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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#83 チグハグな2つ夜(1/3)
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おかえりなさい

林間学校による準備の買い出しが終わり、無事に帰寮したその日のこと。

「ただいー・・・、あ。よかった冥、ちょうど部屋に戻っててくれて。はい、これ。冥の分も入ってるから。いちお渡されたリスト通りのモノ買ったけど、抜けてないか確定して。」

「ん・・・、ありがと。ご苦労様。」

久野は自室に戻ると、鬼頭もちょうど部屋に帰ってきたので、買ってきてと頼まれた品物を本人に確認させる。
すると何か問題あったのか。

「あれ?」

「え?」

妙な声を上げて自分が書いたリストと見比べた結果、買い忘れたモノがあったことに気付く。

「うそ!?俺、何か抜かしてた!?」

「いや。俺が書き落としてただけ。」



リストから抜け落ちたモノ

「・・・まあ、なくても支障ないモノだから別に平気。持っていくプロテイン、紙パックのにして嵩張る荷物、軽減させたかっただけだから。」

「そうだったんだー・・・。ごめん冥、気が利かなくて。さすがにプロテイン系のドリンクは、蓮さんの方でも売ってなくて・・・。朝イチでコンビニへ買いに行くっていうのも、青ノ葉からじゃ1番近くても距離あるし、出発時間だって朝早いし・・・。」

とはいえ、それが起きた原因は鬼頭の書き忘れ。
でも久野は自分を責めるように申し訳なく謝った。

「だからいいって。こっちは支障ないって言ったんだから、克也がそこまで気にすんな。なくても問題ないって。」

しかし鬼頭も一緒に来てくれていたら、起きなかったかもしれない出来事。
未然に防ぐことが出来たかもしれないのに、過ぎた今では、もう取り返しが付かない。
だから思わず、

「それならやっぱり冥も一緒に来るべきだったんだよ。変に遠慮しないで。」

と。文句をこぼしてしまう。



アイツこそがKY

けど鬼頭は別に遠慮したわけじゃないと。言われてから改めて訂正したが、それでも久野が少し納得出来てない様子。

「・・・もういいだろ、俺のことは。」

「けど・・・。」

なので無理矢理にでも話題を変更。
いつまでも過ぎた話を。あれこれ、たらればを言ったって仕方ないこと。
だからもう触れさえないようにする。

「で?どうだった。ー・・・2人で出掛けられて。楽しかった?」

「楽しかったよ、普通に。豊先輩もいたから、比路と2人じゃなくて3人になったけど。」

「は?」

そして今日あったことを。
プラスの方向へ切り替えたはずだったが、小町もいたと聞いて怖い顔をする。

「・・・アイツこそ空気読めてないだろ。」



鬼頭と小町の関係

そんな鬼頭を見て思い出す、彼と小町の関係。

「冥、いくら豊先輩苦手だからって、そんな言い方・・・。」

「苦手じゃない、嫌いなだけだ。一緒にするな。」

なにせこの2人、全くもって仲良くないからだ。
寮の食堂等で会ったのが偶然だったとしても、一切喋らないどころか顔も合わせないし見向きもしない。
小町はそれはそれで、そこに気に入る要素があるようなので、ポジティブに捉えている。
でも鬼頭にとっては、そういうとこも毛嫌っていて、大迷惑な話なので好感度が上がるわけがないのだ。
けど今回は、そのおかげもあってか。

「・・・やっぱ俺も行くべきだったか。」

久野との買い出しに行かなかったことを、少しだけ後悔し、変えたはずの話題まで戻ってきてしまったのだった。

「うん、そうだよ。冥にも来てほしかったから、俺だって誘ったわけだし。」



全然呼んでくれないから

久野が鬼頭にも来てほしかった理由。
それは同学年だけで揃って行う前日準備というイベントは、青ノ葉学園では修学旅行と林間学校。たったその2回しかないからだ。
なのに鬼頭は、そんな貴重な機会を不意にしてしまうから。
同級生としても、ルームメイトとしても、友達としても。
ここまで親しんできた仲だからこそ、そんな行動をとった彼が気になる。

「それにー・・・。」

「それに?」

そしてずっと不可解だった鬼頭の言動。

「比路のこと。冥に、きちんと識ってもらいたかったから。」

「は?もう初対面じゃないし、今までも何回か顔合わせてー・・・。」

「でも比路の名前。全然、呼んでくれてないから。」

久野から見て自分と近い関係の人間ほど、彼はその人の名前を呼ばない傾向があることを指摘する。



嫌いだから呼ばない

「豊先輩や蓮さんにだってそう。『アイツ』や『あの人』ばっかり。」

「・・・・・・。」

鬼頭はそれを言われるとは思わなかったのか。
図星の証を示すように、その瞬間だけ返す言葉を失う。
でもそれには彼なりの訳がある。

「さっきも言っただろ。前者は嫌いだから。後者は・・・肩書きでなら、ちゃんと呼んでる時あるから。」

それはとっても簡単な話。
好いてないからこそ、極力呼びたくないだけ。
ただそれだけだ。
そうたったそれだけのマイナス的な理由。
久野もなんとなく察していた。ー・・・だからこそ。

「それって比路・・・・・・、も?」

そこに比路も値してる可能性があるんじゃないかと、不安そうに申す。



チグハグな1つ目の夜

その途端、

「・・・・・・。」

「冥?ちょっとどこ行くの!?」

何も返答しないまま、機嫌を悪くしたのか。

「トイレ・・・・・・。」

「え?あ、そう・・・。何も話し中に黙って行こうとしなくても。」

「あとそれから、そういう話。されるのも嫌いだから。・・・覚えておいてくれ。」

「・・・ぁ。」

鬼頭はそう言葉を残して部屋から出て行く。
だけどトイレと言ってた割には帰りが遅く、学習時間が始まる寸前まで、いつまでもいつまでも戻ってくる気配がなかった。

「・・・・・・・・・。」



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