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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#74 青ノ葉学園の奥地(3/4)
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比路から朋也への頼みごと 2

それから時間は進み、あっという間に放課後へ。

「待て、森!」

「朋也こそ、なんで俺を追っかけてくんだよ!」

部活動が始まったばかりの時間なのにも関わらず、朋也は司を追いかけ、司は追ってくる朋也から逃げていた。
そんな2人の事の発端は、比路からの頼みごと。
『部活をサボりがちな司を、コキ使ってでも何ででもいいからサボらせないようにしてほしい』とのこと。
先日、司と犬飼が出会っていたことを知り、さらに親しくなっている関係が原因で、司が犬飼の影響を受けてしまわないか不安なようだ。
その話を聞いて(確かに面倒だ・・・)と思った朋也だったが、自分の仕事をしながら頼まれた通りに司を注意深く見ていた。
そして司は案の定で、畑に植えてるミニトマトの世話を終えたら、部活抜け出してどこかへ向かおうとしてたので、とっ捕まえるように話し掛けて、自分の仕事を手伝わせるを理由にして阻止しようとする。

『森。暇してるなら、こっちの仕事も手伝ってくれ。』

『え?なんで俺が?』

しかし司にとって、それは今さらな話。
園芸部に入部して以降、朋也は朋也で。司は司で。それぞれ各々で活動していたから、これまで通りに自分じゃなくて他の人に頼んだらという目をしていた。



青ノ葉学園の奥地

けどそれでも折れなかった朋也が司を手伝わせようしたから、司は朋也から逃げて朋也は司を追う羽目に。

「もー!俺を追っ掛けてる時間あるなら、他の人に頼んでよ。永瀬先輩とか永瀬先輩とか永瀬先輩とか〜!」

「永瀬先輩は生徒会で、まだ部には来てないだろ。今現状で頼めるのは森だけだから。」

「俺だって無理ィ!ほか当たってよー!」

園芸部の畑から、追って逃げて追って逃げて追って逃げて・・・。
気が付けば2人は、青ノ葉学園敷地内の奥地に。
奥地は少し小高めな丘の雑木林となっており、校舎側にも学生寮側にも繋がる道はあるが、生徒も教員も基本的に立ち入る人ことのない所。
でも誰かしらの手入れが行き届いてる感じがパッと見でも分かった。

((青ノ葉にこんな場所があったんだ・・・。))

そんなまだ知りもしなかった青ノ葉学園の奥地に、2人は思わず関心を抱く。



追って逃げて、その先で


司を追ってる朋也にとって、ここで隠れられたら困難な場所。
だから司を見失わないよう、負けん気になって追い続ける。
朋也に追われる司にとって、ここで隠れられれば最適な場所。
だけど朋也の追跡がしつこく、簡単に逃れられそうにない。

「待て、森!」

「やだー!」

追って逃げて、追って逃げて、追って逃げて、追って逃げて・・・。
どんどん奥へ奥へと、続く砂利道を進んでいく2人。
そしてその先で、もう1人。自分たちじゃない誰かが1人、ここに訪れていることに気付く。
その人物とはー・・・、

「え、あれってチロ先生?」

「・・・・・・・・・。」

保健医のチロ先生。
いつもの白衣姿でいるが、この雑木林の中でも1番背の低い1本の木の前で、ただただ突っ立っている。
彼がここで何をしているのか、ここで何をしていたのか。
彼を見てるだけでは何も分からなかった。



奥地にいたチロ先生

保健医であるチロ先生だが、司や朋也たちが所属する園芸部の顧問も勤めているお方。
『部活を抜け出そうとして朋也から逃げる司を、顧問として先回りをしていて捕まえに来た』にしては、チロ先生は目の前の木をずっと見つめたまま。

「チロ先生・・・?」

思わず司がチロ先生に声を掛け、そこでようやく司と朋也の訪れに気がつき、振り向くチロ先生。

「森くんも後藤くんも奇遇ですね。どうかしましたか?」

そしていつもの優しい笑顔をニッコリと。
何事もなく見せてくれて、ちょっとホッとした2人。

「え、あ、いや。チロ先生こそ、ここで何してたんですか?」

「敷地内の見回りついでに、ここで息抜きと言いますか、休んでたと言いますか。そんなところです。森くんたちこそ、今は部活動の時間ですよ。園芸部の水やりも、ここは範囲に入れてないはずですが。」

「えぇっとー、そう!チロ先生と一緒で俺もここで息抜きを!「いえ。部活を抜け出してサボろうとしていた森を追っていたら、ここに。」

「ちょ!?朋也!そんなにはっきりチロ先生の前で、俺がサボろうとしてたって言わないで!」

「事実だろ。」

チロ先生は司と朋也のやりとりを見てクスクス笑っていて、『サボり』のワードを聞いたのにも関わらず、とても怒られるような感じがまったくもってない。
そこは顧問からも少し注意してほしかったが、期待はずれに朋也は少しガッカリ。
司も何故、自分が注意されなかったのか少し疑問に思ったが、怒られなかったのはラッキーなので一先ずヨシとする。



木の名札

そしてこの話題をさっさと変えようと、チロ先生の前にある背の低い1本の木に話が触れる。

「その木って、最近植えられたんですか?」

「いえ、青ノ葉学園を卒業していった当時の生徒が記念に植えた木です。確かにこの木は他のと比べたら、まだ低いですし細くもある木ですけど、ここ最近のではありませんよ。」

「へぇ〜。」

この木は、いったい何の木?
気になった2人は、近くにあった木の名札を読む。
するとそこには、

『S→H
オレの屍を超えていけ』

と。
これは紹介文なのか、なんなのか。
そう名札に刻まれていて、それ以外の文字はなかった。

「え。何この紹介文・・・。っていうか紹介って言っていいのか?これ。めっちゃ某ゲームのタイトルなんだけど・・・。」

「当時の卒業生が書いたモノなので、それについては私にもさっぱり。」

それを見た司も朋也も思わず引いてしまったが、チロ先生もその文に関しては当時の人物にしか分からないようで説明が付けられなかった。



怒られなかった訳

怒られなかったとは言え、顧問でもあるチロ先生に偶然にも会ってしまったからなのか。
これ以上、逃げるのを観念した司。
朋也と共に、これにて部に戻ることに。

「それじゃあチロ先生。俺たちはそろそろー・・・。」

「はい。私も後ほど、園芸部の方へ向かいますね。」

でもチロ先生は、もう少し。もう少しだけ、この場にいるようだ。

「森くん、後藤くん。」

その最後に呼び止められ、

「どうしたんですか?チロ先生。」

「あの・・・、私がここにいたこと。他の誰かに言わないでいただけると・・・。」

「え。」

「息抜きにしても休憩にしても、それをはっきり誰かに言われてしまうと私も怒られてしまいますので・・・。」

ここにいた理由は何にしろ。彼も本来の仕事から抜け出していることには変わりないからと。司がチロ先生に注意されなかった訳が、そこにあった。



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