≪ top ≪ main


青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#77 放課後のジレンマ(1/4)
]  [目次へ]  [

居残り命令

ー・・・放課後。
文芸部の部活場所、図書室にて。

「悪いんだけど稚空だけ、ちょっと残って来んない?」

「え。オレだけですか?」

部長のくせして珍しく部に姿を現した田邊が、そう稚空を呼び止めてきた。

「峰岸同様で、稚空にも協力してほしいことがあるんだってば。いつか真央に伝言頼んでたんだけど、その話聞いてない?」

「あー・・・、そういえばそんなこと前に聞いた気もする。でも田邊部長、あんまり部では見なかったから、なくなったのかと思ってた。」

「そこは仕方ないさ、オレだって色々と忙しぃ〜の。やっと時間がとれて、こうして部にも久しぶりに参加出来たわけなんだから付き合ってよ。」

田邊からの頼みごと。
それは比路との件だけではなく、稚空にも何かしら協力して欲しいことがあるようだ。

「稚空くん、僕は先に寮に帰ってますね。」

「ごめんね、梅ちゃん。一緒に帰れなくて。」

「いえいえ。雨が強くなってきているので、稚空くんも田邊部長も。気を付けて帰って来てくださいね。」

いったいなんだろう・・・。



田邊からの大事な話

文芸部に参加していた今日の部員の人数は、片手で数えられるほどの数人程度。
田邊は稚空だけを居残らさせて、その全員が帰るまで。椅子を跨いで背もたれを抱えるように逆座って、ヒラヒラ手を振って見送り待っていた。

「いやぁ〜・・・。午後から雨だとは聞いてたけど、本気だして来たね雨さんも。」

「あの部長?オレも早めに寮に帰りたいので、出来れば早めに終わらせてほしいんですけど・・・。」

「まあまあまあ、焦んない焦んない。これはオレと稚空だけで、なるべく第三者には聞かれたくない話なんだから。」

「そ、そんな大事な話なんですか?」

外は本降りの雨。
ザーザーと降っていて、強い雨音が室内まで届いてくる。
稚空と田邊だけが図書室に居残って、他の部員は帰って行ってから数分後。
もう2人以外は誰もいない。
そう確信が持てたのか、田邊がやっと話し出したかと思えば、

「・・・稚空ってさ、好きな子いねえの?」

「は?な、何ですか?唐突に。」

脈絡もなく、いきなりそんな話されても、稚空にとって困る以外なかった。



フラグのシチュエーション

“雨降りの放課後“
“他に誰もいない2人きりの教室”
“同じ文芸部員の1年の後輩と3年の先輩部長“

「いやあ、ついつい。こういうシチュって、恋愛ゲームだと割とスチルになったりするじゃん?だからこういう色のある話でもした方が盛り上がるんかな〜っと思って。」

「けどオレと田邊部長で、そんな話したってつまんないですよ。」

そういうシチュエーションを作ったのは田邊自身なのに。
それに寄り添うような色のある話を、ついついしてしまったそうだ。

「え〜。そこは、ほら。オレと稚空の仲じゃん?好きな子いんなら協力するよ〜?」

だけどその時、そんな田邊から気になるワードが。

「なんてったって稚空は『例の弟』くんだからね〜♪」

「!」

『例の弟』。
それは田邊だけではない。
一部の上級生が稚空を見て『例の弟』、『例の弟』と言うから、稚空も気になっていた言葉。



例の弟

「あの部長、なんです?その『例の弟』って。たまに上級生がオレを見て言うから、いったいなんなのかずっと気になってて。」

それには恐らく兄の明人が何かしら関わっているのだろう。
けど本人に直接尋ねても、はぐらかされるばかり。
だから田邊に、改めてその言葉を問いただす。
すると彼は、

「えー!?ひょっとして稚空、明人が青ノ葉で何やってんのか知らないのかよ!?」

「え?え?え???」

そんな稚空が意外すぎたのか。
凄く驚いた表情を見せた。

「稚空が明人の跡継いでオレとタッグ組めば、絶対最強になれるって思ってたのに。明人の野郎、なんで弟に話してねえんだよ。こっちの計画も崩れるだろうが。」

そしてブークサブークサと。明人に文句を呟き始めたが、稚空の予想はビンゴだったのだろうか。
稚空を見て『例の弟』と言われるのには、やっぱり明人が大きく関わっているようだ。



悩める恋心の相談相手

稚空が『例の弟』に関して知らなかったのは、田邊からしても予想外。
でも田邊が言う、その計画には稚空の協力が必要不可欠だからと。改めて説明してくれた。

「稚空って、恋愛ゲーム1つや2つ。遊んだことあるか?特にシミュレーションあたり。」

「まあ・・・人並みには?」

「おぉ、じゃあ話が早い。そういうゲームにおいてヒロイン以外に、もう1人。とっても重要な役割を持つキャラいんじゃん。」

「ライバルとかですか?」

「んー、おしい!ヒロインを取り合うライバルになるパターンもゲームによっちゃあるけど、どっちかと言えば主人公の味方ポジの奴。」

ー・・・かと思えば、話が逸れてしまったのか。
稚空が知りたい話とは全然違う話をしだしてしまう。
しかしそれは説明がつきやすい田邊による例え話。

「主人公の恋愛成就の手助けしてくれる奴が絶対いるだろ〜?青ノ葉において、そのポジが明人なわけ。」

「はぁ!?」

「青ノ葉生の悩める男の恋心。明人に相談した結果、いったい何組のホモップルが成立したことやら。」

ちゃんと話は繋がっていたが、教えてくれた話に今度は稚空が驚く。
なんせ青ノ葉学園は立派な男子校。
やっぱりそういう世界が存在していたんだ!と、強く確信持つ。



]  [目次へ]  [
しおりを挟む




BL♂GARDEN♂BL至上主義♂
2015.05start Copyright ちま Rights Reserved.
×