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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#79 ルームメイトとの親睦(1/5)
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河童男の正体

雨が降り続く梅雨の季節。
ようやく6月が終わり、7月が始まった月初め。
文芸部が発行する生徒新聞に、青ノ葉学園の生徒会役員が警察署から感謝状を授与されたというニュースが写真付きで、ドーンッと大きく一面に掲載されていた。
なんでも彼らの活動おかげで、ここ最近、中高生を狙って商店街周辺で彷徨いていた悪漢野郎の逮捕に繋がったとか何とか。
それは体育館で行われた全校集会でも知らされ、代表として生徒会長の永瀬ではなく副会長の久野が、学園長の方から改めて賞状を送られる。

「こういうの会長が受け取って下さいよ・・・。」

「ううん。だってこれは、かつやのおかげだから。かつやがうけとるべき。」

おかげで『やっぱ久野はすげぇな』と。噂は主に久野を、大きく持ち上げ讃えた。
そしてそのニュースとなった現場を知る男子生徒・・・。いや、当事者であり被害者にもなりかけた矢口は、

(あの時にいた合羽男・・・。永瀬以外にいたのって、久野だったんだな。)

と。当時のことを改めて思い出して、1人静かに頷く。



あれからの矢口

あれからのそれからでそんな矢口は、授業もサボることなく出席して、幽霊部員だった陸上部にも、ちゃんと毎日参加するようになった。
彼の種目は入部当時と変わらず、200メートルの短距離走。
サボっていた期間が長いから感覚を取り戻すのに少し時間が必要だが、そう遠くはない未来だろう。

「純平、ストレッチするなら付き合うよ。」

「・・・ん。ありがと、羽崎。」

部活中は空が気にかけているのか。
最初と終わりに話し掛けられて準備体操やストレッチに付き合ってくれることが多く(単純に空以外の部員には自らら話し掛けにいかないので)、空と1番よく話す仲へ。

「今までサボってたペナルティーがあるとはいえ、結果次第では純平も短距離レギュラーの争いに加われるといいね。」

「鬼頭には相変わらず、敵いそうにないけどな。」

「うん、さすが冥だよね。うちの部で唯一、全国レベルの経験者だし。スポ待として結果残してて凄いよね。」

「・・・・・・。」

矢口の陸上部復帰直後の雰囲気はあまりよくなかったけれど、そんな空のおかげもあって少しずつ緩和されていった。

「高跳びで地区は必ず勝ち抜いてる男が何言ってんだか・・・。」

「えー、言わせてよ。僕だって全国は遠い話だし。」



顔すら合わせられない関係

学校生活においての日常生活は、もう特に問題ないだろう。
しかし・・・。

「!」

午後練が終わって寮に帰る道の途中で、寮生ではないはずの黒崎が何故か前方にいて、彼の姿を見つけた途端、矢口はビクッとしてビタ止まり。
体が硬直して、その場から動けなくなってしまう。

「どうしたの純平?いきなり止まって。」

お願いだから、どうか。
どうかこっちに気づかないでほしい。

「ごめ・・・、羽崎。少し黙っててくれ・・・。」

「う、うん?」

そしてそれは叶ったのか。
こっちに黒崎が気付くことなく、そのまま何処かへと向かって行った。

(・・・・・・・・・。)

おかげでようやく安堵の息を吐けた矢口。
やっぱり黒崎と直接会うのは、まだ辛い。極力、避けていたいようだった。



ルームメイトの机に

「それじゃあ純平。僕、鳴を待たせてるから、もう行くね。」

「あ・・・、ああ。」

午後練が終わり寮に帰ってきたら、これにて空ともお別れ。
鳴の元へ向かっていく空の姿が少し気になったが、自分にはあまり関係ないことなので、これ以上は気に留めないことにした。
そうして矢口は、自分の部屋に帰ってくると、さらに一息つく。

「・・・・・・ふう。」

彼のルームメイトは一応いるにはいるが、まだ帰ってきてない。
部屋に姿がなく、どっかに行っているみたいだ。
今年から同じA組のクラスメイトでもあるが、普段から全然話したことないし、こっちも向こうも関わろうとしてこなかった。
だからそれは、これまで通りで何も変わらない。
ー・・・はずだったのに。

「んん!?」

ルームメイトの勉強机に置かれていた女性向けの恋愛系コラム雑誌を偶然目にして、思わず拍子抜ける。



ルームメイトの雑誌

それは明らかに勉強関連のモノではない。
なんでこんなものが数冊も積まれているのか疑問ばかりが生まれる。

(ど、どんな趣味してんだ。あいつ・・・。)

けどその中の1冊。
『フラれても諦めない!気になるあの人に、もう1度告白する方法!?』という特集の見出しを見つけてしまった。
おかげで気になって、見つめたままの目がそのまま固まる矢口。

「・・・・・・。」

ちょうどルームメイトは、まだ帰ってきていない。
そのうちに、ちょっとだけ読んだって・・・。
いやいや、まだ帰ってきてないとは言え、これは人のモノ。
それを勝手に読むなのは当然、駄目だろ。

「・・・・・・・・・。」

少しだけでも読みたい気持ちと、それをストップさせる気持ち。
心の天秤はどっちにも揺らいで葛藤させてくる。



1番嫌なタイミング

そしてどっちかに傾いた迷いは、趣くまま。
矢口の手を、その雑誌へと伸ばさせた。
その時、

「ただいまー・・・、ん?」

「!?」

1番嫌なタイミングで帰ってきてしまったルームメイト。
おかげで葛藤してた時に恐れていたことが。
よりにもよってこんなダッサイ姿を帰ってきた直後に見られてしまう。

「え?は!?純平、俺の机に手ぇ伸ばして何やってんだ?」

もちろんルームメイトは、そんな矢口にとても驚いた声を上げた。
しかし矢口は何も言い返す言葉が出ないのか。

「・・・・・・・・・。」

そのダッサイ姿のまま硬直し、弁明もせずに固まってしまった。



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