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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#82 前日準備、買い出しランデブー(3/4)
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買い出しメインは2年生だけ

青ノ葉学園の最寄り駅から商店街の方面まで運行するバスの車内は、ほどよく冷房が効いてて涼しかった。
乗客も青ノ葉生はこの3人しかいない上、まだ帰宅ラッシュ前なので、ほぼガラ空き状態。おかげで比路、久野、小町の順で横並びに座ることが出来た。

「そういやぁ、かっつぁん。メイちゃん誘わなかったん?」

「いえ。昨日の夜、冥にも今日のこと声掛けましたよ。でもお金と一緒にリストを渡されて、自主トレに集中したいからって断られて・・・。」

「なんて声掛けたん?」

「え?普通に。比路もいることを伝えた上で、冥も一緒に来ない?って感じで。」

そして目的地まで途中停車もなく、あまり信号にも捕まらずに済んだので約20分程で到着。
少し長かったけどお喋りしながらだったから、あっという間な時間だった。

「あー、なるほど。そんな誘い方したら、メイちゃん絶対来ないって。」

「え。だって先に比路を誘っていたから、それを言っておかないと。どのみち冥を後でビックリさせることになって悪いじゃないですか。もちろん冥も行くってなったら比路にも、ちゃんとメッセージ送るつもりでいましたし。」

「メイちゃん、気遣い屋さんだねぇ。オレなら今みたいに敢えて行くを選ぶけどなー。」



大人びた小町

パタパタパタ。
パタパタパタパタ。
小町はバスに乗ってた時もそうだったが降りてからも、自前の扇子を自分に仰いで、少しでも涼しい風を得ようとしている。

「あ゛ー!暑いー!かっつぁんも何でこんな暑い時に買い出し日チョイスしたかね!もうちょい気温高くない日だってあったんに。」

「生徒会の仕事が忙しくて、今日ぐらいしか行ける日が作れなかったからです。」

それ以外にも初めて見る私服姿も、魅力的で彼らしく似合っていた。
高校3年生の男子って、ここまで大人っぽくお洒落になれるんだと関心を覚える。

「なんか豊部長、今日はまた一段とお洒落ですね。その扇子とか、着てる服も含めて素敵な感じがします。」

「お♪峰ぎっちゃん着目点いいね。男だって今や化粧をする時代よ。ぜひぜひオレを参照し、端麗な男の容姿を学んでくれたまえ。」

なので思わず褒めた比路だったが、

「まあオレからしたら?センスがねえ奴は扇子持つなって感じだけどな。」

調子に乗った小町の発言のせいで、全てが台無しに。

「なら先輩も持っちゃダメですね。この扇子は俺が預かりますから、寮に帰るまで没収しておきますね。」

「ちょちょちょ!?かっつぁん、今の駄洒落はジョークジョーク。場を和ませようとしただけだって!」

久野もここぞとばかりに、さっきのサプライズに対して仕返しを。
小町から扇子を無理矢理にでもブン取って没収し、本当に寮に帰るまで返さなかったのだった。



経験者からのアドバイス

「林間学校っと言っても、夏合宿で使うクラブハウスの掃除と点検がメインだから。軍手とか雑巾は、しおりに書かれてる枚数より少し多めのが心強いぞ。あと虫除けも買っとかんと、蚊に喰われたら痒くて死ねる。」

「なるほど。」

そんなこんなでバス停から歩いて到着したホームセンターにて、林間学校に向けて必要な用具を揃えていく。

「熱中症対策として塩飴も念のために。あとコレコレ。しおりにないけどボディーペーパーも絶対必須。去年は湿気強い上、夜もクソ暑くて最悪でさー。これがあるだけで全然違うからガチでオススメ。」

「そうなんですか?さすが経験者、言うこと違いますね。どれがいいとかあります?」

「オレが今使ってんので良ければコレ。メンソール成分あるから使った瞬間から気分爽快、めっちゃクールタイプだから一気に涼しくなれるよ。けどあんまり擦ると肌がヒリつくから注意ね。」

