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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#81 親しい仲の仲直り(4/5)
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もう避けられたくなかったから

しかしこのまままた続いたら気の毒に思えたのか。

「比路、こっちの箱と交換しよっか?高い位置の備品が、そっちの箱に集中してるみたいだから。」

「うん・・・。ありがとう克也。」

久野の案で、担当する段ボールをトレードした2人。
さっきまで黙りになるほど気まずかったくせに、『おいで』と呼ばれて素直に向かう比路。
だけど久野は、それを狙っていたのか。
交換した段ボールの前にいる比路を逃さないよう、背後に回ってまで捕まえた。

「克・・・也・・・?」

「よかった、比路がこっちに来てくれて。・・・ここで避けられたら、本当にどうしようと思ってたところだったから。」

そして柔んだ雰囲気があるうちに。

「ー・・・ごめんね、比路。前にここで鉢合わせた時、俺も情けない一面見せちゃって。」

「!」

久野が比路に、この間のことを謝ってきたのだ。



あの日の久野

「言い訳にしかならないんだけど、あの日の俺、ちょっと調子が悪くて・・・。ごめん、本当に。」

比路の直ぐ後ろにいる久野は、とってもとっても距離が近かった。
そのせいで動くとぶつかる可能性があるから。
身体に触れられてないのに身動きが出来ず、比路はこの場に留まるしかなかったが、逃げようとする思いも生まれなかった。

「いろんな事を考えていたら、自分の頭がごちゃごちゃになって・・・。自分でも整理が付けられなくて、訳が分からなくなって・・・しまって・・・。そんな自分に正直、嫌気がさしてー・・・疲れてて。」

「克也・・・。」

「今思えば多分、2人をやっかんだー・・・のかな。いつもは俺だったのに俺じゃなくなってたから、それで変に寂しくなったんだと思う。あの日、2人を見た途端、胸元あたりが凄く苦しくなったことだけは鮮明に覚えてるから。」

そしてあの日のことを語る久野は色々と訳を話してくれたが、要は自分勝手に妬いたヤキモチが原因。
いろんな因果が重なって起きたこととはいえ、そこに非は比路にも日暮寮長にもないから。
だからとても申し訳なさそうに許しを請う久野だった。



日暮寮長に対する久野の気持ち

「あの・・・、克也?」

「ん?」

久野の言い分を聞いた比路は、1つ生まれた気になる疑問。
自分をぶつけないようゆっくりと振り向き、後ろにいる久野と顔を合わせて、ここぞとばかりに単刀直入に問う。

「克也って、その・・・寮長のこと。好き、なの?」

「ッ!?」

すると久野は、その一瞬でボンっと顔が真っ赤に。
大袈裟になってまでブンブンと首を横に大きく振って、慌てて否定する。

「な、なんでそう思ったの!?」

「だってヤキモチ妬いてたってことは、寮長のこと好きだからとかじゃないの?」

「違・・・っ!あ、いや、正確に言えば違うくはないけど、違う違う!」

まさかそれを比路に訊かれる日が来るとは思わなかったのだろう。
焦って慌てて思いついた単語を口にする。

「確かに蓮さんのこと好きか嫌いかで言えば、その・・・好き・・・だけど。そこに恋愛的な感情はなくて。その、えっと・・・そう、リスペクト!俺が蓮さんが好きなのはリスペクトに近くて。」

比路が言う好きを否定して。
自分が言う好きを肯定して。
好きという言葉は一緒なのに、意味合いに誤解が生まれないよう必死で弁明した。



憧れと好きは違う

『リスペクト』。
それは尊敬してるとか、敬意を表する言葉。

「俺が・・・その・・・。蓮さんを一方的に憧れてるってだけの話、だから。」

そして明かした日暮寮長に対する久野の想い。
比路は尋ねておきながら、その答えに驚きが隠せなかった。

「え?寮長に憧れてるー・・・だからこそ、寮長が好きとかじゃないの?」

「うん、違う。憧れも好きの一種ではあるけど、あんまり一緒にされたくない・・・、かも。」

憧れと好きは全然違うと語る久野。
好きだけど好きじゃないと説明されても、比路にはよく分からなかった。

「克也の憧れが寮長・・・。え?ごめん。あの人の、どのあたりを?」

「やめて比路。俺の前で蓮さんのこと悪く言わないで。いくら比路でも怒るよ。」

久野が日暮寮長に憧れた要素さえも。



親しい仲の仲直り

けどその話、今はあまり関係ないので逸れた本題の話に戻そう。

「本当にごめんね、比路。俺のせいで変に気をまずくさせて・・・。蓮さんにも気を遣わせてしまってたし。」

「ううん、僕の方こそ・・・。あんな顔した克也、見たの初めて・・・だったから。どんな顔して克也と会ったらいいか分かんなくなって、ここ最近ずっと避けてて・・・。」

あの日のことを謝る久野と、このまま仲直りしたかったから。
久野のせいとはいえ比路も避けていたことを謝った。が、

「うん、実はずっと気になってた。朝だってずっと来てくれなかったし、会議中も全然目ぇ合わせてくれなかったし。このまま避けられ続けられたら、俺からはどうしようもなかったし。」

「ご、ごめん・・・、克也。ずっと避けてて本当にごめんなさい。」

それをずっとずっと気にしてたことを語る久野は、顔色をどんよりと染めていた。
けどこれにてお互いに謝って謝ったから、気まずかった今までに決着を。

「ううん、元は俺のせいなんだから。ー・・・いいよ、比路なら。だから俺と仲直り、しよ?」

「うん・・・っ。」

喧嘩したわけじゃない2人だったけど、ようやく仲直りした比路と久野だった。



ずっと片付ける手は止まってたので

しかしこの雰囲気は仲直りによって生まれたモノなのか。

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

いつまでも比路の後ろから退かない久野。
見つめる目は優しいのに、その瞳から逸らせなくなる比路。

「「・・・・・・・・・。」」

気まずかった頃とは、また違った沈黙が2人の間に流れていた。ー・・・ので、

「おーい。仲直りしたなら、いつまでもイチャついてないで、さっさと片付けに戻ってくんね?」

「うわああああ!?!?」

いつの間にかそんな2人の後ろから様子を見てた日暮寮長が、2人がそのまま流されぬよう水を差してきたのだった。



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