なんと日暮寮長が。

「・・・・・・・・・。」



比路と日暮寮長

学生寮の一階ロビー、公衆電話前にて。
自分の仕事を終えて戻ってきた日暮寮長と遭遇した比路。

(この人。もう人の名前、覚えてたんだ・・・。)

けど彼を見る目は、先に手にした情報が先入観を働かせ、どこか警戒していた。

「な。なんでもないです、から。」

「なんでもなかったら、そんな息吐かないだろ。そこの電話でも壊れてたのか?」

「いえ、壊れてないですよ。ちゃんと使えましたから。いちお。」

なのでなるべく関わらないように。
比路は日暮寮長を避けた態度をとる。

「そうか。なら、そこで何してたんだ?」

「だから、なんでもないですってば。」

「だから、なんでもなかったらな。あんなクソでかい溜め息吐かないだろって。」

「そんなに大きく吐いた記憶ないんですけど・・・。」



比路と日暮寮長 2

(なんなの?この人・・・。)

『なんでもない』と、いくら答えても訊いてくる日暮寮長に、さすがの比路もいい加減しつこく感じ、

「貴方には関係ないことですから。」

と。
視線を逸らして、言葉を強くして放つ。
意地でも、それ以上は立ち入れさせないつもりのようだ。

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

それを聞いた日暮寮長。
少しばかりの間を置いて、彼も「はぁ・・・」と溜め息を吐いた。

「たくっ。面倒くせぇ野郎だな。」

「なッ!?め、面倒!?」



比路と日暮寮長 3

そして日暮寮長は自分の携帯電話を取り出してポチポチとロックを外し、

「ほらっ。」

「わっ!・・・と。」

比路の手に放り渡す。

「え???」

日暮寮長の携帯電話。
それは最新型のスマートフォンではなく、従来からある折り畳み式のガラパゴスケータイ。少し懐かしさを感じる真っ黒な携帯機種だった。

「使い終わったらちゃんと返せよ。じゃあな。」

「え?え?え???」

自分の携帯電話を貸した比路に貸した彼は、大きな欠伸を一つしながら、そのまま自分の寮長室へ帰って行く。
そんな日暮寮長に返す言葉が出なかった比路は受け取った携帯電話を見つめ、

「・・・僕って面倒なのかな?」

言われた言葉に対して、どよんっと少しばかり落ち込むのでした。



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