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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#80 never give up!(2/4)
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喧嘩はしてない

それから暫く時間が経って、あっという間に放課後に。
皆それぞれ自分の部活動に向かっていく中、比路は自分の席に着いたまま立とうともしない。
迎えに来たはずの恭にも「先に行ってて」と答え、一緒に向かわなかった。

「峰岸・・・、具合でも悪いのか?」

そんないつもと違う比路が気になった朋也は、今朝のこともあったから、思わず調子を伺う。

「え、具合?ー・・・は別にいつも通りだよ。特に何処か悪いとことかないし。」

体調の方は本人も言ってる通り、大丈夫なようだ。
しかし、

「そうか。どこも悪くないならいいんだ。・・・朝、いなかったから少し気になって。久野先輩も限界まで峰岸のこと待ってたっぽかったから。」

「あ・・・・・・・・・そう、だったんだ。」

久野の名前を出した途端、少し気まずそうな様子が感じ取れた。



2人喋ってる隙に

「久野先輩と喧嘩でもしたのか?」

「う・・・、ううん。大丈夫、喧嘩はしてないから。」

そしてこちらも今朝同様。司と同じように朋也からも心配されて申し訳なくなる比路。
「大丈夫」と返して、ゆっくり席を立って、ようやく部活へと向かう気になれたようだ。

「心配掛けちゃってごめん・・・、僕のことなら大丈夫だから。それより朋也こそ。」

けどそんな自分よりも気にしてほしいことがひとつ。

「ー・・・司が、もうどっか行っちゃったみたいだけど大丈夫?」

「あ!」

朋也が比路に気を取られている隙に、司は物音も足音も立てないように、そそくさと。朋也に追っ掛けられないうちに教室から抜け出していたのだった。

「・・・・・・すまん、峰岸。」

「ううん。僕の方こそ面倒ごとお願いしちゃっててごめんね。」



聞こえてくる話し声

今日は午後から雨。
天気予報は予報通りに、昼あたりから弱く降ってきた雨は夕方になっても止まず、断続的に降り続いていた。
その為、司が担当しているミニトマトの水遣りはお休み。世話の方も特にない、と。桃地から連絡をもらった司は、持て余す時間をどこで潰そうか悩んでいた。

(さて・・・、どこ行こう。真っ先に明人兄のとこに行くと、朋也あたりが見張ってそうでヤだしなぁ。)

寮に帰ってゲームしたいところでもあるが、なんとなくそんな気分になれなくて。
雨のおかげで傘で身を隠せられるから、どこかにいる朋也にも見つかることなく、校庭あたりを散歩のようにブラつく。
そして野球部のグラウンドが見えてきたが、どこからか誰かの話し声が聞こえてくる。

「ー・・・、ー・・・。」

1人?いや、話し方からして2人いる?
気になった司は、そのまま話し声が聞こえた方へ。
盗み聞きは良くないと思いながら、こそこそと覗いてしまう。



BL世界ではよくあるシーン?

するとそこにいたのは、

(え、颯太!?)

なんと颯太。
2人のうち1人が自分の友達で、司は驚いた声を上げそうになったが我慢。
もう1人は恐らく野球部の顧問。格好からして如何にもって感じの恰幅のいい男の先生だった。
颯太以外の野球部の生徒は、雨天でも構わずグラウンドで練習中。
なのになんで颯太だけ。なるべく雨に当たらないようにしているが、こんな人の気が付きにくい場所に連れて来られたのだろう。

(・・・・・・・・・。)

頭に過ったのは、BL世界でよくある?野球部の顧問×野球部員のシーン。
今の状況をBLゲームで例えたらスチルシーンであることには間違いないし、自分は偶然目撃してしまった一般生徒に値するだろう。
しかしそれはゲームでの話。
いくらBL好きでも、それは二次元まで。リアルにまで繋げない司は、頭をフルフルと。過った妄想を振り払う。

(そんなまっさっかぁー。)

