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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#79 ルームメイトとの親睦(5/5)
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単刀直入に

それから食堂を後にして、再び部屋へと戻ることとなったが、その前に。

「そうだ。純平に訊きたいことがあったの今、思い出した。すっかり忘れてたわ。」

「・・・・・・・・・。」

さっき『純平に訊きたいことある』と。『飯食ってる時にでも』とも言ってたくせに。結局、何も言ってこなかった。何もなかったから余計に気になって仕方がなかった矢口。
こっちから改めて言うのも嫌だったから、何も言わないでいたのに。
それを思い出された瞬間、忘れてたのなら忘れてたでよかったのに・・・。っと、ついつい思ってしまった。

「・・・なんだよ。その話って。」

そうして周囲に人がいないことを確認してから、風雅はハッキリとした口調で訊ねてきたが、

「まあ、まどろっこしいのもアレだから単刀直入にバッサリ訊くけど・・・。純平さ、もしかしてウチの真央先輩にフラれたりでもした?」

「・・・・・・・・・・・・。」

それは単刀直入すぎるほどの質問内容。
あまりにも率直すぎて、矢口は思わず返す言葉を一瞬、飲んでしまった。



一枚上手の質問

けど何とか誤魔化して、この質問から逃げ切りたい。

「何故・・・、そう思う?」

「だって少し前まで真央先輩と、よく一緒にいたじゃん。俺も割と見かけてたし。」

「それは・・・、あっちから勝手に来てただけで・・・。」

「それにさっき勝手に見ようとしてた俺の雑誌。『フラれた相手を振り向かせたい』的な特集が掲載されてるヤツだったし。」

「た、たまたまだろ。・・・お前が変わった雑誌を部屋に持ち込んでたから、少し気になっただけで。他意は、ない。」

「そういえば真央先輩と一緒にいなくなったあたりからだよな?幽霊部員だった純平が陸上部に復帰したのって。」

「・・・・・・・・・。」

なのであの手この手を使って言い訳したが、風雅のが一枚上手だったのか。
あの場にいなかったくせに、その言い訳が矢口を見透かす材料に変換されて、バッチリと当て嵌めていく。

「・・・・・・・・・悪いかよ。」

だからこれ以上の抵抗を諦めたのか。
認めるように、そう小さく呟き返した。
こんな自分、笑い者にしたければ笑えばいい。



笑い者になるのは自分だけでいい

けど風雅は、頷いた矢口に拍子を抜かしていた。

「うあ、マジで!?結構テキトーに。それっぽいこと言ってただけだったんだがー・・・マジか。」

「・・・・・・・・・。」

その反応を見て、頷くのはまだ早かったと思ったが、先に頷いてしまった以上、もう遅い。
どんな誤魔化しも、どんな言い訳も。
今さらで、後からすぎて効かないだろう。

「なるほどねえ。純平が更生した真相は、真央先輩にあり・・・か。部長も同じ部員が持ってんのに掴めてないとかサーチ不足じゃん。これまでの行動を辿れば可能性からしても全然大いに有りなのに、灯台もと暗しってヤツかねえ。部長に教えてあげたら喜びそうだな。」

だから、せめて。
・・・せめて黒崎まで晒される目に合うのだけは防ぎたい。

「・・・やめろ。」

「!」

「俺を笑い者にしたければ勝手にすればいい。けど、アイツまで困らす真似だけは・・・っ・・・。」

その思いは風雅の言葉によって矢口は動かされ、廊下の壁際にドンッと追い詰めてまで風雅を止めさせようとした。



煽りに返すモノ

周りに生徒はいない状況でも、この現場を誰かに目撃されれば、間違いなく誤解が生じるだろう。
なのにその可能性すら省みない矢口。
そして風雅も。一瞬は驚いたものの、追い詰められたくせ顔色から綽々な冷静さを失わない。
それどころか、

