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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#83 チグハグな2つ夜(2/3)
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ご機嫌ナナメのつかポン

久野と鬼頭で、そんなことがあった一方。
久野や小町と別れた後、静かに自室へ帰ってきた比路。

「・・・ただいま。」

出掛ける前。着替える為に一旦、部屋に戻ってきた時は司の姿はなかった。
けど今は帰って来ているようで、部屋の中から彼の気配が感じた。

「・・・・・・。」

でも不貞腐れた機嫌は直ってないのか。
ウリ坊の抱きぐるみを抱いて、自分のベッドの段で寝転んで黙々とゲームをしていた。
そんな司に声を掛けた比路だったが、

「司。お土産に司の好きなドーナッツ買って来たから。よかったらー・・・「要らない。」

案の定で冷たくあしらわれてしまった。



重くて苦しい険悪な雰囲気

漂う空気も、どんよりしすぎていて正直ちょっと辛い。
そんな時に稚空が梅ちゃんと一緒に晩ご飯を食べにと、いつものように2人を誘いに、ノックもしないでやって来た。
すると司は、

「待って待って。これ倒してから行く。」

その時だけ何事もなかったかのように。
ベッドから降りてきて、ゲームを終わらせてから稚空たちの元に向かう。
それを見ていた比路は動けなくなって、

「あれ?ひろピー、どうしたの?」

「あ・・・、えっと。」

「ヒロ。放課後に克兄ちゃんと街に出掛けて、そのままご飯食べてきたから要らないってさ。」

「え???」

そのまま司にハブられて、結局3人と一緒に行かなかったのだった。

「行こ行こ、アッキーも梅ちゃんも。ヒロなんてほっといて。」

「ちょっとちょっと、どういうことぉ!?」

「・・・・・・。」

だから学習時間までの自由時間も別々で。
司たちは遊戯室で遊んでいるようだったが、そこにまた比路が欠けてしまう。
この異常を察した稚空が忘れ物を取りに戻る偽りを装って、比路の様子を見にきたが「大丈夫、大丈夫」と。みんなまで巻き込むのだけは避けた。



時間はいつだって一定で平等

時間はいつだって平等で動きも一定のはずなのに、なんでこんな時に限って、とっても遅く感じるのだろう。
それを強く思うぐらい、やっとのことで就寝時間を迎えた。
比路が買ってきたドーナッツの袋は、司の机の上のまま。
開けられた後もなければ、そこに置いてから触られた気配が一度もなかった。

「・・・・・・・・・。」

これ以上、今の司には何も出来ない。
何かすればするほど逆効果になってしまうから。
今はただただ彼の機嫌が少しでも直ってくれるのを待つしかなかった。

「♪」

就寝時間後も消灯された室内で、いつものように。
司は自分のベッドの段で、さっき中断させたゲームの続きを遊んでいた。
なるべく夜はイヤホンを付けているはずだが、音量バランスを強くしているのか。下の段にいる比路まで、やたら漏れてるように感じる。
だからそれを利用して。

「ごめんね、司。・・・・・・もういいよって、また言わせちゃって。」

こんな日を、このまま終わるのが嫌だったから。
そっと上を見て謝ってから、ごろっと壁に向かって寝返り無理矢理にでも寝ようとした。



抱き枕の刑

そんな時だった。

「え?「駄目。今、こっち見んな。」

上の段から降りてきた司が、比路が寝ている下の段のベットに、やって来たのだ。
突然だったから驚いて振り向こうとしたが、頬に触れた司の指にあっちを向かされ、結局、彼を見ることができなかった。
最近は暑かったから、あまり2人で一緒に寝ることがなかったけど、久しぶりでも身体は覚えていて。自然に空いて作られた司専用スペースに、寝転がった司がすっぽりと収まる。

「このままヒロ、抱き枕の刑ね。」

「え。あ・・・。う、うん?」

そしてそのまま比路を後ろから。
さっきのウリ坊の抱きぐるみ代わりにさせた。

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

久しぶりに感じる互いの体温。
昼間が暑かったせいで夜も暑いままなのに、離すことも離れることもなかった。



意外とたまるカキ氷、消化は早いけど

それから間もなくして、グーっと鳴った比路のお腹。
ハブけにされた後、食堂でご飯食べに行ってないのか。
そのあともグー、グーと空腹を訴えていて、司の耳にも届いていた。

「克兄ちゃんと街でご飯、食べてなかったの?・・・あんな時間に帰ってきておいて。」

「ぁ・・・う・・・ん。カキ氷は、食べた。」

「は?・・・じゃあ俺らがご飯食べに行ってる間、あとでもいいけど。ちゃんと食堂で晩ご飯食べたの?」

「・・・・・・・・・。」

「ダメじゃん、それ。カキ氷なんてご飯に入らない上、溶けたら水だよ?消化だってきっと早いって。」

比路があれから何も食べてないと分かった途端、体を起こした司は、そのまま自分の机へ。
置いてあったドーナッツの袋にやっと触れて、持ったまま再び戻ってくる。

「そんなにお腹空かせてるなら、ほら。これ食べなよ。また寝るに寝られなくなるよ。」

「・・・ぁ。」

そしてやっと顔を合わせた比路に、それを食べさせてようとした。



司の為に買ってきたモノだから

でもそれは司の為に買ってきたモノ。
ここでそれを受け取るのは違う。そんなの駄目。
何の為に買ってきたのか、意味を失ってしまう。
だから比路は、頑なに首を横に振って嫌がった。

「もういいよヒロ。許したげるから食べなって。逆に俺が気になって寝れなくなるから。」

「・・・・・・っ。」

そんな彼を見兼ねた司は、

「・・・ったく。仕方ないな。」

ゴソゴソと開けた袋の中を覗く。

「お、オルチョコセット♪」

そして入ってた2つのドーナッツを。
どっちもそれぞれ一口、ちょっと悩んで二口目を齧ってモグモグ。飲み込んでから比路に渡す。

「ん・・・っ、ふぅ。はい、これでいいでしょ?」



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