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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#82 前日準備、買い出しランデブー(4/4)
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宇治金時はどこ行っても見た目が豪華

「「「いただきます。」」」

ともあれやっと注文した品が、全員分揃って手元に届いたのだ。
さっそく仲良く食べ始めた3人。
その間も色々とお喋りに花を咲かすが、比路は横隣の宇治金時のカキ氷と自分のカキ氷を、ついつい見比べてしまう。

「宇治金時ってカキ氷の中でも、なんかトップレベルな見た目してるよね。」

「そう?普通に、こんなモノじゃ?」

「だって抹茶のシロップ以外にも小倉餡や白玉が普通にトッピングされてるから、ちょっと豪華に見えて羨ましい。果物味のカキ氷には白玉なんて付かないし、トッピングを希望するためには餡子も含めて別料金掛かるし。」

「あー、言われてみれば。白玉は付いてこない場合もあるけど、小倉餡は絶対いるね。」

それは隣の芝生は青い現象でもあるのか。
ホンのちょっとの量でも『有る』と『無い』では、見た目の印象が大きく違わせた。

「比路は白玉食べれたっけ?よかったら食べてみる?ここなら抹茶もかかってないのあるからー・・・はい、あーん。」

「ん・・・っ!モチモチしてて美味しい。ありがとう克也。お返しに葡萄味どうぞ♪克也がさっき予想した通り、ちゃんと葡萄の味してて果肉も入ってて凄い美味しい。」

「あぁ、ホントだ。すごい葡萄だ。カキ氷って一般的には色が違うだけで味は一緒なのに、これは本当に葡萄のカキ氷してて美味しいね。」

そしてそんな話から流れで、自然に食べ合いっこする比路と久野。
それを真ん前で見てた小町はボソリと一言。

「かっつぁんと峰ぎっちゃんはホントに仲良いねー。もういっその事、付き合ったら?」

「は!?付き・・・ッ!?!?」

茶々を思わず入れるほど、冷やかしてきた。



それは恋バナ?恋バナなのか?

「あの豊先輩?なんでいきなりそんな話に?」

「なんでって言われてもなー。今の見せつけられたら、誰もがそう思うって。おとなしく2人が付き合ってくれた方が、周りの人間も色々とスッキリするんじゃない?知らんけど。」

「ー・・・だから比路とは、そういうのじゃないですから。蓮さんもそうですけど、なんでそっち方向に話持ってくんだろう。」

「2人が付き合うことになったら、かっつぁんどうなるんだろうね?やっぱ従順に応じて忠実に尽くすんかね?イメージ通りに。」

それは恋バナ?恋バナなのか。
ケラケラと話す小町に、ちょっと嫌がる素振りを見せる久野。
けどこの際だから小町としては、ハッキリさせておきたいのか。

「ねえ。峰ぎっちゃんから見て、かっつぁんどう?」

「ふぇ!?ど、どうって?」

「どうは、どうだって。峰ぎっちゃん、かっつぁんのこと嫌い?好き?」

「ちょっと!豊先輩!比路に変なこと訊かないで下さい!」

標的を久野から比路に変えて、2人の関係に親展が生まれるか尋ねて誘い出す。



赤くなって白くもなって

急に話を振られてビックリした比路だったが、その答えなら決まっていた。

「克也のことですよね?普通にー・・・好きですよ。」

「ー・・・ッ!」

「克也の前で言うのも恥ずかしいんだけど、その、お兄ちゃん・・・みたいで。」

「お、お兄ちゃん???」

その一瞬、久野は顔が赤くなるほど言葉を失い、小町はガッツポーズを手に作ったが、続いた比路の発言に思わず困惑。

「僕1人っ子だから。お兄ちゃんいてほしかった時期があって。それでその、道場通ってた頃から克也のこと、お兄ちゃんって思ってて。年上なんだから、それは当たり前なんだけど。でもきっとそれは司も一緒だと思う。克也のこと克兄ちゃんって今も呼んでるし。」

「お兄ちゃん・・・ねえ。これはまた脈があるのかないのか。」

「もういいでしょ?悪ふざけも大概にして下さい豊先輩。」

もっと続いた話を聞いて、ちょっとテンションダウン。
よって久野の表情は落ち着き、小町も白けていく・・・。
カキ氷のように冷めた空気が、なんとも言えない感じで生まれてしまう。



何かが違う両思い

「んー、どちらにせよ峰ぎっちゃん、ちょいKY。オレは、そういう答えを求めたわけじゃないんだよね。」

「えぇ!?なんかご、ごめんなさい?急に変なこと言って・・・。」

「そんなことないよ。比路も謝る必要ないし、豊先輩も比路に謝らせないで下さい。」

小町も期待はずれにガッカリしたのか。
せっかく作ったガッツポーズも、何処かへやってしまう。
そして比路に空気読めてないと不満を申したが、久野はすかさずフォロー。

「それにそれは俺も同じー・・・だから。」

「え?」

「俺も1人っ子だから。比路や司みたいな弟ほしいって思った時期あったから。そんな昔から馴染んでる2人だけあって、青ノ葉で再会した時。他人行儀されてた時は気になって、調子狂ったというか寂しかったというか。」

