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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#76 招かれた奥の私室(3/4)
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真新しいスマホの持ち主

それはそうとして久野はここ数日、ここで何をやっていたのだろう。
寮長の私室に入るや否や、さっそくソファー代わりにベッドに座って本題に。

「蓮さん、そろそろ・・・。」

「あー、はいはい。まあよろしく頼むわ。」

寮長も言われるがまま、デスクに置いていた真新しくてピカピカなスマホとメモ帳を手渡す。
そんなさっそくに比路は、また新しい疑問が生まれて首を傾げる。

「ん?ああ、ごめんね。比路に説明もなしに始めて。蓮さんがこの間、やっとスマホに機種変してくれて。それで蓮さんの電話帳に登録をしてたんだけど、蓮さんの登録数が多すぎて凄くて。」

「え!?それ寮長のスマホだったの?誰かの忘れ物とかじゃなく?」

「峰岸は見たことあったか、前の俺の携帯。アレがついに画面半分見れなくなって、それを機に変えたんだ。克也にも前からさっさと変えろって何度も煩く言われてたし。」

「確かに言いましたけど、そんなに何度も煩く言ってません・・・。」

久野の手に今あるスマホは、寮長の私物。
前まで折り畳み式のガラケーを使っていたが、完全に壊れるよりマシだからと数日前にスマホへ機種変したそうだ。



持った歴は比路のが少しだけ先

だがその際、ガラケーのデータを移行してもらわなかったのか。
電話帳代わりのメモ帳に書かれた連絡先を、久野が寮長に代わって1つ1つ順々に手打ちで登録しているようだ。

「なんで寮長本人がやってないの?」

「最初は少しだけのつもりだったんだがな。克也が中途半端は嫌だ言ってこの有り様。まあ俺としては、どのみち助かるから有り難い話だ。」

でもここ数日間、手伝っていただけあって残りの件数は3分の1ほど。
それを全部なんとか今日中に終わらせようと、久野は寮長のために頑張っていた。

「あ。じゃあスマホ持った歴、寮長より僕のがちょっとだけ上になるんですね。」

「よく言うわ。寮の公衆電話の前でクソデカ溜め息吐いてた奴が。」

「確かにあの時、溜め息吐きましたけど、そんなに大きく吐いた記憶ないですってば・・・。」



1学期残りの学校行事

寮長の許可もあり、頑張る久野の隣に座った比路。
寮長も寮長でデスクチェアに座り、しばしここで世間話でもすることに。

「そういや2年の林間学校って、そろそろか。」

「はい、7月入ったら直ぐに。」

「その後すぐにプール開きに、テスト。終わればもう夏休み、んでもって大会か。もうそんな時期までやってきたんだな。」

この1学期内に残ってる学校行事は、まだまだ盛り沢山。
この中でもメイン級になってくるのは、2年生の林間学校と期末テスト。

「林間学校なんてあったんだ?2年生。」

「と言っても、夏休みの部活合宿時に使うクラブハウスの点検が、ほぼメインだけどね。青ノ葉から少し離れたとこにあるんだけど、あそこもいちお青ノ葉の領地って聞いたし。」

「今年の2年は大変だな。2学期入って直ぐに、今度は修学旅行があっし。」

「え!?2年生にも修学旅行あるの!?」

「あるよ。少子化の関係で修学旅行は2年に1回、1・2年の合同行事だから。一昨年は確か沖縄って聞いたから、今年はどこになるんだろうね。」

「年間行事表見たことあったけど、2年生も一緒だって思わなかった。」

6月が終われば、7月で。
7月が始まれば、夏休みまでもうじき。
しかしそれまでの間、イベントはまだまだあるようだ。



お仕置きで禁煙させられてた彼のその後

するとその時、寮長方向からカチッと鳴った音が。
なんだろうと見ると、寮長は口に煙草を咥えていた。

「・・・もう禁煙辞めたんですね。」

「忌まわしい極刑が、やっと解けたからな。」

学寮戦の件でチロ先生に怒られて禁煙を言いつけられた彼。
けどあれから1ヶ月近く経ち、そのお仕置きは許された模様。

「せめて僕らがいる時ぐらいは、やめません?」

「やめません。ここは俺の部屋だ。俺の好きなようにさせてもらう。」

「今は蓮さんの私室が、蓮さんにとって唯一の喫煙所だから。」

だからその姿を見るのは久しぶり。
おかえりなさいと言ってあげるべきなのだろうか。

「前までは大変だったんだよ。蓮さん、生徒がいない時間帯見計らって、よくあっちこっちで吸ってたから。」

「このご時世で、ホントよくやるね・・・。」

「だから今度、蓮さんの部屋以外で蓮さんが煙草吸ってるの見かけたら、直ちにチロ先生に通報して。今度こそ徹底的に禁煙させて、蓮さんの部屋でも喫煙は許さないって話になってるから。」