「『やめろ』・・・ねえ。それって人にモノを頼む言い方じゃなくない?この態度といい。」

と、煽ってきた。

「・・・頭・・・、下げればいいのか?」

「まあ、基本的にはそうじゃないの?純平にそれが出来ればー・・・だけど。」

今ここに相棒だったナイフがあれば。
この程度なら拳でブン殴ってやれば。
こんな奴の挑発なんて一発で、簡単に黙らせられるのに。

「・・・・・・・・・。」

どっちもしなかった矢口は、風雅を壁際に追い詰めていた腕をスッと退かし、少し躊躇いながらも己の頭を静かに下げようとした。



1匹狼が、たった1人の為に

「へぇ。1匹狼だった問題児の元不良生徒が、たった1人の為だけに。こんな簡単に頭下げる日がくるとは・・・、純平の純は純情だな。おみそれいるわ。」

すると風雅はそんな矢口を間近で見て頷き、凄く興味深そうにしていた。

「そもそもさ、純平。」

「・・・?」

「俺、別に大輔先輩の手下でも味方でも、何でもないんだけど。てか、言う気ゼロだったんだけど。」

「は?」

そして下げかけていた矢口の頭をストップさせて、自分の企みを暴露。
矢口があまりにも本気で止めにきたから。
流れで思わず挑発して煽ったが、最初から田邊に告げ口する気はなかったようだ。

「俺の言い方も悪かったけど、純平って割とせっかちなのな。こっちは少しカマ掛けただけなのに、自分からポロポロ出しまくるって、純平も月島とあんま変わんないのな。」

「・・・・・・・・・ッ。」



ルームメイトのよしみ

「でも、いいじゃん。俺は割と好きよ?そういうの。」

「え・・・?」

更生した真相の真理を聞いて、どこか満足そうに笑う風雅。
物書きとしても、そんな矢口の立ち位置は、非常に興味深いモノだと続けて話す。

「やっぱ改めて純平と話せてよかったよ。思ってた以上に面白い奴だって分かったしな。」

そして本位すら向いたのか。

「もう少し聞かせろよ、純平のその話。流れだったとはいえ、聞いてしまった以上、協力させてくれ。ルームメイトのよしみとしても。もちろん他言無用は守るからさ。」

同じクラスメイトでもありながら、普段から全然話したことないし、お互いに関わろうとしてこなかったのに。
そんな今までをひっくり返そうと、風雅の方から言ってきた。



今まで全然話し声すらなかった部屋から

しかし矢口にとっては戸惑う話。
風雅という男をどこまで信用していいか、全然分からない。

「・・・・・・・・・。」

だけどここで動かなかったら、自分の現状を自分1人の力では変えることが出来ないだろう。
不確かで。
曖昧で。
恋心と例えるとしても、まだ全然、遠かったあの頃。
でも向き合った今は、ロクに近付けないどころか、顔すら合わせられなくなってしまっているのだから。

「なあ、純平。俺らもっと話そうぜ。俺らルームメイトなのに今まで全然喋ってすらいなかったんだからさ。」

「・・・そうだな。」

そうしてやっと自分たちの寮部屋に戻ってきた2人。
その扉を風雅が開けてくれて、先に入っていく矢口。
いつも物静かな、彼らの部屋。
けどこの日から、ようやく2人の話し声が静かに聞こえてくるようになった。



フラれん坊の月島

一方、その頃・・・。
風雅にフラれた月島は、

「コラー!優介!空から離れろー!」

「やだー!今日はボクだってルームメイトと親睦図る日だって決めたんだもん!」

「今日はそうやって佑にフラれちゃったんだね・・・、優介。」

自分のルームメイトである空に、ぴえんぴえん泣きついていた。
けど空と一緒にいた鳴に、ちょっと羨ましそうな顔をされながら、怒られる始末。

「空から離れろってば、優介!」

「やだー!今日はお空に慰めてもらうんだもん!そんなに羨ましかったら鳴っちだって、お陸とたまには親睦図ったら?最近、一緒にいるとこ全然見てないよ!」

「それは俺のせいじゃなくて、あっちが俺を・・・っ。とにかく優介でも空に抱きつくの禁止!空は俺の〜!」

思いっきり月島のとばっちりを食らった鳴と空だったが、とてもとても賑やかであることには変わりなかったのだった。



青ノ葉 第79話をお読みいただきありがとうございました!

月島ちゃんの登場は予定では、もう少し先だったのですが
風雅いるところに月島ちゃんアリのイメージは
作成当初から変わらなかった為、風雅登場ついでに
月島ちゃんにもご登場していただけました
おかげで青ノ葉2年生陣も賑やかになってきました


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