比路が想う気持ちは、自分も一緒だからと。
受け止めた上で伝えた。

「だから俺、普通に嬉しいよ。比路が俺をお兄ちゃんみたいって言ってくれたこと。俺も比路のこと弟のように思ってて、その、好・・・。嫌いには絶対になれないから。」

「うん。それは僕も一緒。克也を嫌いになんてなれないよ。」

「んー、そういうとこは両思いなのね?・・・なんて言ったらいいのやら。」

果たして2人が言う好きは確かな好きだけど、リスペクトのように名を付けて分けるとしたら、どこの類いに値するのだろうか。



悪ふざけしまくりの彼でも

「そんな俺らの話よりも!」

終着点が見つからないまま、さっさと次の話題に変えたかった久野。
ちょっと大きな声をあげてまで、全く違う方向の話をし始める。

「豊先輩の進路って結局、進学と就職。どっちにしたんですか?」

学校の先輩は人生の先輩としても、今1番身近な存在だからか。
突然、小町の進路先を尋ねた。

「オレは簡単よ、実家の後を継ぐ予定でいるから。一流大までは目指してないけど、せめて二流大は私学でもいいから出ておきたいんで進学希望。」

「え、意外・・・!豊先輩もちゃんと考えていたんですね。」

「そりゃ高3の夏ですから。いちお推薦枠貰えて余裕はあるけど、対策はバッチリしておきたいね。あと進学校だから、他の3年もだいたいは進学希望じゃない?」

その考えは、さすが高校3年生。
悪ふざけしまくってる彼でも、ちゃんと自分の将来を見つめて考えていた。が、あまりにもしっかりしていたせいで聞いてビックリ。

「ところでかっつぁん。峰ぎっちゃんもだけど、オレとは食べ比べっこしてくれないの?」

「しませんよ。俺のと豊先輩の、ほとんど同じじゃないですか。」

「僕も抹茶とか餡子は、そこまで得意じゃないので・・・。あとカキ氷も結構食べちゃってたから、言うの遅いです。」

さっきの恋バナ?から突然変わった話題。
方向が全然違って真逆すぎて、真面目オブ真面目だったから。
その温度差で風邪を引いてしまいそうだった。



バス停近くのドーナッツ屋

そうして食べ終えて一息ついたら、ごちそうさま。
お会計して店を出て、今度こそバス停を目指す。
けどまたその途中で、

「あ。帰る前にバス停付近にあったドーナッツ屋さん寄ってもいい?」

「いいけど、比路。さっきカキ氷食べたばかりなのに、もうドーナッツ?そんなにお腹空いてたの?」

チェーン店のドーナッツ屋があったことを思い出し、寄りたい言い出す比路。
でもそれは自分の為ではあるけど、自分の為じゃない。

「ううん。お腹はもう大丈夫なんだけど、司にお土産買って帰りたくて。」

ずっと心残りだった司が頭から離れなくて、だから彼の為に何かを買ってから帰りたかったそうだ。

「司に?・・・もしかして司と何かあったの?」

「ー・・・うん。ちょっと今日、司に悪いことしちゃったから、お詫びしたくて。」

そんな彼が気になる久野。

「それでずっと、あんまり元気なかったんだ・・・。大丈夫?それ。」

「うーん、なんていうかタイミングの問題だったのかも。ちょっと買ってくるから、克也たちは先にバス停向かってて。」

でも比路は、あまり多く語らず、自分1人だけで向かってしまう。
そのせいで「あ・・・。」と言葉にして見送る久野の目は、少し寂しそうな色をしていた。



根強く残る過去のせい?

もちろんそれは小町も隣で見ていた。

「大丈夫?峰ぎっちゃん。気になるのならオレはいいから、かっつぁんついてってあげなよ。バスもまだ時間あるし。」

「あ、いや。・・・大丈夫です。」

だからそっとその背中を押したが、首を横に振った久野は結局、見送っただけで向かわなかった。

「なんか昔にも似たようなことがありましたから。」

「昔?あぁ、峰ぎっちゃんと通ってた道場の方でか。」

「はい。その道場で俺と比路で先に2人で遊んでいたら、それを後から来た司が見て、比路を置いて先に帰っちゃったことがあって。」

何故なら、その一連の動きは過去にも似たようなことがあったから。
懐かしい記憶を思い出して。思い出してしまったから動けなかったのだ。

「あの時はホント、俺もよく考えてなかったから。タイミングも悪く、比路にも司にも悪いことして、ちょっとそれが俺にとってもトラウマに近くて・・・。だからあの2人の仲が裂ける真似だけは、再会した今も気をつけていたくて。」

「かっつぁん、それってー・・・。それでいて学寮戦のとき、よくあんなイジメっ子出来たね。」

「それはそれ、これはこれだから。あとあれはイジメじゃないです・・・。」

それが今も根強く心に残っていたからー・・・。

「2人が喧嘩までしてないといいんだけど。」

それから直ぐのこと。比路がドーナッツをテイクアウトして無事に戻ってきたため、バス停で再び合流する3人。
するとちょうどいいタイミングでバスがやって来て、車内は少し混んでいたが、商店街から青ノ葉学園の最寄り駅まで無事に届けて帰寮させてくれた。
これにて久野による前日準備の買い出しも無事終了。
3人もこれで解散となり、それぞれ自分の部屋へと帰って行ったのでした。



青ノ葉 第82話をお読みいただきありがとうございました!

前回で『克比はいいぞー』と言ってた合間に
青ノ葉はついに300ページ達成しました
おめでたいね


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