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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#73 2人を繋げるRunaway (3/4)
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久野のお説教


「恭。豊先輩が今日は用事でいないからって、部員の士気を下げるような真似は絶対にやめろ。」

「す・・・、すみません。」

「司も。園芸部は自由参加の部だけど、出られないと出ないを履き違えないで。」

「は・・・、はい。」

「鈴木先輩も。後輩2人が知り合いだからって、甘やかさないで下さい。」

「ご・・・ごめんなさい。」

そこは知り合いだろうが、先輩だろうが、後輩だろうが関係ない。
これも生徒会副会長としての仕事なのか、見事に3人を言葉で、久野は容赦なくぶった斬った。
もちろんその話は、ロッカー内にも聞こえているし、隙間から向こうの状況も見えている。

「うっせぇよ、先公のクソ犬が。」

「ちょっと。克也に向かって、そんなこと言わないでくれる?」

なので犬飼も思わず、そう小さな声で呟く。
比路も小さな声で、そんなことを呟いた犬飼を注意した。



諺では悪い仲間から離れること

しかもまだ続く久野のお説教。

「まさかだけど恭、俺や豊先輩がいないからって、比路と挑もうと追い掛け回したりしてないよね?」

「ギクッ。」

恭がここにいる理由をズバリと図星つく。
それにハッとした司。

「はいはい!してましたしてました!キョウはヒロを追い掛け回した挙げ句、ここでヒロを待ち伏せてる真っ最中です!克兄ちゃん!」

「あ!こら!司!全部言うんじゃねえ!!」

元気よく挙手をしてまで、恭のことを、ぶっちゃけてチクった。

「恭。今すぐ道場に戻らなかったら、俺を倒してからっていう条件、追加するけどいい?」

「く・・・っ!今回はここで諦めてやるが、次はこうはいかねえからな!だから比路!ケツー・・・じゃねえや、手ー・・・でもねえや。足を洗って待っとけ!」

「キョウ。それを言うなら首ね、首。足だと、ヒロがなんか悪さしたみたいになってるよ。」

おかげで家庭科室から、恭を追いやることに成功したのだった。
漂う空気が少し気まずいままだけど。



久野が追っていた訳

この場から恭が去って行った。
それだけで一先ずホッとした比路。
けど抱いてる犬飼に気になる点が1つ。

「ねえ。さっきからずっと気になってたんだけど、香水ってモロ校則違反だよね?」

「お?気付いたか。これぞ男のお洒落、嗜みだろ。」

「僕、こういう香り苦手・・・。ずっと嗅いでたからクラクラしてきて、なんだか頭も少し痛くなってきた・・・。」

「勝手に人の匂い嗅いどいて、勝手に頭痛起こしたことを、人のせいにすんじゃねえよ。」

それは犬飼から漂う少し甘い香り。
なんと彼は校則違反と知りながら、メンズ用の香水を付けていたのだ。

「オレンジ頭に、着崩しすぎてる制服、香水、授業や部活等のサボり&遅刻の常習犯。学校の風紀を著しく乱す行為は、数え役満もいいところ・・・。」

「あ?それがなんだよ。久野や他、生徒会連中と同じこと言ってんじゃねえよ。」



出て行かせるもんか

これにて犬飼が久野に追われていた理由が分かった比路。

「我慢できないから、そこ退いて。今すぐここから出て、克也にアンタのこと言いつけてやる。」

「ば・・・ッ!やめろ!んな真似!」

抱いてた腕を離して、ロッカー内で動き出そうとしたから、今度は犬飼から比路へ。
ここから出ようとした比路を、この腕で抱いてまで阻止をする。

「やだ。ちょっと・・・っ・・・離して。」

「さっきオレ、お前に協力したよな?だったらお前も、ここはお返しとして、黙ってオレに協力するところだろ。」

「だからって、やだよ。克也を騙すようなことするなんて。」

それでも少し油断すると暴れそうになるから、回してる腕の力を強くしてまで抑えつけた。
比路も嗅ぎ続けた犬飼の香水効果でクラついて、抵抗する力を上手く入れられずにいる。

「学寮戦の時、いっぱい貸しあったよな?」

「よりにもよって、今それ言うなんて最悪・・・。」

「だから最悪言うな。」



じー

犬飼が久野に追われていたわけも、いつもながらのこと。
けど今はロッカー内で匿ってる犬飼の為にも、ここから久野をどっかに行かせないといけない。

「肝心の犬飼くんのことだけど。彼、こっちには来てないよ?ねえ?司くん。」

「うん。サエ先輩の姿を最後に見たのは、あれ?どこだっけ?忘れちゃったけど、掃除のロッカーに逃げ込んだなんで俺、知らな「ん゛ん゛っ!司くんも犬飼くん知らないよね?」

「うんうん。知らない、知らない。俺は何も知らない。」

だから司も明人も、なんとか誤魔化すことに徹してくれている。

「・・・・・・・・・。」

けど久野は司だけを、ジーッと真顔で見つめたまま動かないでいる。

「な、何?克兄ちゃん?そんなに俺のこと見つめて。」

「・・・・・・・・・。」



お茶でもどうぞ

いったいどうしたことか。
そんな彼にアセアセと焦る司。
これではいつボロが出るから分からない。

「克兄ちゃん?」

「・・・ううん。やっぱなんでもない。」

けど久野は思っていたことを口にせず、首を横に振って言葉を飲み込み、それを言うことはなかった。
すると明人が、そこでコポコポと。
新しいコップに麦茶を注いで、それを久野に。

「久野くんにも。はい、お茶どうぞ。」

「え?あ・・・すみません、鈴木先輩。俺、まだ見回り中ですから。」

「駄目だよ〜、久野くん。夏場の水分補給をバカにしちゃ。生徒会とかで色々と忙しくて大変なのは分かるけど、久野くんもちょっと疲れてるっぽいから、ね。」

久野は生徒会副会長だけど、明人から見たら年下で後輩の男の子であることには変わりない。
なのでここは年上としての先輩風を吹かせて、司たちと同様に、彼にもお茶を飲ませた。

「あ・・・、スッキリしていて美味しいですね。鈴木先輩の麦茶。」

「たったコップ1杯でも、飲んだら気分が全然違うでしょ?」

「そうですね。ありがとうございます鈴木先輩。俺の分までわざわざ注いでいただいて。」



匿う後ろめたさ

そのおかげもあって、ちょっとだけ。ひと息だけでも休められた久野。

「司。恭に追い掛け回されてた比路が、もしここに来たら。今日はこのまま休むようにって、俺が言ってたって伝えておいて。きっと追われ疲れてるだろうから。」

「わ、分かった。」

明人が言ってた通り、やっぱり彼は疲れていたのか。
お茶を飲んだ後は落ち着いた表情をしていた。

「それじゃあ俺、もう行かないと。」

「うん、克兄ちゃんも頑張ってね。」

「いってらっしゃい久野くん。」

「はい。鈴木先輩も、お茶ご馳走様でした。それでは俺はここで・・・。」

そして自分がいた少しの時間でも、犬飼の姿は現れなかったことから、ここにはいないと判断したのか。
司や明人に見送られながら、次の場所へと向かって行き、家庭科室を後にした。

「なんか克兄ちゃんに悪いことしちゃったね・・・。」

「うん・・・。そうなるって分かってた上でだったから、こればかりは仕方ないね。僕も司くんも。」



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