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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#82 前日準備、買い出しランデブー(1/4)
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偶然ではない朝風景

翌日ー・・・。
朝6時を迎える10分前、学生寮の食堂にて。

「おはよう克也。」

「・・・おはよう、比路。」

この時間帯で数日ぶりに揃った比路と久野の2人の姿。
いつもなら久野が先で、その後が比路。
でも今日は比路が先で、その後が久野。
また逆パターンとなった待ち合わせの朝。

「久しぶりなのに来るの早かったね比路。またアラームが鳴る前に起きちゃった?」

「ううん、今日はいつもより早く起きれるよう頑張ったんだ。」

それは過去にも、たまにあった順番の入れ替わり。
けど前回と違う点は、偶然か必然か。

「朋也から聞いたんだ。僕がこの時間に来てなかった間、克也が限界まで待っててくれてた話。僕、克也の時間を凄く勿体ないことさせてたから。だから今日は絶対、克也よりも早く来ようって決めてて。」

「後藤、その話。比路に話しちゃってたんだ・・・。」

たったそれだけだけど、とても大きな違いだった。



有ると無いの違い

それでも久野にとって比路が先にいるのは、あまり心宜しくないのか。
どこか不服そうにしている。

「前にも言ったけど俺、待つ方が好きだから。俺が勝手にしてただけのそんな話、気にしなくてよかったのに。」

「でも聞いちゃったからには、気にせずになんていられないよ。」

たった5分は、されど5分。
そこにあともう5分追加となれば短い時間でも、『ある』と『ない』では全然違ってくる話。

「そっか・・・。なら俺は、あともう5分。ここに早く来るよう心掛けるね。」

「え?!ダメダメ、そんなの!そんなに早く来たら、克也の時間が本当に勿体ないことになっちゃう!」

「でも俺、待たせる方が嫌いだから。もう二度と比路を待たせないようにしたい。」

そんな有無をめぐる言い合いは、論ずるほど反発し合うだけだが、お互いに自分から引くわけにはいかなかったー・・・ので。
またそれを偶然?いや、必然的に立ち聞いていたのか。

「だからやめろって、その不毛な意地の張り合い。特に克也はマジになんな。そのプライドは折れろ折らせろ。俺まで巻き込まれる話になってくるだろうが!」

2人よりも先に食堂にいた日暮寮長が、思わず仲裁のツッコミを入れて止めたのだった。



粋な計らい

こうして学生寮の食堂に、比路と久野と寮長の3人の姿が集まる。
今日の朝食は厚切り小倉トースト(餡は別皿)に、ゆで卵。コールスローサラダにコンスープ。
やっぱりパンの日はちょっとだけ豪華になるのか、なんと朝からデザート付きで、デラウェアの果肉入りジュレゼリーまで添えられていたのだ。

「蓮さん、これ・・・っ!」

でもそれはまるで何処かの喫茶店を連想させる献立。
無関係無関連な生徒からしたら、まずはそっちを思い浮かべる奴のが多いだろう。
けどそれを久野は見た途端、ハッとした顔で寮長を見る。

「昨日の今日だし、俺も見てたしな。まぁ・・・、俺からのメッセージっつーことで受け取ってくれ。」

何せ小倉トースト(特に餡子)は久野の好物。
ジュレゼリーのデラウェアは比路の好物。
それを2人が仲直りした暁に出してくれたのだ。

「ありがとうございます蓮さん。俺・・・、凄く嬉しいです。」

「前から某喫茶店風のモーニング食いてえって意見もあったしな。いろんな方面のリクエストを応えられて、俺も一石多鳥だったわ。」

そんな日暮寮長の粋な計らいに気づいた久野。
嬉しさのあまり、リスペクト株も爆上げ状態で凄く感動していた。



蓮さんリスペクターここに在り

この献立に、そんな意図が隠れていたとは。
久野に言われてから気付いた比路は「そういえば僕も前に好きな食べ物言わされたなぁ」と思い出す。

「・・・・・・。」

っというか、自分はすっかり忘れていた話。
なのに向こうは忘れずに覚えていて尚且つ応えてくれて、久野ほどではないが驚いていた。
なので思わずポロッと溢れた一言。

「ー・・・すごい。」

それを聞き逃さなかった久野。

「ね!蓮さんって凄いよね!」

比路の凄いに全力同意してきたが、久野の笑顔はキラッキラで100点満点越え。
『蓮さんリスペクター』は、ここに在り状態だった。

「克也も峰岸も、たかがこんなことで褒めんな褒めんな。俺がすげぇのは当たり前で、いつもの話だろ。」



牛乳ごっくん

けどこんな素敵な献立でも苦手なモノがあると、せっかくの嬉しさも半減。
ご飯の日は付かないこともあるが、パンの日は常に牛乳が付いてくるから。
比路が久野ほど喜べない理由はそこにあった。

