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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#77 放課後のジレンマ(4/4)
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傘がないのは1人だけ

「・・・・・・え。」

傘をさした稚空を見て、あれ?っと固まった比路。
今までの会話を『あれ?あれ?』困惑しながら確認。

「ん?どうしたの?ひろピー。」

「アッキー。傘・・・、持ってたの?」

「そりゃ持ってくるでしょ。天気予報で午後から雨だってバッチリ聞いてたし。」

「え?え?え?だってー・・・あれ?」

「そもそもオレは傘忘れただなんて一言も言ってないよ。」

傘を持ってなかったのは比路1人だけ。
稚空はしっかりと。ちゃんと持って来ていたので、忘れた等のうっかりはしていなかったのだ。

「ひろピー、濡れて帰るのはいいけど。ホント、風邪引かないようにだけ気をつけてね。大会だって近いわけなんだから。」

「・・・・・・・・・。」



目で訴える言えない言葉

そんな稚空をジッと見つめる比路。

「早く帰ろうよ、ひろピー。」

「・・・・・・・・・。」

こんなに雨が降ってる中だ。
置き傘を忘れていたとはいえ、濡れて帰りたくなかったから少しでも止むのを待っていたんだ。
だけどさっき『濡れて帰る』と公言した覚悟のせいで、稚空の傘に『やっぱり入れてほしい』なんて、ちょっと言い出しづらい。
だから言葉に出せず目だけで、それを訴えていた。

「・・・・・・・・・。」

すると稚空は、その視線に気づきいたのか。

「・・・なるほど、ね。はいはい、分かった分かった。そんなにオレを見なくても分かったってば。」

「え?」

「言葉にしなくたって、ひろピーが今、オレに言いたいこと分かるよ。」

「ほ、ホントに?」

「ホントにホント。ひろピーとの付き合いも長いからねぇ〜。」

「もうだからひろピーはやめてってば。」

さすが親友と言うべきなのか。
口に出さなくても、比路の訴えをお察し。



すれ違った解釈

しかしー・・・。

「早く帰ろ?ひろピー。」

「うんっ!」

比路が1歩、2歩、3歩。
稚空に近付いた途端、彼はこんなに雨が降っている中、さしてた傘を閉じてしまう。

「・・・え。」

「え?」

おかげで2人とも、あっという間に体がどんどんどんどん雨に打たれてしまう。
この状況に比路はまた拍子抜かれたが、何故か稚空も拍子抜いた比路に拍子抜く。

「な、なんで傘閉じちゃったの?アッキー。」

「だってひろピーがオレを見て言ってたじゃん。自分1人だけ雨に濡れて帰るのは嫌だから、オレも一緒に雨に打たれて帰れって。」

「えぇぇ!?」



雨にずぶ濡れて帰る帰り道

それは解釈のすれ違い?

「待って、待って!アッキー。僕が言いたかったのはそうじゃなくて・・・っ!」

「さあさあ、そうと決まれば急いで帰ろう。さっさと帰ろう。こんな雨の中、濡れて帰るんだからお互い風邪引かないようにしないとね。」

校舎から学生寮までの1本道。
途中で雨足が少し強くなっても、稚空は傘を再び開かせることはなかった。

「あははっ。たまには雨に濡れて帰るのもいいね!気分爽快。スッキリするね。」

「全然良くないよ〜!アッキーだけでも傘さして〜!」

結局、思いっきり雨にずぶ濡れて寮に帰る2人だった。



青ノ葉 第77話をお読みいただきありがとうございました!


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