≪ top ≪ main


青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#79 ルームメイトとの親睦(4/5)
]  [目次へ]  [

鉢合わす2人の先輩

するとその時、

「お、佑先生。そっちはこれから飯?」

「です。遼さんは紬ー・・・「ん?」

「あ、いえ。柘植先輩と一緒に終えたばかりですか?」

「ああ。暑い時に食べる冷やし中華は、やっぱいいもんだな。」

柘植と一緒に食堂から出てきたばかりの鳥越が、風雅に気付いてそのまま立ち話。

「そういえば明人に伝言頼んでたんだが、話聞いたか?」

「明人先輩からですか?いえ、ここ最近は話してもいないので、まだ何も聞いてないですけど。」

「ならいいんだ。伝言と言っても、いつものだから。」

「ああ、なるほど。そろそろだと思っていたので大丈夫ですよ。時間作ります。輝夜先輩は次、何姫になるんですか?」

彼らは普段日頃から、よく話してる仲なのか。
2人の話を聞いているだけで(会話の中身は置いといて)、親しい間柄なのが感じとれた。



分が悪いエンカウント

しかし鳥越・柘植とのエンカウントは、矢口にとって分が悪い。
なんといっても2人とも揃って生徒会役員の人間。
矢口は元だが犬飼と並ぶほどの不良生徒だったんだ。
厳重注意対象者のマークだって当然、そんな簡単に解除されるわけないだろう。
その証拠に風雅と鳥越が話してる最中、矢口に気付いた柘植がこちらをずっと見っぱなし。

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

矢口もその視線と合わせないよう、必死に頑張って目を逸らしていた。
けど、それも時間の問題。

「紬?さっきから誰見てー・・・・・・。矢口いたのか。」

柘植の様子に気付いた鳥越も矢口に気付いて、彼もジト目でこちらを見てくる。

「俺が誘ったんです。たまにはルームメイトと飯食うのも悪くないなって思って。」

「・・・へぇ。先生と相部屋の奴って、矢口だったのか。」

「・・・・・・・・・。」

その2つの視線はチクチク身体に刺さって、逸らしていても痛かった。



見通された告げ口?

でもそんな矢口に何を見通したのか。

「・・・陸上部の練習、頑張ってね。」

「え。」

ずっと見っぱなしだった柘植が少し微笑んで、そう告げてきた。
その言葉に拍子を抜かしたのは矢口だけではなく鳥越も一緒。

「遼。佑くんとまだ話があるならボク、邪魔になりそうだから先に戻ってるね。」

「あああ。待て待て待て待て、紬。俺も一緒に行くから。それじゃあ先生、詳しいことはまたメッセージで送るから。矢口も、もう変に悪さすんじゃねえぞ。」

そして居た堪れなくなってる矢口に気遣い、1人で先に行こうとする柘植。
鳥越は少しでも柘植と離れたくないのか、彼が帰るなら自分も一緒にと。あわあわと慌てて追いかけて、結局2人揃って去って行った。

「・・・紬。今、矢口の何か見通した?」

「別に、何もしてないよ。ただ最近は部活を頑張ってるみたいだったから、純粋に応援しただけだよ。」

偶然のエンカウントとはいえ、生徒会2人がどっかに行ってくれて一安心する矢口。
けどホッとした息を吐いたのは、風雅も何故か一緒だった。

「あー・・・、危なかった。遼さんの前で紬先輩呼びは禁句だったな。少し間違えただけで、あの人はホントに・・・。」



風雅と鳥越の関係

それはそうとして風雅の人脈に生徒会も関わっているのか。
少し気になって尋ねると、本人の口から否定の答えが返ってくる。

「生徒会と知り合いだったんだな・・・。」

「ん?ああ、遼さんとは遼さんが生徒会に入る前から。演劇部の方で話したことがあるってだけだから、生徒会云々はあんま関係ないかも。」

鳥越と知り合っていたのは生徒会だからではなく、彼が演劇部員だから。
けど風雅は文芸部の生徒。
一見、繋がりがなさそうに思えたから、もう少し詳しく尋ねると、

「演劇の台本作りを時々、手伝ってんだ。少しぐらいなら掛け持ちになんないし、ストーリーの流れがしっちゃかめっちゃかだと劇全体がグダるしな。」

「なるほど。」

物書きの腕を買われて時折、演劇部の台本作りの手伝いをしていると教えてくれた。

「演劇部に移ったりしないんだな?」

「毎日部に参加できるほど暇じゃないんで、それはパス。」



作者は酢醤油派だけど胡麻も好き

今晩のメニューは先ほど鳥越が言ってた通り、冷やし中華がメインとなっていて、胡麻ダレか酢醤油タレか。好きな方が選べるようになっていた。

「純平、冷やし中華のタレ、胡麻と酢醤油。どっちにする?」

「え・・・酢醤油。」

「りょーかい。」

そうして窓際で空いてたカウンター式のテーブル席に座った矢口と風雅は、肩を並べて夕食を共にする。
けど案の定で落ち着かない矢口。
犬飼たちともあんまり一緒にご飯食べてなかった上、基本的にはずっと1人だったからか。自分の隣に人がいるだけでも、とっても変な感じがして止まない。

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

会話だってロクに出来ず返せず論じれず。
周りの駄弁り声が賑やかだったのが有難く思うほど気まずく、2人からは冷たい中華麺を啜る音だけが静かに小さく響いていた。



何事もないまま

数十分後。

「ご馳走様でした。」

静かなまま食事を終えて、何事なく。本当に何事もないまま、ご馳走様して食器類を片す2人。
矢口は(これでよかったのだろうか・・・)と、今さら気になって横目でチラリと風雅を見る。

「やっぱ飯時は静かに食うのが一番だな。」

すると彼は何事もなかったことがよかったのか。ただ満腹になったからなのか。心なしか少し満足気な様子。

「え?」

「月島とだと色々と、煩いし鬱陶しいし落ち着けて食えたもんじゃなかったから。付き合ってくれて助かったわ、純平。」

「お、おう?」

そしてただそれだけのことでお礼を言われるとは思わなかったから、返答にも戸惑ってしまった。



]  [目次へ]  [
しおりを挟む




BL♂GARDEN♂BL至上主義♂
2015.05start Copyright ちま Rights Reserved.
×