小町はサプライズ追加だったが、去年同じことを経験している為か。
彼から出る意見は、どれも参考に出来るモノばかり。

「ね?オレいて正解だったっしょ?サプライズだったオレが完全にメインになってて、メインだった峰ぎっちゃんがオマケ状態になってるし。」

「豊先輩、その言い方よして下さい。俺に付き合ってくれた比路に悪い上、失礼です。」

おかげでサクサクと買い物を済ませることが出来た。



4人用テーブル席を3人で

これにて本題だった前日準備の買い出しは終了。
用も終わったので、さっさと寮に帰ろうとしたが、久野が小町から扇子を没収してしまったせいか。買い物中も「暑い」「暑い」をしつこく繰り返していた。
その結果、バス停に向かう帰り道で、ちょうどいい感じに甘味処の茶屋があったので、そこで少し涼んでから帰ることに。

「寮に帰る頃には、食堂が空いてる時間なのに・・・。」

「まあまあ。せっかく街まで来たんだから、ちょっとくらい寄り道したっていいじゃない。そんなにバカバカ食わなきゃ夕食にだって、そこまで影響しないだろうしさ。」

店内に入ると4人用のテーブル席へと案内された彼ら。
でもいるには3人だから、どうやって別れてようか。
ちょっと悩みそうな感じもあったが、久野と小町は迷いなく対面になって座った。

「かっつぁん。買った荷物、こっちに置いたげるから貸し。そしたら峰ぎっちゃん、そっち座れるっしょ。」

「いいですけど、買った物に中には冥の分もありますから。絶対に置き忘れないで下さいね・・・っと。比路、俺の隣に座れるからおいで。」

「う、うん。」

そのせいで一瞬出遅れた比路だったが、2人共ちゃんと比路のことも考えていたのか。一致した動きも迷いなく、おかげで4人用のテーブル席に3人で仲良く着く。



初めては誰だって緊張の連続

しかし比路は硬直気味。気遅れでもしてるのか、茶屋に入ってから少しぎこちなく、あまり落ち着けてない様子。

「大丈夫?比路。ひょっとして緊張してる?」

「あ・・・うん。ちょっとだけ。こういうお店、入ったことないから。なんて言うか、その・・・っ。」

「大丈夫だって峰ぎっちゃん。かっつぁんも最初は緊張しまくってて、今の峰ぎっちゃんと同じ状態だったから。ある意味、誰もが通る道でもあるからさ。初めてが不安で緊張する言うなら、かっつぁんにウンと優しくしてもらいな。」

「なんか気になる言い方しますね、豊先輩。」

気づいた久野や小町は、彼らなりに施す。
そんな比路に対して、2人は特別なことは何もない感じ。平然と場に溶け込めている。

「でも買い出しに付き合ってくれたお礼に、比路の分は俺が奢るから。好きなモノとか食べたいモノとか頼んでいいよ。いちお食べ過ぎだけは注意で。」

学校の先輩は人生の先輩としても、今1番身近な存在と言うべきか。
たった1歳、たった2歳。
数字は小さいのに、経験値に大きな差があった。

「実家が呉服屋だからってのもあるけど、オレはこういう味のある店の方が落ち着くんだよね。逆に言えばバーガー屋とか、そっち系はあんま得意じゃない。」

「豊先輩って、意外と和テイストな人ですよね。」



小町に選ばれたのは・・・

それでもせっかく(小町の我が儘で)茶屋に寄ったのだ。
美味しいモノを食べ過ぎないように食べてから帰ろう。
御品書きと明朝体フォントで書かれたメニュー表には、ご飯物もあれば麺類もあり十分ここで食事をすることも出来るが、彼らは寮生。帰ったら晩ご飯が待っているので、今回は甘味のみで軽度に。
今が夏だけあってカキ氷が強く推されていて、味もズラーッといっぱい種類があり、それだけでも目移りしてしまう。