どうにも気になる卒業生の情報

そんな寮長の為に頑張っていた久野。
けど今日は生徒会の仕事もあって忙しかったせいで、目頭を手で押さえて疲れた息を吐く。

「・・・ごめん、比路。あとお願いしてもいい?残り、この2ページだけだから。」

そしてここらで付き合わせていた助っ人にパス。
今度は比路が久野に代わって、1つ1つ順々に連絡先を手打ちで登録していく。
でもその前に気になったのは、このメモ帳にズラリとたくさん書き並んだ相手先の電話番号。

「わぁ・・・。確かに寮長の、凄いね。こんなにあったんだ。」

「でしょ?これ全部、青ノ葉学園を卒業していった生徒の電話番号なんだって。」

「え!?これ全部、青ノ葉の卒業生のなの!?」

それが青ノ葉学園の卒業生と繋がってると分かった途端、比路はまた驚いた声を出す。
ここに来てからずっと驚くことが続いてるが、これはまた別件。
つい前のページまで目を通そうとメモ帳を捲ろうとした途端、

「峰岸。克也に頼まれたページ以外、見たら訴訟な。そこには俺個人と俺に関わる人物のプライバシーが繋がってんだから。」

「ご、ごめんなさいでした。つい・・・、気になって。」

寮長に怒られて、今見てるページ以上は見ることが出来なかった。
比路の中で『青ノ葉の卒業生』が、どうにも気になるようだった。



部屋の外から聞こえる2人の話し声

それからまた直ぐのこと。

「蓮くん、いらっしゃいますか?」

コンコンと部屋の外からノック音と共に、チロ先生の声が聞こえた。
呼ばれた寮長は吸ってた煙草を直ぐに消して、部屋から出て行く。

「大丈夫?比路。終わりそう?」

「うん。あともうちょっとで。」

「ごめんね。俺の代わりにやらせて付き合ってもらって。」

久野から代わった比路の速度は操作が遅めだけど、お喋りしながらでも学習時間までには十分間に合うだろう。
そして部屋の外から聞こえるのは、寮長とチロ先生の話し声。
何を話し合っているのか、内容まで聞き取れないけど親しそうにしてるのは確かだ。

「寮長とチロ先生って、仲・・・良いんだね。」

「うん、そうだね。」

それが耳に届いた比路はポツリと呟き、それも聞いてた久野は静かに頷く。



適任者からのご意見

『日暮寮長とチロ先生の仲を探ってほしい。』
それは田邊が比路に協力してほしいと頼まれたこと。
寮長と割と話してる仲だからとも言われたが、比路にとってそれは自分ではなくて。今、隣に座ってる久野の方が適してるのでは?と思っていた。
だから参考程度に、あの質問を彼にも尋ねた。

「ねえ、克也。もし僕らのお父さんが寮長、お母さんがチロ先生だったから、どう思う?」

「え!?な、なに?その質問!?」

「あ、えっとえっと、こういう話が友達の間であって。なんとなく克也なら、どう思うのかなって思って。」

「不思議な話するね、比路の友達。どっちも男の人なのに。」

久野はこの問いに対し、0歩50歩100歩。どれで捉えたかは不明だが、うーんっと考え出た答え。
それは、

「チロ先生が大変な感じにしか思えないな。」

「やっぱり?」

「それに蓮さんがお父さんっていうのも、俺には想像つかないし。」

「やっぱり?」

「蓮さんがやらかして俺らじゃ手に負えない時、それを注意してくれるのがチロ先生だから。チロ先生が蓮さんのお父さんかお母さん、そのどっちかなら納得出来るかな。」

比路とほぼ同意見。
でも親しい間柄としてなのか、久野らしい見方をしていた。



働いた悪戯心と出来心

それはそうとして久野より操作が遅かったけど、なんとか最後の1件まで登録出来た寮長の電話帳。

「出来たー!終わったー!」

「お疲れ様、比路。手伝ってくれて本当にありがとう。助かったよ。」

比路はワーイと大いに喜び、久野はパチパチと拍手をし、この解放感を分かち合う。

「にしても寮長。こんなに登録数あって本当に全部、把握出来てるのかな。」

「どうだろう?どれも必要以上には使ってないと思うけど、ちょっと気になるところだね。」

そして改めて、ズラリと続く登録数に驚愕を。
自分らよりも遥かに多くて、ふと疑問を抱く。

「1件ぐらい増えても気づかないんじゃ?テキトーな番号、何か入れてみようかな。」

「でもあまりテキトーすぎるのはアレじゃない?全く関係ない人に繋がってしまった場合、その人にも迷惑掛けるし。」

「あ、そっか・・・。」

「俺のは既に登録してもらってるし。そうだ、試しで比路の番号入れてみる?」

「そうだね。僕ので試してみよっか。気づいたら点呼の時、何か言ってくるだろうし。」

だから件数を、もう1件。
働いてしまった悪戯心の出来心により、勝手に比路の番号を追加。
これだけ多いのだからと、気付かない方に賭けて検証開始。
戻ってきた寮長にスマホを返して、用はこれで終わったため、比路も久野もここで解散していった。



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