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青 ノ 葉
男子高校生たちのお緩い物語
[男子校全寮制][日常系青春コメディ]



#71 青ノ葉 雨模様(Epilogue)(4/4)
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どう思ってたの?

すると明人は、その最後で。

「僕もこれ以上、何も言わない方がいいんだろうけど。それでもあえて訊くけどいい?矢口くん。これだけ分からないから。」

「何を?」

「矢口くんは真央くんのこと、どう思ってたの?」

自分も屈んで目線を合わせて、矢口の気持ちを問いただしてきた。

「どうって・・・、言われても。」

「真央くんの気持ちもとっても大事だけど、矢口くんは矢口くん自身の気持ちも知ることも、同じぐらい大事なはずだよ。」

自分は黒崎のこと、どう思ってたのだろう。
最初はちょっと鬱陶しくて、それだけでしかなかった存在。
周りに色々言われて、その気になって振り回されて、黒崎の唇をあんな形で奪って・・・。
その結果、あっという間にロクに近付けない、顔も合わせられない存在に自分が成り果てた。



不確かで、曖昧で、遠い気持ち

いや、あの時は暴走した自分だったけど、確かに思ってた気持ちだってあった。
何も想ってなければ、あんな真似、絶対にしない。
よく分かってなかったことをハッキリさせたかったから。

「お、俺は・・・・・・。」

黒崎のことを、どう想っているのか。
自分のことなのに、よく分からない。

「矢口くん。答えが直ぐに出ないのも、1つの答えだよ。」

「・・・・・・。」

「今はハッキリ出来なくても、それが今の答えならそれでいいと思う。せっかちにならないで、ゆっくりゆっくり焦らなくていいんだよ。その代わり見つけたら、その気持ちを大事にして。」

不確かで。
曖昧で。
それを恋心と例えるとしても、まだ全然、遠くて・・・。

「でもね、どんな気持ちでも言わないと相手には何も伝わらないよ。言わないは言ってないのと同じことだから。察してほしいとかは、ちょっとなしだよ。これも忘れないでいてね。」



貴方自身の気持ちは何?

そんな矢口を見て、明人は何を思ったのか。

「ねえ、矢口くん。僕も矢口くんのこと、純平くんって呼んでもいい?」

「それは別に。呼び方なんて気にしてないから。」

「ありがとう純平くん。」

呼び方を変えてまで、それを問いただす。

「純平くんは、このままおしまいにしちゃって本当にいいの?」

黒崎がそれを望むのであれば、自分もそうする気でいた。
さっきだってそう口にしたはず。
でもそれは黒崎の気持ちを思ってのこと。

「・・・そうしたくないって言ったら、真央も迷惑、だろ。」

「どうだろうね?僕は真央くんじゃないから、そこは断言出来ないよ。」

どんな物語にも終わりが存在していて、望んだ結末じゃなかったとしても、おしまいを迎えた以上そこでおしまい。
でも自分はおしまいどころか、まだ始まりを迎えてない。 

「でも純平くんが、そうしたくないならそうしないでいいんじゃない?だって真央くんがじゃなくて、純平くんがそうしたくないんだから。」

そこに気付けた今、矢口自身の気持ちはー・・・。



矢口の想い

不確かで。
曖昧で。
恋心には、まだ遠いのかもしれないけど・・・。

「ー・・・俺、真央が好きです。」

矢口はそう、明人の前で強く口にした。
自分が黒崎のことどう想っているのか、ハッキリ言葉にして。

「正確に言えば好き、なのかもしれない。数日間だったけど真央と一緒にいた期間、割と楽しかったから。だからもっと真央のことが知りたい。こんな形でおしまいだなんて認めない。」

「随分とハッキリ言ったね・・・。僕までちょっと照れそうなぐらいだったよ。」

「いつまでも分からないじゃ、ずっと向き合えない気がするから。真央とのこと、ここでおしまいになんてさせたくない。」

「そっか・・・。」

すると何故だろう。
さっき答えられなかったことは、これだったのだと自分で自分を頷かせることが出来た。
ここが終わりではなく、ここが始まりとなれたのだから。



前に進む前に


「じゃあ先ずは真央くんのダメを、ひっくり返してみたら?」

「真央のダメ?」

「もちろん暴力とか喧嘩はダメだけど、それを含めて真央くんに色々とダメ言われてなかった?」

「・・・・・・・・・。」

明人にそう言われて「そういえば」と。黒崎に色々、ダメ出しされまくっていたことを思い出す。
喧嘩はダメとか。
遅刻しちゃダメとか。
授業サボっちゃダメとか。
自分の日頃の生活態度を主に言われていた。

「出来たとしても、そう簡単にいくとは思えないが・・・。」

「それも僕は真央くんじゃないから、そこは断言出来ないよ。でもきっと純平くんの頑張りは、真央くんまで届いてくれると思うよ。」

それをひっくり返すとなれば、矢口は自分が先ず何をしなければいけないのか。
直ぐに思いついたが、同時に、とある人物の姿が頭に浮かぶ。

「・・・あとは真央くん自身が再び自信持ってくれたら、いいんだけどね。」

「え?」

「ううん、なんでもない。」

そいつと『けじめ』をつけなければ、前には進めない。
そんな気がしたから。



雨模様な天気


「鈴木先輩。なんかすみません。色々と巻き込んだ形で、話聞いてもらって・・・。」

「ううん、いいの。それは気にしないで。巻き込まれることは慣れてるし。弟や姉さんたちと比べたら全然マシだから。」

すると明人は矢口へ。

「純平くん。人が人を好きになるってことは、とっても素敵なことで、とっても大事なことだから。その気持ち、大事にしてね。」

見つけた自分の気持ちを大事にして、と。
この話の最後に、そう言い渡してきた。
ここがおしまいではなく、ここがはじまりとなる彼の為を思って。

「それにしても今日も外は曇りか〜・・・。雨は降らないみたいだけど、そろそろお天道様がみたくなる頃だね。」

今日は生憎な天気で、曇り空な雨模様。
降水確率は30%。湿度は高く、今日もジメジメとしている。
そんな梅雨はまだ続くが、明ければ夏本番。
カラッとした天気と共に猛暑な季節が、青ノ葉にも訪れることでしょう。



青ノ葉 第71話をお読みいただきありがとうございます!

矢口エピソードは、これにておしまいです
月下光にも思懐郷にも作者の妄想内で、それぞれに
イメージ的なテーマ的な曲が
どなたかが歌ってるor作ってる人様の曲の中であります
よくMADとか観るので、そこで知った曲が
ほっとんどですが好きなので、恐縮承知、失礼承知で
そのまま自作品に妄想で繋げてしまうのです・・・

好きなら何してもいいという訳ではないのですが
「好きなので許して下さい」と言わせて下さい・・・


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