「すごい!カキ氷がいっぱい・・・っ。」

「ホントだ。栗とかラフランスとか杏とか、普段じゃあんまり見ない味もあって豊富だね。きっと定番味とかも、シロップ味じゃなくて本当に果物を使ったヤツが出てきそう。比路、カキ氷にする?」

「うん。葡萄もあったから、それ食べてみたい。」

「なら俺は、そうだなー・・・。俺も宇治金時のカキ氷にしようかな。豊先輩は何にします?」

なので比路も久野も、その中から自分が好きな味をチョイス。
一方で小町は御品書きと睨めっこしながら、うーんうーんっと葛藤していた。

「あんみつかー、みつ豆。あー、どうしよう。究極な2択すぎて悩むわ。」

「え。部長、それどう違うんですか?」

「みつ豆は寒天とかフルーツとかが入ってて、あんみつはそこに小豆餡がプラスされたヤツだよ、比路。で?豊先輩、さっさと決めて下さい。あと豊先輩だけなんですから。」

けど、いっぱいいっぱい考えて悩む抜いた答え。

「よしっ!決めた。すみませーん!葡萄と宇治金時のカキ氷と、冷やし抹茶ぜんざいにクリームトッピングで下さい。」

「あんみつとみつ豆の究極な2択は、どこやったんですか?」

なんと小町に選ばれたのは、それはみつ豆でもなければ、あんみつでもない第3の選択肢。冷やし抹茶ぜんざい(クリームトッピング)でした。
あんなにもすっごく葛藤していた時間は、何だったのでしょう。



久野の久は久しぶりの久でもある

注文してから数分後。
茶屋の従業員であるおばちゃんが、よいしょよいしょと3人の元へ品を運んでくる。
するとその時、そのおばちゃんは久野の顔を見て、あることを思い出したかのように気付き、

「あら?よく見たら貴方『ヒサ野』くんじゃない。」

「え?ヒサ???」

と。久野をヒサ野と呼んだ。
どうやら商店街で彷徨ってた悪漢野郎の逮捕の件で貢献し、感謝状を送られた青ノ葉学園のニュースは、街内でも話題になっている模様。
その中でも噂が久野を強く目立たせていて、それでおばちゃんも今が初対面なはずなのに久野のことを知っていたようだ。
けど『ヒサ野』くんと連呼するモノだから、呼び間違えられていることに気付いたが、ワザとじゃないだけあって指摘し辛い。

「あー・・・、いえ・・・。その節は、どうも・・・。いえ、こちらこそ・・・。」

なので久野は苦笑いで相槌しているしかなかった。が、

「あの。」

1人、黙って聞き過ごしていることが出来なかったのか。

「『ヒサ野』じゃなくて『久野(くの)』です。その・・・読み方、さっきから間違えてます・・・から。」

比路が2人の間に入ってまで、久野の読み方を正させた。



でも読み間違えちゃイヤ

するとおばちゃんは謝った上で直ぐに呼び直してくれたが、やっぱり人の名を呼び間違えていたのは気まずいのか。
テーブルの上に注文品を置いたら、そそくさと逃げて行った。

「大丈夫?かっつぁん。お話し中、静かに怒ってなかった?」

「いえ、流石に怒ってはないですよ。未だに教頭先生とかにも呼び間違えられる時あって慣れてますから。・・・まあ、間違えられても仕方ない感じの名字してますし。」

「漢字だけあってな。」

「・・・豊先輩。やっぱりこの扇子返すの寮に帰ってからにしますね。」

「もうかっつぁんは冗談が通じないな。オレは場を和ませようとしただけなのに。」

自分の名前を呼び間違えられるのは、いくら慣れていることとはいえ、少し辛かったのは確か。
それを横槍入れてまで言ってくれた時は驚いたが、久野にとって嬉しかったこと。

「ご・・・ごめんなさい。気になったから、つい言っちゃったんだけど、なんか出しゃばった感じになっちゃって・・・。」

「そんなことないよ。俺の代わりに訂正入れてくれてありがとう比路。助けられた上、俺、凄く嬉しかったよ。」

だから改めて『ありがとう』と素直に伝えた。



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