「どうせなら、牛乳はなくていいのに・・・。」

「ほら。一口飲んだら、あとはまた飲んであげるから。頑張って、その一口は飲んで。」

けど今日は後処理班がいるから。
自分式ルールに則って残さないを決意し、牛乳パックにブッ刺したストローを咥える。

「頑張れ♪頑張れ♪」

「うぅぅぅ・・・。」

「頑張れ♪頑張れ♪」

そして一口分の牛乳がゴックンと比路の喉を通るまで久野に応援され続け、おかげでなんとか飲めたが、残りは久野任せにしてパスをした。

「頑張ってよく飲んだね、比路。偉い、偉い。」



急停止するテンション

それから朝の時間は過ぎていき、あっという間に午前中の授業が終わる。
生徒会会議で伝えられた通り。2年生は明日、林間学校の行事があり準備の為、今日は半ドンで終了。
続々と帰って行くので2年の気配が、どんどんどんどん校舎内から消えていくから、1年生と3年生しかいない摩訶不思議な空間が生まれる。
そして午後の授業も終わり、そんな中で迎えた放課後。

「ヒロヒロー!柔道部って午後練なしになったんだって!?」

「あ・・・、うん。2年生の部活参加が今日はバツだから。1・3年の部員もついでに休ませるってグループメッセージが昨日の夜、豊部長から着てて・・・。」

帰りのホームルームが終わった直後、司が比路の元へやって来る。

「この話、誰から聞いたの?司。」

「今日、キョウから聞いた!」

いつもの放課後なのに、いつもじゃない放課後。
それがテンションの元になってるのか、とっても嬉しそうに燥ぐ司。
だってスケジュールが大会時期の仕様に変わってから、柔道部は平日でも土日でも、晴れの日でも雨の日でも。朝も放課後も、ずっと活動しっぱなしだったんだ。
だけど今日はそれがようやく休みになってくれたから。
今日こそ長く遊べる!と。つい意気揚々と奮い立っていた。

「部屋に帰ったら、さっそく遊戯室で対戦しよ?対戦。ヒロもストレス解消しなきゃ。めっちゃ負かしてやるから覚悟しろよ。」

けど、

「ごめん、司。僕、この後、克也と約束・・・してるから。」

比路のその一言で、司のハイテンションは急停止する。



急降下するテンション

「え?」

「豊部長のグループメッセージ着た時。僕、スマホを部屋に置いたままにさせちゃってて。それで一緒にいた克也に見せてもらっていたら、その時に。今日の放課後、準備の買い出しに付き合ってって誘われて。僕もまだその時は何も用事なかったから、一緒に行くって約束して・・・。」

「それで昨日の夜に決まった話、俺に何も言わないで黙ってたんだ・・・。俺がキョウから教えてもらうまで・・・、ずっと。」

急停止した司のテンションは、どこまで急降下していくのだろう。
比路が断りを口にする度に、どんどんどんどん落ちていく。

「黙ってたっていうより、柔道部が休みになった話は司に関係ないから。」

「!」

「それに言っちゃうと司、また部活サボりそう・・・だったから。それは園芸部にも朋也にも迷惑かけることになるし。」

「ー・・・誰かさんのせいで、もう今日は部活行く気ゼロだけどね。」



もういいよ!

「な、なら朋也には悪いけど、司もよかったら来・・・「行かない。」

「どうして?ゲームでは確かに遊べないけど、司も一緒に街で・・・「やだ!」

さっきまであんなに燥いでいたのに、数秒前でも、それは既に過去のモノ。

「だってそれヒロと行きたいから、克兄ちゃんはヒロを誘ったんでしょ?なのに誘われてない俺が急に増えたら、俺めっちゃKYじゃん。・・・克兄ちゃんに悪いし。」

「・・・ぁ、えっと。」

拗ねてしまったのか。
怒ってしまったのか。
底辺まで機嫌が下がった司は、とても冷たい目で不貞腐れていたのだった。

「もういいよ、ヒロなんて。・・・じゃあね。」



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