けど颯太がいるから気になって、覗き見を続けて止めない。



投手危機

そして司も聞いてしまう、野球部の顧問と颯太の話。

「ー・・・佐藤。とても申し訳ないが、今の佐藤を投手として。試合に出してやれることは、今後とも難しい話になってくるだろう。」

「・・・・・・・・・。」

「!?」

それは第三者が聞いてしまってはいけない申告。
颯太の投手危機が迫られていた。

「ボクは、投手として・・・・・・。失格・・・・・・、なんですか?」

「・・・野手としてなら、まだ試合に出せる可能性はある。時間はやるから、よくしっかり考えてほしい。」

「・・・・・・・・・・・・はい。」

そう颯太に伝えた顧問の先生は、そのままグラウンドへ。今のが何事もなかったかのようにグラウンドへと戻って行った。
けど言われた颯太は、顔を俯かせたまま立ち尽くして、その場から動かなかった。

「・・・・・・・・・。」



必死の言い訳

とんでもないとこを立ち聞いてしまった司。
この後、颯太と会って今まで通り。自然な感じに振る舞えられる自信がない。
けどずっとここにいたら誰かに見つかってしまい、盗み聞きしてたことがバレてしまう。

(どうしよう・・・、どうしよう。)

とりあえずここから去るのが何よりも先決だ。
そう思った司は物音にも足音にも気をつけて、そそくさと。誰にも見つからないうちに、この場から去ろうとしたが、

「え・・・、司くん!?」

「・・・ぁ。」

誰かではなく、颯太本人に見つかってしまったのだった。

「ビックリした・・・。司くん・・・だったんだ。」

「え、あ、いや。俺はたまたま偶然、今ここにきたばかりで。」

「監督とね、話してた最中。・・・誰かがさしてる傘が、一瞬。見えた気がして。それを思い出して見にきたら、司くんがいて・・・、持ってる傘と一瞬見た傘の色が一緒で・・・。」

「あー・・・、えっとえぇっと、そう!俺が来る前に、俺の傘と似た色の傘さしてた人。知り合いじゃないから誰なのか俺も分かんないんだけど、でも俺じゃない誰かがいて、ちょうどあの辺りですれ違ってー・・・。」

おかげで必死に言い訳をしていたが、誤魔化しにも程があるほどのことしか言えなかった。



崩れそうな笑顔

「・・・・・・ごめんなさい。でもここに来たのは、ホントに偶然で。ワザとじゃなくて。」

けど自分で言ってて、言い訳をするにも心がどんどん苦しくなったので、大人しく諦めて白状する司。

「だからと言って盗み聞きしていいわけじゃなかったよな。けど・・・颯太がいたから気になって、つい。」

「仕方ないよ、偶然ってそういうモノだから。ボクの方こそ、なんだかごめんね。せっかく野球部に来てくれたのに、よりにもよってこんな情けないところ見せちゃって。」

「いやいやいやいや。颯太は謝んないで!颯太は何も悪いことしてないんだから。」

そんな司を颯太はニッコリと許してくれたが、その笑顔はどこか弱くて。今にも崩れたっておかしくないのに保っていた。
でもそれは自分がここにいるせいだろう。

「あ・・・。颯太、傘。とりあえずコレ貸すから使って。」

「え、でも・・・。ボクなら、これくらいの雨慣れてるから大丈夫だよ。それにボクが司くんの傘使ったら、今度は司くんが・・・。」

「俺もこれくらいの雨なら大丈夫だから。」

そしてせっかく雨に当たりにくい位置から、こっちに来たせいで颯太が雨に打たれていたから。聞いてしまってお詫びにするつもりもないが、自分の傘を無理矢理にでも手渡す。



どうせ・・・

それに顧問にあんなことを言われたばかりなんだから、颯太だって1人になりたいはず。

「そ、それじゃあ俺は、これで。サボってたとこ朋也に見つかると厄介だから別の場所に行くね。」

「待って、司くん!」

だからとっととこの場から去ってあげたかったのに、颯太に『待って』を言われビタ止まりする司。
颯太も颯太で何を思ったのか。

「・・・ボクも一緒に。司くんと、サボってもいい?」

「え。」

なんとこのまま園芸部をサボってる司について行こうとしていた。

「そしたら司くんが盗み聞きしちゃってたこと、チャラにしてあげる。」

「うぇえぇ!?それ言われたら俺、断れないじゃん。それに颯太だって野球部の練習ー・・・。」

「大丈夫だよ、ウチのキャプテンだってよく抜け出してるし。それにボク1人くらい抜けたって・・・、どうせ誰も困らないから。」



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