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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#80 never give up!(1/4)
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訪れない3番手

朝6時、学生寮の食堂にて。

「あ・・・、おはよう。後藤。」

「・・・おはようございます。」

誰よりも最初に訪れていたのは久野。
2番手は園芸部の花壇の水遣りに早く起きてきた朋也。
しかしその次となる3番手は、なかなか姿を現してこない。
寝坊でもしたのだろうか?
そんな『いつも』になりかけていた朝風景だけあって、朋也も少し違和感を覚える。

「えっと・・・、そっちは今日も水遣り?園芸部って、当番制じゃないんだね?大変じゃない?」

「はい。・・・割と好きでやってることなので、俺はこのままでも平気です。」

「そっか。今日も暑くなるだろうから熱中症に気を付けてね。」

久野も自分の限界まで待っているような気がしたが、何かに溜め息吐いて、そのまま諦めてしまう。
そして朝食済ませたら、いつものように道場へと向かって行ったが、

「・・・?」

その後ろ姿は、どこかしょんぼり感が。
そこからも『いつも』にはない違和感を覚える朋也だった。



向かわない3番手

一方、その3番手になるはずだった比路はというとー・・・。

「ヒロ?とっくの昔にアラーム鳴ったよ。何してんの?」

「・・・・・・。」

スマホのアラームでいつもの時間で起きて、身支度も完了しているのにも関わらず、なかなか部屋から出て行こうとしない。
時間を何度も確認しながら、ただただ過ぎていくのを待っている。

「朝練遅刻するよ。」

「あ、うん・・・。大丈夫、ちゃんと朝練には行くから。司は気にせずに、まだ寝てていいよ。」

「そうしたいところなんだけど、いつまでもドアの前で突っ立ってるヒロの気配が気になって、なかなか二度寝出来そうにないんだけど。」

そのせいで寝ていた司まで起こしてしまい申し訳なかったが、それでもまだ部屋から出ようとしなかった。

「克兄ちゃんと喧嘩でもした?」

「う・・・、ううん。喧嘩はしてない・・・。」

まだこの間のことを引きずっているようだった。



隣の席に

ようやく時間が経ってくれたおかげで、やっと部屋を出た比路。
食堂の中を恐る恐る覗いたが、久野の姿は既になかったのでホッとした息を吐く。
けど他に知り合いの生徒もいないし、誰とも待ち合わせはしてないので、そのまま1人で。
今日は窓際のカウンター席の方が空いていたから、そっちに向かって席に着いた。

(うぁ・・・。今日、牛乳付く日だった・・・。どうしよう・・・。)

そして黙々とご飯を食べていたその時、

「・・・隣、いいか?」

「え。」

そう声を掛けられて隣を見ると、そこには鬼頭の姿が。
彼は比路がうんともすんとも、まだ何も返していないのに、そのまま隣に座る。

「おはようございます、冥先輩。」

「・・・ん。」

鬼頭とここで会うのも結構久しぶりだったけど、2人の会話は一旦そこで止まってしまった。



比路と鬼頭

周りは賑やかなのに、ここだけシーンとした静かな沈黙が流れる。
そういえば前もこんな感じでお通夜状態だったことを思い出した比路は、いつまでも続けるのは良くないと思って。せっかくの機会だから鬼頭と話してみようとした。

(えぇーっと・・・。)

Q1→冥先輩も朝練ですか?
A1→今の時間帯で食堂に来てる生徒は、自分も含めて全員そうだから。

Q2→今日は晴れてていいですね?
A2→天気予報では曇りのち雨。太陽が出ているのは今のうちにだけ。

Q3→そのほか
A3→うーん・・・、他に共通出来そうような話あったっけ?

(ぅんーっと・・・。)

色々と無難な話題が浮かんだが、そんな何よりも気になっていたことが1つある。

(冥先輩って、何食べてこんなに大きくなれたんだろう。・・・やっぱ牛乳飲まなきゃダメ?)

比路との身長差が、30cm以上。
隣に座っていても、その差は歴然。
自分がちっちゃいのが明確すぎて、どうしても気になってしまう。



鬼頭からの尋ねごと

しかし、

「好きな食べ物って、・・・・・・なんだ?」

「え?」

どんな話題よりも先に向こうから。
鬼頭の方から比路に、そう尋ねてきた。

「・・・・・・・・・克也の。」

「克也の?」

なんでそんなこと訊かれたのかは謎だけど、比路は素直に答える。

「克也は確かお饅頭とか和菓子系ですけど、その中でも特に好きなのは抹茶だったような。」

「・・・・・・。」

「この前、気に入って飲んでた抹茶のドリンクが寮の自販機にもあったんですけど、商品自体が販売終了でなくなっちゃって。それでかなり残念がってましたし。」

「・・・そうか。」

すると、その一瞬。
鬼頭は柔らかく笑った気がしたのは気のせい?



鬼頭からの尋ねごと 2

でもそれはやっぱり気のせいだったのだろう。

「『なんで抹茶系の飲み物って自販機で継続的に売られないんだろう?』って、克也がヘコんでて。一緒に見てた寮長にも慰められてて。」

「そうか・・・。」

話を続けていたら、少し不機嫌そうな相槌をされてしまった。
久野のことなら知らないことの方が少ないとはいえ、鬼頭のことは知らないことの方が多いから、余計なことでも口走ってしまったのだろうか。

「克也って・・・・・・・・・・・・・・・。」

「?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「え???」

「・・・・・・・・・悪い。やっぱ・・・・・・・・・、なんでもない。」

そして久野のことで、まだ尋ねたかったことがあったのだろうか。
鬼頭は色々と悩んだ結果、やっぱりやめてしまった。



古河の様子

ところ戻って。
園芸部の花壇の水遣りを一通り終わった朋也は、使ってた道具を片付けて、ふぅっと一息。
けどこのまま教室に向かうのは早すぎるし、寮に戻るのも中途半端な時間。
それに少し気になってたこともあったので、そのままの足で陸上部の様子を覗きに向かう。

「あれ?後藤くん、どうしたの?」

「・・・・・・どうも。」

するとそんな朋也に気付いた空が声を掛けてくる。

「誰かに用事?よかったら呼び行こうか?」

そして部外者の朋也にまで世話を焼こうとしてくれたが、朋也はグラウンドにいる古河を見つけた途端、

「あ、いえ・・・。邪魔してしまうので大丈夫です。羽崎先輩もわざわざ・・・。あ・・・、ありがとうございます。」

空の気遣いは大丈夫だと返す。
今も懸命に一向に走ってる古河に、水を差すような真似をするわけにもいかなかったから。



落ちていたキーホルダー

けどその彼から、この間のような不機嫌は感じられない。
あの日がたまたま機嫌悪かっただけだったとか?

「静かに見学するだけなら冥も怒らないから、ゆっくりして行ってね。」

そうして空がグラウンドに戻って行った後、他の誰かに見つからないうちに陸上部から去ろうとした朋也。

(ん・・・?)

その時、キーホルダーが1つ。足元に落ちていたことに気が付く。
あれ?でもコレよく見たら、何かの御守りっぽい。
ストラップの紐が切れてしまっていて、それで落としてしまったようだ。

(誰のだろう?)

しかし持ち主が誰のか分からない。
確か落とし物を拾った時に届けるボックスが寮の方にあったな。
それを思い出した朋也は一先ず拾って、寮に帰った時にでも届けようと、持ってた鞄にしまって教室へと向かったのだった。



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