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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#75 気になる2人の親しい関係(4/4)
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雨降り朝の昇降口

比路の意外な反応により、自分の思惑通りに事が進みそうで、上機嫌で食堂を後にした田邊。

「〜♪」

今日も朝から雨が降っているから濡れないように傘をさして、鼻歌混じりに学生寮から学校へ呑気に登校。
そして昇降口に着いたその時、

「・・・大輔くん。」

と、田邊を呼ぶ声が聞こえた。

「ん?」

その声に振り向くと、そこには黒崎の姿が。
さしてる傘のおかげで少し表情が見えにくいが、あまり良い色してないのを呼ばれた声色から察する。
けどそれに恐れなかった田邊は、黒崎に対して鼻で笑い、こう呼び返す。

「なーんだ。誰かと思えば『図書室の本を全て読みきった変態』じゃん。」



田邊と黒崎

田邊にそう言われて、傘を持つ手をグッと強く握る黒崎。

「ー・・・やっぱり大輔くん、なんだよね?僕に対して、そういう噂を流させたの。」

黒崎は『図書室の本を全て読みきった文芸部の生徒』という噂を持つ生徒。
それは人から人へ、自分が知らない間に下級生にまで流れていた通り名。

「それが何?なんか文句あんの?」

でもその発信源は田邊によるもの。
元は文芸部の宣伝も兼ねて、黒崎の印象がインパクトに残るよう仕立て上げただけ。

「伝言ゲームって凄いよな〜。上手に上手に変態部分だけがキレイに取り抜かれてって。」

「・・・びっくりしたよ。初対面な人にまで、僕のことそういう風に呼ばれて。」

「結果的によかったじゃん。真央がそういう風に覚えられるようになって。いっつも図書室の隅で本読んでばっかいて、当時の先輩らに『アイツ誰だっけ?』で、全然覚えてもらえてなかったんだから。」

しかし黒崎にとって、それは全然嬉しくなかった模様。
元凶の田邊に何か言いたかったようだが、田邊の強い言葉に捻じ伏せられる。

「感謝しろよ?同じ文芸部員のよしみとして付けてやったんだから。じゃなかったら今ごろ下級生にも『アイツ誰だっけ?』で、覚えられてない可能性高いんだから。」

「・・・・・・・・・っ。」

そのせいで何も言い返せなくなって、傘で隠した顔を俯かせた。



前方注意

黒崎に対して、その名を流させたのは田邊。
でもそれは面白半分でやったことでもある。
だから反省だって罪悪感だって微塵にも抱かない。

(だっっっっさ、アイツ。)

黒崎を言い負かしたあと、そのまま置き去りにして先に進んでいく。
そして昇降口の下駄で靴から上履きに履き替え、自分の教室に向かおうとした、その時。

「!」

ドンッと、前に突っ立ってた人物と体が強くぶつかった。

「・・・ー痛ってなあ!なんだよ、誰だよ。オレの前にボーッと突っ立ってた馬鹿タレは!」

「・・・・・・・・・。」

そんな田邊の前にいたのは、なんと矢口。
陸上部の朝練から帰ってきたところ、たまたま?偶然?今の田邊と黒崎のやりとりを見ていたのだろうか。
田邊とワザとぶつかり、謝ることなく怖い顔して田邊を強く睨んでいた。

「・・・・・・・・・・・・。」



田邊と矢口

「お〜〜〜〜・・・っと。」

おかげでちょっと怖じ気た田邊だったが、そこは自分のが年上。相手は年下ってだけで、余裕を直ぐにでも取り戻す。

「なんだ、誰かと思えば純平じゃん。なに?なに?そんな怖い顔してオレを見て。」

「・・・・・・・・・。」

そこからはもう完全に田邊のペース。

「ところでさ純平、そろそろ聞かせてよ〜。陸上部に復帰した訳を。」

「・・・・・・・・・。」

「何のため?誰のため?みんなそういうところも知りたいんだから聞かせろよ。今まで1匹狼貫いて散々サボりっぱだったんだからさ〜。」

「・・・・・・・・・っ。」

ガッと矢口の肩を組み、グイグイと己の取材目的に質問攻めして、矢口すらも言い負かせていった。



夜な夜な密弁し合う2人

それからその日の夜ー・・・。

(あ・・・、克也と寮長だ。)

また久野と日暮寮長が、寮長室の前で話し合っているのを見かけた比路。
気になるのは、やっぱり親しそうにしている彼ら。

(2人並ぶと克也のがちょっと身長高かったんだ。・・・知らなかった。)

せっかくだからと声を掛けようとしたら、バチッと寮長と視線がぶつかる。

「・・・・・・・・・。」

(あ。)

けどそれは比路の気のせいだったのだろうか。
そのまま寮長室の中へとパタンッと入ってしまい、結局2人の話に混ざることは出来なかった。
その時、脳裏に走ったのは田邊が言ってたセリフ。

『夜な夜な密弁し合う2人』

それは寮長とチロ先生に対して言ってたこと。
でも久野と寮長に対しても言えることなんじゃないかと。

「・・・・・・。」

フルフルと首を横に振って疑った自分を自分で否定したが、そんなまさかが比路の中で浮上してしまうのだった。



青ノ葉 第75話をお読みいただきありがとうございます!

前話より第4章が始まりました〜
この章で1学期を終えたいので、
ぶっちゃけめっちゃ長いです
3.5章とかにして分割しようか、かなり悩みましたし
現在進行形でめっちゃ悩んでます

第1章は朋也
第2章は比路
第3章は矢口
そして第4章はー・・・、誰がメインになっているでしょうか?
よければ予想してみて下さいね


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